修学旅行の高校生ら459人を乗せた大型旅客船セウォル号が16日午前、全南珍島の近海で沈没した。300人近い人たちが事故で命を失ったり失踪したりした。水が一杯になって沈むまで2時間余りという大惨事だ。真夜中でもないのに、このように無力なまま、若々しい元気な命が失われるのを見ているしかなかったのだから呆れ返る。亡くなった魂と遺族にはかける言葉をとうてい見出せないしだいだ。惨憺たる思いで弔意を表わしたい。
事故状況を聞けば、残念で心苦しいことこのうえない。生存者の話では‘ドーン’という音とともに事故が起きた直後に、船舶会社側は乗客に動かないよう呼びかけたという。船内が水に浸っても、じっとしているようにとばかり言ったということだ。そのうち水が突然急速度で上がってきて、船は急激に傾き、乗船者たちは船室の片側に押し寄せられ、逃げ出すことも難しくなった。そのような修羅場で十六才の高校生たちが体験した恐怖と混乱を考えれば胸が張り裂けんばかりだ。
事故直後、直ちに船室外に待避するよう案内していたなら、はるかに多くの乗客が救助されえただろう。実際、船がほとんど沈んだ時点でも船内には大勢が残っていたらしいという。速かに行動したとすれば惨劇を最小化する時間と機会があったわけだ。残念な事案は他にも多い。事故現場には救命イカダが使われた形跡がほとんど見られなかった。船舶会社側が乗客を落ち着かせて組織的に待避と救助に導いた跡も別段ない。安全規定と緊急時の避難規則がきちんと組まれて実行されていなかったせいと見るしかない。
事故の申告が受け付けられた後に軍と海上警察の船舶、航空機や民間漁船が緊急出動したが、急な海流など様々な事情のために救助は大きな困難を経たという。だとしても目の前の大型惨事を防ぐことができなかったことは、いかなる理由でも弁解し難い。失踪者の捜索や船体引き揚げ対策にもはっきりしない。大型事故に対する対策とマニュアルがあったのか、問わざるをえない。事故後の対応もいいかげんで不十分だった。政府は一時、乗客の大部分を救助したかのように発表し、すぐ後に集計ミスだったと明らかにして、遺族と国民の胸をさらに痛めた。このような後進国型の事故は過去数十年間に1度や2度ではなかったのに、事故の対応体系は相変らず足踏み状態だ。これでは国民は安心できない。
政府は今回の事故原因を徹底的に明らかにして、再びこうしたことが起きないようにしなければならない。事故船舶は決まった航路を通う6825t級の大型旅客船だ。座礁による事故だった可能性もあるが、運行過程での過失や船舶管理の不良を疑わざるをえない。実際、事故は正常航路から大きく離れた地点で起きた。また事故船舶は建造されて20年になる中古船舶を買い入れて直したものだという。無理な運行や過度の改造が沈没の原因になったのではないか、調べなければならない。
さまざまな人が利用する建築物や交通手段に厳格な安全基準を適用して、これを守るようにするのは国民の安全を守らなければならない政府の一次的責務だ。2月の慶州での体育館崩壊事故で新入生歓迎会に参加していた大学生が多数死亡した事故も、積雪の荷重基準が低く定められた上に、それさえもきちんと守られていなかったためだった。今回もそのような誤りがなかったか、つぶさに調べて正さねばならない。そうしてこそ今回のような“後進的”惨事の繰返しを防ぎうる。