朴槿恵(パク・クネ)大統領が休暇先の砂浜に書いた‘猪島の追憶’には理由がある。 彼女の父親 朴正熙元大統領は先立った夫人を懐かしがってさまざまな詩を書いた。 朴槿恵大統領は2007年、自叙伝に‘猪島の追憶’というタイトルの詩を紹介したことがある。
"太陽と月は昨日も今日も登っては沈み、波の音は昨日も今日も変わらず聞こえてくるが、貴方は逝って会う術もないので、あの倉天に高く浮かんだ白い雲に乗って、あの地平線の向こう側の遠い国で、果てしない大空の銀河の川辺に青い星となって、遠くこの島を見下ろして輝いていることだろう、あそこのあの星だろうか、あの星だろう"
朴槿恵(パク・クネ)大統領にとって父親と母親は越えることのできない絶対的存在だ。 父親がクーデターで最高権力を握った時、わずか9才だった。 10月維新で憲政が中断された1972年10月、彼女はスペインのタンカー進水式に参加して、スペイン語で演説していた。 外交舞台にデビューしたのだ。 20才の時だ。 そのような彼女が大統領になれば、父親の時代の人物を何人か抜てきするという予測は大統領選挙前からあった。 キム・ギチュン秘書室長に対して世間の批判が激しくなかった理由はそのためだろう。
ヒョン・オソク副総理兼企画財政部長官が8日、朴槿恵政府の5年間に推進する税金政策の骨格を発表した。 年末精算の時に所得控除項目に含まれた医療費と教育費などを税額控除方式に切り替えるということが主な内容だ。 大統領府・セヌリ党と協議を経たので、党・政府・大統領府案だ。 翌朝、新聞の1面トップのタイトルはこのように出された。
‘サラリーマン434万人 増税’(国民),‘中産層 絞り取り…年俸3450万ウォン以上は所得税増税’(東亜),‘サラリーマンが再びカモに’(世界),‘結局、サラリーマンに手を伸ばした政府’(朝鮮)。
キム・ギチュン秘書室長任命時よりはるかに批判的だ。 市中の世論も険悪だ。 朴槿恵政権は総理および長官候補者落馬、大統領府報道官セックススキャンダル、国家情報院コメント事件など危機を体験してきた。 しかし今回直面した税金波紋が最大の危機になるようだ。 租税抵抗はそれほどに恐ろしい。
何を誤ったのだろうか? 朴槿恵大統領の公約集を探してみれば、「減免制度を既存の所得控除中心から所得水準にともなう不公平性を減らす税額控除方式に徐々に転換」となっている。 約束通りに履行したのだ。 だが、公約集には‘地下経済縮小’、‘金融所得および事業所得に対する課税強化’という約束も入っている。 今回発表した租税改編案ではこのような部分が甚だ不十分だ。
野党が要求する金持ち減税の撤回は最初から試みすらしなかった。 実効性に欠け、政権が揺れるということが理由だ。 果たしてそうだろうか? 去る5月まで国税収入は前年同期比で9.7兆ウォン減少した。 この内、法人税数の減少額が4.3兆ウォンで45%を占める。 法人税を減免したが働き口は増えなかった。 租税の核心は公平性だ。 サラリーマン中産層の怒りは正当だ。
それでは今からどうしなければならないのだろうか? 福祉公約を撤回しろとの要求がある。 持てる者らの主張だ。 可能だろうか? 不可能だ。 福祉は時代の要求だ。 朴槿恵大統領は福祉国家と経済民主化を約束した。 信頼は朴槿恵大統領が持つ全財産だ。 信頼が崩れれば政権が崩れる。
朴槿恵大統領は12日、首席秘書官会議で‘庶民と中産層の軽い財布をこれ以上薄くすること’は原点から再び検討せよと指示した。 思い違いをしている。 中産層は税金をより多く出す用意がないわけではない。 金持ちと大企業に税金をまともに払わせないことに対して腹を立てたのだ。 付け焼刃対処は危機を深化させる。 骨組みを組み直さなければならない。 公約集はこのようになっている。
"福祉支出増加などで財政収入の拡大が必要な状況であるので、潜在的納税者と受恵者の皆が参加して、その幅と方法を導き出す必要がある。 自身を含めて共同の負担拡大に基づいた福祉社会の実現議論を時代の使命である国民大統合の機会に転換させるため、国民大妥協委員会で実効性ある合意を導き出す。" そのようにすれば良い。 国民大妥協委員会を直ちに設置しなさい。
ソン・ハンヨン政治部先任記者 shy99@hani.co.kr