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目標ぶれた末に「終戦は間近」発言…行き詰ったトランプ、出口はあるか

登録:2026-03-11 08:25 修正:2026-03-11 10:04
[チョン・ウィギルのグローバル・パパゴ]
2日、テヘランの住宅街に爆弾が落ち、煙が立ち上っている=テヘラン/AP・聯合ニュース

チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは?

 「パパゴ」は国際公用語のエスペラント語でオウムを意味します。鋭い洞察と豊富な歴史的事例で武装したチョン・ウィギル先任記者がエスペラント語でさえずるみなさんのオウムとなり、国際ニュースの行間をわかりやすく解説します。

■何が起こっているのか?

 イラン戦争が10日目を迎えた9日(現地時間)、米国のトランプ大統領は「戦争はほぼ完了した」と述べ、終戦が迫っていることを示唆した。先月28日にイランを先制攻撃して以降、イランの軍事能力の除去から無条件降伏まで戦争の目標を広げておいて、10日目に突如「終戦間近」だとの発言だ。戦争の目標がぶれていたトランプ大統領が、出口を見出せるのかが注目される(編集者)

Q.トランプは、前日まではイランの無条件降伏を掲げ、必要なだけ戦争を続けると言っていたが、突如として戦争はほぼ完了したと言った。なぜなのか。

A.イランの抗戦が続いていることで、被害と波紋が指数関数的に拡大している。イランは次期指導者モジタバ・ハメネイを選出した9日前後に、イスラエルおよびアラブ全域に対するミサイルとドローンによる攻撃を再び強めた。戦争のコストも、米国とイスラエルの側は爆弾や出撃などで一日10億ドル(約1兆4732億ウォン)、被害まで合わせると1000億ドル(約1473兆2000億ウォン)に迫るとも計算されている。

 イスラエルが9日にテヘランの大規模石油貯蔵施設を空爆し、炎が広がる様子が世界中に中継されたことで、原油価格は一時1バレル当たり120ドルにまで急騰。イランは報復を誓った。米国はこの事態に困惑し、イスラエルに不満を表明してもいる。イランは自国のケシュム島にある淡水化施設が攻撃されたことを受け、直ちにバーレーンの淡水化施設を攻撃した。石油貯蔵施設や淡水化施設への攻撃は、国際原油価格と中東の水供給にとって災厄だ。何よりもホルムズ海峡の封鎖は、イランの抗戦が続けば解決策がない。

Q.トランプは終戦が迫っていると言っているが、戦争の目標は達成されたのか。

A.トランプは9日に、イランの軍事能力は完全に破壊され、何もないと主張した。ルビオ国務長官は、戦争の目標はイランのミサイル能力の除去だと述べている。しかし、トランプがそう主張する直前にも、イスラエルではイランによるミサイル攻撃を警告するサイレンが相次いで鳴り響いた。頻度は低下したものの、イランは依然としてイスラエルやアラブ諸国の主要施設を攻撃するミサイルやドローンの力量を示している。米国とイスラエルはイランとの核協議の最中に先制攻撃を行い、戦争を引き起こした。イランの核能力の除去を今回の戦争の第一目標に掲げた。前日も米国は、イランの濃縮ウランの破壊と除去のために特殊部隊の派遣を検討していると語っていた。

Q.では、トランプの今回の戦争の目的は何だったのか。

A.「戦争は明確な目標と出口戦略が前提となるべきだ」というパウエル・ドクトリンがそもそも無視されていたと批判されている。

 トランプは先制攻撃直後の先月28日の映像演説で、「我々の目標はイラン政権からの『差し迫った脅威』を除去することで、米国民を守ること」だと述べつつ、ミサイルと海軍力の破壊▽核武装の永久防止を掲げた。またイランの大衆に対して「みなさんの自由の時間がやって来た」、「我々が作戦を終えたら、みなさんの政府を掌握せよ」と述べ、政権転換を扇動した。

 彼はまさにその日のアクシオスとの会見で、「イラン全体を制圧する長期戦になる可能性もあるが、2~3日以内に終わらせる可能性もある」と述べた。

 CNNに対しては2日に「私は地上軍投入に緊張してはいない」と述べ、地上軍の投入をちらつかせつつ、戦争は「4~5週間を予想していたが、それよりも長くやる能力もある」と語った。4日と5日にはイランの次期最高指導者について「指導者になりたがっている者は誰であろうと、結局は死を迎える」と警告し、「私はベネズエラでデルシー(ロドリゲス大統領代行)とおこなったように、イランの指導者任命に関与しなければならない」と述べた。

 6日には「イランとの合意は『無条件降伏』以外にはないだろう」と述べ、7日には「圧倒的に勝利しつつある」、「必要なだけ続く」と語った。戦争の目標を引き上げ続けたことで、出口も遠のいてしまった。そして9日、突如として「戦争はほぼ完了した」と語った。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの8日の報道によると、戦争の目標を具体的に設定しなかったのは「戦略的柔軟性を維持するための意図的な選択」だとトランプ政権の高官が釈明したという。イランの軍事・政治状況に応じて政権転換、交渉、限定的抑止という選択肢を随時選び、「ポスト・イラン」議論をオープンにしているのだという言い訳だ。

Q.最終的にイランの「無条件降伏」を要求し、それこそ戦争の出口だと宣言したかたちになっているのではないか。

A.イランが無条件降伏しなければ戦争は長期化し、出口はない。ホワイトハウスもそれを意識して小細工を弄してはいる。

 ホワイトハウスのレビット報道官は「壮大な怒り作戦の目標が完全に達成されたと判断される時点になったら、イランが自らそう宣言しようがしまいが、無条件に降伏状態に置かれる」と述べた。トランプも同様の趣旨の発言をおこなった。つまり、トランプが戦争の勝利を宣言すれば済むということだ。トランプの述べた4~6週間が経過する頃に目標を達成したとして勝利宣言することが戦争の出口になり得たが、トランプは10日で「戦争ほぼ完了」を示唆したのだ。イランの抗戦が続いていることでトランプは真っ向から対応し、事態をエスカレートさせ、自ら足を引っ張った。

Q.トランプに軍事的、政治的対応のレベルを高めさせたイランの抗戦は、どれほどのものなのか。

A.開戦初日からイランは即座に反撃し、バーレーンの米海軍第5艦隊をはじめ、中東全域の米軍基地とイスラエルを攻撃した。2日目にも、イランは米軍の警報レーダー施設に大きな被害を与えた。

 カタールのアル・ウデイド基地の早期警戒レーダー「AN/FPS-132」、UAEのアル・ルワイスおよびヨルダンのムワッファク・サルティ空軍基地に配備されたTHAAD用レーダー「AN/TPY-2」が一斉に攻撃を受けた。とりわけアル・ウデイド基地のAN/FPS-132は最大5千キロ離れた複数のミサイルを同時に追跡する最重要の早期警戒レーダーであり、約11億ドルにのぼる戦略資産だ。米国本土を標的とする長距離からの脅威に対する早期探知網にも使用される。THAADレーダーも1基あたり5億ドルに達する高価な機器だ。

 米軍は6日、イランの弾道ミサイル発射は戦争初日と比べて90%、ドローン攻撃は83%減少していると発表した。ミサイルやドローンによる攻撃は減少したものの、イランは昨年6月の「12日間戦争」よりもはるかに正確な攻撃能力で、依然としてイスラエルやアラブ諸国を攻撃している。イスラエルの早期警戒を可能にするこれらのレーダーをまず無力化し、攻撃の被害を拡大することが目的だ。

 イランの攻撃によってレーダーなどの防御網の運用に負荷がかかっていることに対し、一部のアラブ諸国の間では、米国はイスラエル防衛を優先しているのではないかという不満と疑念が高まっている。AP通信とディフェンス・ニュースが伝えた。ルビオ国務長官は今月初めの議会で記者団に対し、「イランは月に100発以上のミサイルを生産するのに対し、米国は月に6~7発の迎撃ミサイルしか生産できない」と述べた。ダン・ケイン統合参謀本部議長も、イランとの戦争における米国のこのような迎撃および精密誘導兵器の在庫不足に懸念を表明した。何よりも、イランの抗戦が続く限り、原油価格の高騰などを招き世界経済を揺るがすホルムズ海峡の封鎖を解除する現実的な手段がないことが、深刻な問題だ。

Q.トランプが終戦間近を示唆したことで、イラン戦争はもう終わらせられるのか。

A.マキアヴェッリは「戦争は望む時に始められるが、望む時に終わらせることはできない」と言った。イラン革命防衛隊は「戦争を始めたのは米国だが、終わらせるのは我々」だと述べている。

 トランプが戦争を終わらせようとしても、終わらせられるかは別問題になりうる。今やイランもこの戦争の規模と継続期間を決定する権限を握っている。米国外交問題評議会のリチャード・ハース名誉会長がトランプの終戦間近発言の前にそう指摘している。

 戦争の継続はイランにとっても体制をかけた博打(ばくち)であり、新たな最高指導者も命の危険にさらされている。世界経済の要のひとつであるホルムズ海峡が事実上封鎖されたのは、中東戦争史上初めてだ。イランとしては、これを機に米国とイスラエルに対する抑止力を十分に示そうとするだろう。終戦交渉への道も順調とは行かず、交渉でも双方が大義名分と体面を保とうとするだろう。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1248616.html韓国語原文入力:2026-03-10 16:11
訳D.K

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