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[寄稿]ソウル地下鉄で労働者の死亡事故が続く理由がある

登録:2016-06-08 06:29 修正:2016-06-08 06:51
6日、スクリーンドア整備職員のキムさんが作業中に死亡したソウル地下鉄2号線の九宜駅乗り場で市民が追悼のポストイットを見ている。市民が慰霊のため置いていったお菓子や飲み物が積まれていた。キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 花のように若い19歳の下請労働者がまたも無念な死に方をした。 5月28日午後5時57分頃、ソウル地下鉄 2号線の九宜(クイ)駅でスクリーンドアの内側を整備していた職員が、列車とスクリーンドアの間に挟まれて死亡した。 同類の死亡事故がこれでもう3度目だ。去年8月、ソウル市とソウルメトロは、子会社設立、2人1組の点検作業、地下鉄運行時間内のスクリーンドア内側進入禁止、スクリーンドア内側進入時の事前報告などの対策を出した。2013年に作られた実効性のない「スクリーンドア整備マニュアル」の二番煎じという批判が出ていた。 今回またも死亡事故が発生すると、ソウル市とソウルメトロは「子会社への転換」という全く同じ対策を平然と提示している。 外注下請企業の労働者に責任を擦りつける姿も変わっていない。どうして死亡事故が繰り返し発生するのか。ソウル都市鉄道(5~8号線運営)では一件の事故も発生していないのに、どうしてソウルメトロ(1~4号線運営)では事故が繰り返し発生するのか。

 2005年から墜落防止、空気の質改善、自殺予防のためにソウルメトロのホームにスクリーンドアが設置された。 しかし「最低落札制」と無理な工期短縮に由来する「拙速・手抜き施工」という問題提起があった。その分、維持保守が重要になった。 ソウル地下鉄労組は直営運営を要求したが、ソウルメトロは人件費節減と管理運営上の便利さを理由に下請会社の「ウンソン PSD」と「ユジンメトロ」に維持保守業務を委託した。 市民の安全を外注企業に任せ、中間搾取を合法的に認めたわけだ。

 2015年に1万2134件のスクリーンドア事故が発生した。 一日平均33件の割である。 維持保守業務を請け負った二つの会社 は、管理者を含めても職員数200名にもならない。 受託会社は中間搾取を増大させるために在学中の高校生を実習生として採用している。 事故の当事者であるキムさんも、昨年高校実習生として働き、今年正式に採用された。 頻繁なスクリーンドアの事故と人員不足から「スクリーンドア整備マニュアル」を守るのは容易でない状況だが、キムさんはこの8月1日から子会社に転換されるだろうという期待で、きつい労働に耐えていたと思われる。しかし子会社への転換は根本的な解決策ではない。 責任と権限、適正な人員補充の保障がないからだ。

 今回の死亡事故は、正社員の労働者であれば起きない、また、あり得ない事故だ。スクリーンドア異常発生時の報告及び処理系統は次のようになっている。 スクリーンドアの異常発見 → 総合管制室報告 → 電子運営室伝達 → 委託会社へ保守要請→ 委託会社職員(2人) 該当駅舎の駅務室訪問 → スクリーンドアの鍵受領 → スクリーンドア保守 → 駅員、管制へ報告 → 管制室、該当の列車に注意運転通報 → 該当の列車注意運転。 このように多段階報告を経るのだが、下請労働者は列車運行を総括している総合管制室と直接連絡を取ることができない。 スクリーンドア維持保守担当者が正社員だったなら、総合管制室に列車の注意運転を直接要請できたはずであり、「2人1組点検」を守ることができたはずだ。ソウル都市鉄道ではスクリーンドア維持保守業務を正規労働者が担当しているので、業務中の無念な死亡事故は発生していない。

ソウル地下鉄2号線乗務員のファン・チョルウ氏 //ハンギョレ新聞社

 ソウル市のバク・ウォンスン市長は「労働尊重特別市ソウル2016推進計画」を最近発表した。しかしセウォル号の惨事の教訓は 活かされなかった。セウォル号の惨事以降、韓国社会には、少なくとも市民の安全と生命を担当する業務だけは最優先的に正社員に切り替えなければならないという社會的共感が形成された。 スクリーンドア死亡事故の再発を防ぎ、働く労働者の労働権を保障するには、子会社への転換ではなく直接雇用の正社員への転換が正解だ。

 若い下請労働者の死を、今からでも防がねばならない。

ファン・チョルウ(ソウル地下鉄 2号線乗務員)  (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力:2016-05-30 21

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/746056.html?_fr=sr1 訳A.K

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