現政権の初期から論議をかもしてきた金星出版社の<韓国近現代史>教科書修正攻防について最高裁が15日、教育科学技術部長官の越権とする趣旨の判決を下した。当初、ニューライト団体などが左偏向ととりざたして是非を論じるや、教科部長官が乗り出して修正命令を下したが、最高裁は 「教科書検定制度は憲法上の教育の政治的中立性を実現するためのもの」として、命令はこの趣旨を逸脱していると判示した。今回の判決で教科部長官がむやみに教科書に手をつけることが憲法の趣旨に抵触するということが明確になった以上、直ちに教科書修正の動きを元に戻すのはもちろん、教科部の初中等教育法改正の動きもやはり直ちに撤回するのが当然だ。
最高裁は、キム・ハンジォン韓国教員大教授ら教科書の著者3人が教科部長官を相手に起した行政訴訟で「検定制度を採択して教科用図書審議委員会の審議などを経るようにしたことは、憲法31条4項で保障されている教育の自主性・専門性・政治的中立性を実現するためのもの」と明らかにした。したがって「教科部長官の修正命令が教科書の技術的事項や客観的な瑕疵を正すレベルを越えて、内容を実質的に変えるほどならば、新しい検定手続きを踏む場合と同じように教科用図書審議会の審議に準ずる手順を踏むべき」としているので、教科部はこれに反したことになる。これによると長官の教科書修正命令を法制化しようとしている教科部の法改正案は、憲法の趣旨を正面から損なうものと解釈せざるをえない。
金星出版社の近現代史教科書論難は、当初ニューライトなどの保守指向政治学者と史学者が集まった教科書フォーラムなどが 「左偏向が激しい」 として是非を論じて始まった。論議のすえ、最高裁が憲法上、教育の政治的中立性がきちんと保障されなければならないという判断をした以上、もう消耗的な論議は終わりにすべきだ。
特に教科部が2010年と昨年8月に法改正案を出したために違憲の素地があるなどの指摘を受け、いったん引っ込め、再び先月初中等教育法改正案の立法予告に踏み切ったことは、時代錯誤的な態度としか見られない。朴槿恵 次期大統領に捧げる贈り物という皮肉を買いたくなければ改正作業を直ちに中断することを願う。