中国と関連した外交安保、経済分野の懸案が朝鮮半島に集中した。 高高度防衛ミサイル(THAAD)配備とアジアインフラ投資銀行(AIIB)への加入問題だ。
THAADは米国が主導する武器システムだ。 アジアインフラ投資銀行は中国が主導する国際金融機構だ。 米国と中国は二つの事案を巡って勢力争いを展開している。 韓国はその間で苦しい選択を迫られているように見える。 米国は韓国のアジアインフラ投資銀行加入が気に入らない。 この銀行が自国主導の国際金融秩序を揺るがす中国の挑戦だと感じているためだ。 その一方で中国は韓国にTHAADを配備するなと言う。 THAADは北朝鮮ではなく中国を牽制しようとしていることが明らかだということだ。
韓国は困惑せざるをえない。米国は同盟国だ。 中国は最大の貿易相手国だ。 韓国は仕方なく時間稼ぎを選択した。 韓国はTHAADに対して「戦略的曖昧性」という言葉を使いだした。アジアインフラ投資銀行に対しては「3月末までに結論を出す」と答えた。 3月末は創立メンバー国の資格を得られる締め切りの期限だ。 少なくとも明確な目標を持っていたわけではなかったようだ。 大学入試の際の様子見作戦を彷彿とさせる態度だ。 政府の困惑を理解できないわけではないが、物足りなさと苦々しさを拭えない。
外交はタイミングと主導権の戦いだという。 二つの事案に韓国はタイミングを逃したようだ。明確な意思を表明するタイミングを逃したために言動と行動が苦しくなり、原則の不在が赤裸々にあらわれた。
THAAD問題で韓国は曖昧さを超え、一貫性もなく不透明な姿を見せた。 米国側からTHAAD配備に関する韓米協議説が流されたが、韓国政府は「提案も、議論も、結論もない」と知らぬふりで一貫した。 その間に軍部からは「配備すれば安保に役立つ」という枝葉末節な話が出てきた。 訪韓した劉建超(リュ・ジェンチャオ)中国外交部部長助理(次官補級)が「中国の憂慮と関心を重視することを望む」と公開で反対意思を表明すると、韓国当局は急変した。 国防部が「周辺国が安保政策に影響力を行使しようとしてはならない」と「内心を見透かされる」話をした。 すぐに曖昧性を放り出し怒る内心を見せてしまったわけだ。 しかも国防当局の発表は訪韓中だったダニエル・ラッセル米国務省東アジア太平洋担当次官補の言葉とそっくりだった。 悪いことに中国には怒った顔を見せ、米国には一方的にすり寄る姿を露出したわけだ。
その反面で、アジアインフラ投資銀行については右往左往した末にあたふたと最終列車に乗る込むようだ。 韓国は事実上加入に傾く雰囲気だ。米国の同盟国である英国の加入により大勢は一瞬で決まった。続いてフランス、ドイツ、イタリアなどがドミノ倒しのように加入意思を明らかにした。 急変するムードの中で韓国が持つ経済力と政治的特殊性という交渉テコを十分に使う暇もなかった。 バスの搭乗条件を駆け引きする間もなく慌てて乗らざるをえない境遇になった。 大勢が決まると銀行の資金を用意しようと韓国に積極的に参加要請してきた中国の態度も変わった。 中国の官営メディアは「政治的意味合いで発展の好機を逃すな」と入れ知恵もした。 中国外交部は20日「韓国も加入を積極的に考慮するという意思を明らかにした」と先手を打った。 事実上、言い逃れできないよう釘を刺すような論評だった。 韓国が米国の顔色を伺いながら“努めて”慎重な態度を死守している間に中国に主導権が移ってしまったわけだ。
THAADとアジアインフラ投資銀行。 明確な指向の不在は、戦略のない時間稼ぎにつながり、ついには急変する状況に巻きこまれることにつながった。 相手のどちら側からも心がこもった歓迎や信頼を得られずに、原則の不在と惨めな境遇だけを露呈したようで苦々しい。