「代々受け継がれてきた文明が流され、砂漠のように変貌した現場で、死者を尊厳を持って収容することが最も困難です。すでに発見された遺体だけで3000体に達しており、全国に備蓄していたボディバッグ(遺体袋)2000枚も底をついてしまいました」
ネパール赤十字社(NRCS)のサガル・シュレスタ災害・危機管理局長(39)は30日、ハンギョレとのオンラインインタビューでこのように述べ、「水に国境がないように、災害にも国境はない。ネパールだけの責任ではなく、中国とインドを含む3カ国の共同責任だ」と語った。少なくとも900人以上が死亡し、4千人余りが行方不明となった26日のネパールと中国チベット自治区の大洪水は、シュレスタ局長が対応に携わる2度目の大規模災害だ。
■「まるで文明も存在しなかった場所のように変わり果てた」…1カ月前とは別世界
カトマンズ本部で現場に向かった同僚たちの報告を受けているシュレスタ局長は、被災地について「建物や村、代々農業を営んできた農地がすべて流され、砂漠や無人地帯のように変わった」とし、「まるで文明も存在しなかったかのように感じられるほどだ」と語った。わずか1カ月前、彼が訪れたこの地域の姿は完全に消え去っていた。
シュレスタ局長が挙げた最も差し迫った問題は、犠牲者の収容と身元確認だ。「赤十字はこれを『遺体の処理』ではなく『死亡者の尊厳ある管理』と呼んでいる。現在、最大の難題だ」
シュレスタ局長の説明によると、チベット側の犠牲者までネパールの下流に流されてきて、発見された遺体は3000体以上。当局が発表する死者数は身元が確認されたものであり、現場でははるかに多くの遺体が発見されているという。ネパール赤十字が保有していた遺体袋2000枚は、捜索・救助に投入された軍や警察などにすべて支給され、現在は国際赤十字委員会(ICRC)や国際赤十字社連盟(IFRC)、インド政府の支援を受けている。
時間が経つにつれ、身元の確認も難航している。国際赤十字委員会の法医学専門家たちは、タトゥーや写真照合など身体的特徴を活用して身元を確認しているが、遺体の腐敗が進み、肉眼での識別が難しくなっている。シュレスタ局長は、「『交際相手や夫、父親を探してほしい』という要請が数百件も殺到している」とし、赤十字の「家族間連絡回復(RFL)」サービスも稼働させていると述べた。
■「洪水情報を国間で共有できていれば」
依然として現場では希望を捨てず、孤立地域の生存者捜索を続けている。赤十字は軍などと協力し、ラスワ、ヌワコット、ダディングなど上流の3地域で捜索を支援しており、インド国境周辺の下流にあるチトワン、ナワルパラシなどでは、流されてきた犠牲者の遺体を収容している。シュレスタ局長は、上流で洪水を逃れて山に避難したものの道に迷った住民や、破壊された水力発電所のトンネル内に閉じ込められた人々などについて、「依然として生存者を見つける可能性がある」と話した。
ただし、道路や橋が寸断され、モンスーン期の雲や霧によりヘリコプターの運航さえ難しく、支援の妨げとなっている。一部の村は依然として孤立しており、浸水していない村でも飲料水の供給源が流失し、食糧が不足している状況だ。これを受け、ネパール赤十字社は300人以上のボランティアを投入し、捜索・救助支援や避難所・飲料水の管理、犠牲者の収容、心理的支援などを行っている。
シュレスタ局長は、ネパール北部がチベットと接しているため、ネパールだけの備えでは対応が難しいと強調した。局長は「中国側から洪水が押し寄せてくるという事前情報があれば、より多くの命を救えたはずだ」と述べ、国家間の情報共有を求めた。
ネパールは早期警報システムに投資しているが、気候危機や洪水には国境がないだけに、中国とインド、ネパールの3カ国の連携が必要だと、シュレスタ局長は述べた。ただし、様々な災害リスクに常にさらされているネパールでは、持続的な災害対策体制を維持することが重要だが、「政権が次々と変わり、災害管理の一貫性を維持するのが難しい状況」とも指摘した。
■「今回が初めてでも最後でもないだろう」
昨年も同地域の洪水で20人が死亡するなど、ここ5年間で類似の災害が繰り返されている。シュレスタ局長は「今回が初めてでも最後でもないだろう」とし、これを気候変動によって予見された災害と捉えるべきだと述べた。さらに「我々は地球温暖化に影響を及ぼしたわけではないが、その被害者となった。気候変動が進むスピードに、私たちが対応しきれていないだけだ」と述べ、財政支援に加え、生計、仮設避難所、飲料水、衛生支援を訴えた。
さらに、大韓赤十字社が長年の協力関係に基づき、飲料水・衛生(WASH)および避難所の分野で支援を行ってきたこと、今回も韓国の支援により備蓄されていた救援物資が現場対応に大いに役立っていると強調した。