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[寄稿]騒がしさに対する忍耐

登録:2017-05-21 21:04 修正:2017-05-22 07:58

 新しい政府がスタートして一週間、四方が騒がしい。早くも、ある団体は前政権の政策の施行を阻むために集会を開き、ある人々は自身に緊急な懸案が少しでも新しい政府の政策優先順位に反映されることを願って声を高める。ある人は調査を要求し、ある人は立法を要求し、またある人は今一週間になったばかりの新政府に公約を守れと早くも急き立てている。

 こんな騒がしさは心地悪いだろうか? 二つの互いに違う方向から「そうだ」という返事が聞こえてくる。一つの方向からの返事はいわば「あまりにも多くの民主主義」がもたらす社会的混乱に対する憂慮だ。自分の利益のみを先立たせて猫も杓子も自分の言いたいことばかり言っては社会が無秩序と混乱に陥る。「船頭多くして船山に登る」ので、船長が導く通りに秩序整然と従うのが望ましい。執権政府はこのような社会的混乱を放置したり煽ったりしてはならず、公権力を厳正に立てて秩序を求めるべきである。どこかで散々聞かされた言葉ではないか? そうだ。韓国社会は静かな民主主義、秩序ある民主主義、指導者と世論主導層の導く民主主義が望ましいという論理をあまりにも長い間聞かされてきたし、そうした論理が馴染み深くさえある。

 また別の方向から心地の悪さを訴える声は、新しい政府の成功を切実に望んでいる人々から聞こえてくる。やっと一週間になったばかりの新政府に対してそれはあんまりだ、大統領一人変わったからと言って今すぐにも天地開闢が起き得るかのように何でもかんでも要求してどうするんだ、という憂慮だ。 新しい政府に対し少しでも批判的な社会的要求が登場すると敏感に反応して、多少性急に見える利益集団や利害当事者の要求がもしかして新しい政府の反対派に攻撃の口実を与えるのではと心配し気をもむ。理解できないことはない。 私たちはかつて一人の大統領を不幸にも失った。 彼の死後、多くの人が「守ってあげられなくてごめんなさい」という負債意識を負うようになり、5月9日の新しい大統領の当選とともに二度とそんな非運は繰り返さないという切実な誓いがあちこちでなされたと聞いている。

 しかし、その間に私たちの民主主義も年を重ね、韓国社会は去年の秋以来襲った危機を立派に克服した経験を積んだ。各々が自身の現場では切実な問題を抱えながらも、政治共同体の困難な状況を一緒に乗り越えた貴い記憶を共有している。私たちは広場で、 他の市民たちの普段見たことも聞いたこともない多様な叫びと向い合ったし、多少聞き心地が悪かったり同意できない内容であっても忍耐して互いを励まし合った。広場の騒がしさが互いに慰めとなってくれたように、そのように日常の騒がしさも忍耐する余裕を持ってみよう。

ソ・ボッキョン西江大学現代政治研究所研究員//ハンギョレ新聞社

 新しい政府がスタートするやいなや街頭に出たりマイクを握ったりする人々が、新しい大統領をすべて一挙に解決してくれる救世主かスーパーマンのように考えてそうするわけではないだろう。 ある人はあまりに切実な思いから、ある人は待ちくたびれて、またある人はこの政府ですらまたも優先順位から押し出されてしまうのではという恐怖から、各々声を上げるのではないだろうか。

 新しい政府を危険に陥れるのは利害当事者たちの多様な声ではないだろう。利害当事者がじっとしているよう強要されていた政治、利害当事者が自分の要求を言えば集団利己主義とされ、不穏な理念に煽動された愚かな大衆とされてしまったあの政治が、民主主義を脅かしていたのだ。誰でも必要ならばいつでも自分の話をすることができ、それくらいの騒がしさには日常の余裕で対応していける社会を私たち自ら作らなければ、利害当事者の声に耳を傾け至難の説得過程を厭わない民主政治を定着させていくことはできないのではないか。

ソ・ボッキョン 西江大学現代政治研究所研究員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2017-05-17 18:41

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/795153.html 訳A.K

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