「最も不道徳な時に(刑務所に)入ってきて最もまじめになってこの世を去る」。かつて死刑囚を見送った刑務官がした話だという。韓国は1997年12月30日以後21年間死刑を執行せず、実質的死刑廃止国に分類されている。事実上制度だけ残っているのだ。ハンギョレが最近連載した死刑制度の企画記事によると、いまや韓国も死刑制度廃止を本格化する時期に来たようだ。8月に国家人権委員会が「死刑制度廃止国際規約」の加入を政府に勧告し、国会議員31人がこの規約加入を求める決議案を出したことはこのような流れに沿っている。
もちろん世論が死刑制度の廃止に友好的なだけではない。40代の女性殺害事件被害者の娘が、加害者である父親の死刑を求めた大統領府の国民請願に10万人余りが署名した。それ以前にも死刑制度廃止賛成の世論が過半数になったことはない。しかし、国家人権委が10月に施行した国民認識調査結果は、このような世論にある程度錯視があることを示している。賛否だけについて尋ねた場合20.3%に過ぎなかった廃止賛成の意見が、終身刑など代わりの刑罰を条件にして尋ねると66.9%に高まった。
死刑制度が犯罪を抑制するという論理はまさに妥当に思える。しかし最近の研究結果によると、死刑制度と犯罪抑制効果の間には世界的に一貫して因果関係がないと語っている。国家がしなければならないことは被害者家族の代わりの「報復」でなく、被害者と遺族に対する心理的・財政的支援に最善を尽くすことだろう。
死刑制度廃止を法制化した国家は、1998年の70カ国から昨年106カ国に増えた。経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中では韓国と米国、日本だけが制度を維持している。EUは死刑制度廃止が加盟国加入の前提条件だ。韓国も国際社会のこのような文明の流れに乗るべきである。死刑制度を廃止し、これに代わる最高刑罰についての具体的な議論を本格化する時だ。