リオ・オリンピック閉幕式の主人公は安倍晋三首相だった。日本のゲーム産業を代表するキャラクター“スーパーマリオ”の姿に変身し、東京からブラジルのリオデジャネイロまで瞬間移動する設定で、サプライズ登場した安倍首相は「アベ・マリオ」と呼ばれ世界の耳目を集めた。
任天堂が開発したスーパーマリオは、世界で最も多く売れたゲームシリーズで、1980年代の日本経済全盛期の象徴だ。安倍首相は2013年米国を訪問し「日本が帰ってきた」(Japan is back)と威勢良く宣言したように、今回のオリンピック舞台では強くて身近な日本のイメージを世界に広報した。
最近の安倍首相の歩みはよどみがない。最近の世論調査で安倍政権の支持率は62%まで急騰し、日本人の59%は安倍首相の任期を2020年東京オリンピックまで延長すべきだと答えた。アベノミクスはふらついているものの、代案がない状況で外交的成果を適切に活用して支持率を上げ、改憲という目標に向かって前進を続けている。
安倍首相は米日同盟を強化して、集団的自衛権の行使を可能にするため安保法制を改定したのに続き、原爆被害地域の広島にバラク・オバマ大統領の訪問を成功させ、戦犯国家のイメージを薄めた。これに加え、安倍外交成功の頂点を打たせたのが朴槿恵(パククネ)政権だ。日本政府の公式謝罪、法的賠償、真相究明、どれ一つ実現できなかったにもかかわらず、日本に慰安婦問題に対する「最終的かつ不可逆的な合意」という免罪符を与えることによって、侵略責任を認めることと謝罪を日本政府に求める韓中協力構図を壊してしまった。さらに米国の対中国包囲網である韓米日軍事協力強化に急速に引き込まれ、韓国を米日同盟の下位のパートナーに位置づけた。米国のミサイル防御体制(MD)の核心である高高度防衛ミサイル(THAAD<サード>)の配備を突然決めた。これらはすべて韓中関係を取り返しのつかないところに追いやり、中国と対決しようとする日本右翼の戦略を支えるような措置だ。
こうした状況で、保守マスコミと団体が率先してTHAAD配備に反対する人々を「親中左派」 「親中事大主義」 「親中オリエンタリズム」とのレッテルを貼り非難する逆攻勢をかけている点は注目するに値する。8月初め、チョン・セヒョン元統一部長官の新華社通信とのインタビューに対する集中攻撃を皮切りに、総合編成チャンネル、イルベ(日刊ベスト貯蔵所)、保守団体は一斉に「THAAD配備に反対する中国に堂々と対抗せよ」 「親中の裏には親北朝鮮がいる」などの反中スローガンを浴びせている。今月1日、朝鮮日報は「中国と左派オリエンタリズム」というタイトルのコラムで「THAAD論議の本質は、韓国の安保・対外戦略と関連した“親中”と“親米”の路線対決」とし、THAAD配備に反対する韓国の左派は、中国の新朝貢秩序に同意するのかと“思想検証”まで行った。THAAD配備の密室決定過程、配備地域の住民の憂慮、THAADの技術的不安定性と配備地域からして、北朝鮮の核・ミサイルから朝鮮半島を防御する用途とは言い難いという専門家の指摘を考えると、(これらの動きは)朝鮮半島をめぐる新たな冷戦の高潮に対して、大統領府と政府が説得力ある答えを出せない状況で、“親中”と“反米”のレッテルで反対の声を封じるための攻勢だ。
THAAD反対を「親中事大主義」だと追い立てる勢力が、巧妙に隠しているのはTHAAD配備で最も利益を得るのは日本の右翼、米国の軍需企業、韓国国内の親米・親日勢力だという現実だ。このような情報操作は“親中”、“親米”の組み分けではなく、星州(ソンジュ)の視角、金泉(キムチョン)の視角、韓国の視角、平和の視角、未来の視角、アジアの視角で私たちが当面する難題を共に悩み、解決していくことを遮断するためのトリックだ。それこそが親米・親日事大主義ではないのか。