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[社説]基本権を擁護したからとキム・イス承認を否決した“暴走国会”

登録:2017-09-12 00:11 修正:2017-09-12 07:46
キム・イス憲法裁判所長任命同意案が11日午後国会本会議で否決され、共に民主党のチュ・ミエ代表(一番右)とウ・ウォンシク院内代表(左2番目)ら指導部と所属議員たちが固い表情を見せている。任命同意案は145対145の賛否同数で否決された=イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 国会が11日、キム・イス憲法裁判所長候補者の任命同意案を否決した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領がキム・イス裁判官を憲法裁判所長候補者に指名してから116日めだ。統合進歩党の解散決定に反対し、軍隊内の同性愛問題に前向きな少数意見を出したことが、野党の反対の主な理由だったという。政治結社の自由を擁護し、人権を保護しようとした前歴が承認否決の理由になりうるのかと問いたい。時代の流れに逆行する野党の退行的な現住所をそっくり表わした。

 キム・イス候補者の承認否決は“ろうそく集会”に触発された韓国社会の巨大な変化・改革の流れにブレーキをかけようとする勢力が侮れず、彼らが政治的に再結集し始めたことを象徴する。政治権力は交替させられたが、立法権力である国会では変化を拒否する勢力が依然として強固に踏みとどまっているという現実を確認したわけだ。ろうそく市民が付託した社会改革の課題は、それほど容易でないという事実も明らかになった。

 否決事態の最大の責任は、キム候補者の“理念”に執拗に難癖をつけ“理念論争政党”らしい面目を遺憾なく発揮した自由韓国党にある。キム候補者が憲法裁判所の統合進歩党解散決定当時に出した少数意見は、特定の理念とは無関係なものだった。政党の自由と政治的結社を制約することに対する反対だったが、自由韓国党はこれを「理念偏向」に変身させた。新しい保守を主張する正しい政党が、自由韓国党と特に違いのない態度を取ったのも残念なことだ。

 “金大中(キム・デジュン)精神”を継承するという国民の党が、今回の表決で見せた反人権的で無責任な態度は、一層厳重な批判を避けられない。議員一人一人の判断に任せた国民の党の、半分近い議員がキム候補者に反対票を投じたことはまったく理解できない。キム候補者が軍隊内の同性愛を擁護したというキリスト教界の一部の圧力に便乗した結果だが、これは事実関係から見て正確でない。キム候補者は、憲法裁判所の少数意見として軍隊内の同性愛を擁護したのではなく、過去の軍刑法の一部の条項が過度に不明確で包括的である点を指摘しただけだ。

 国民の党の議員がこの事実を知らなかったはずはない。それでもこれを前面に掲げて否決に同調したのは、結局文在寅政権を揺さぶって政治的利益を得るという政略的発想としか見られない。承認案否決の直後、安哲秀(アン・チョルス)代表が「国民の党が第20代国会で決定権を有している政党」として、あたかもめざましい快挙を成し遂げたように話したことは、それを端的に示している。国民の意思と常識的判断に従うより“キャスティングボート”の権限を見せるために「キム・イス承認表決」を否決させることが、果たして新しい政治を掲げた政党のする行動といえるのか。

 与野党全部が声をそろえた「協力政治」は、花が咲く前に枯れてしまうだろう。「協力政治」はおろか「政略」のみに左右される政治の現実が残念でならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/810592.html 韓国語原文入力:2017-09-11 21:27
訳J.S(1340字)

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