北朝鮮の「敵対的二国家」宣言とロシアへの接近の動きは、北朝鮮の「防衛的生存戦略」への転換を意味しているという分析が提起された。朝鮮半島の戦争のリスクを高めるという一般的な懸念とは異なり、実際に戦争が起きる可能性は小さくなったという。
米国マサチューセッツ工科大学(MIT)安全保障研究計画(SSP)上級研究員のジェームズ・ウォルシュ博士は7日(現地時間)、ハンギョレのビデオインタビューで、「トランプ大統領という不確実な変数を除けば、朝鮮半島における戦争のリスクは、むしろ劇的に減少した」として、韓米は正確な現実認識に基づき対北朝鮮政策を設計すべきだと強調した。ウォルシュ博士は、イランと北朝鮮を訪問し、当局者と核問題を直接協議した経験を持つ数少ない米国人学者の一人。
■「統一放棄はすなわち『武力統一』放棄…『防衛モード』に転換」
ウォルシュ博士は、北朝鮮の戦略の変化を示す最も決定的な指標として「統一放棄」宣言を挙げた。「北朝鮮が長年維持してきた統一の目標を放棄すると明言したことは、きわめて重大な事件」だとして、「彼らが言っていた統一は、事実上『武力統一』を意味していたため」だと説明した。北朝鮮は公式には平和的統一を標ぼうしていたが実際には吸収・支配を目標にしており、これを放棄したとの解釈だ。
北朝鮮がロシアと「包括的戦略パートナーシップ条約」(朝ロ条約・相互防衛条項を含む)を締結したのも、そのような「防衛的転換」の延長線上にあるとみた。「北朝鮮はもともと大国を信頼せず、同盟を敬遠する非常に気難しい独立国だ。そのような北朝鮮がロシアと手を握り、同盟を『大戦略(grand strategy)』として選択したことは、彼らが攻撃ではなく防衛のモードに入ったことを意味する」
■「挑発がすなわち侵攻のシグナルではない…北朝鮮、戦争すれば負けることを知っている」
北朝鮮の頻繁な挑発を戦争の前兆と解釈する見解には警戒を示した。「挑発はすなわち侵攻の意図だとみなす混同が常に存在するが、これは事実ではない。偶発的な衝突やトランプ大統領と韓国の誤った判断による状況を除けば、北朝鮮は戦争を望んでいない」と断言。「北朝鮮は、戦争をすれば自分たちが敗北することを知っている」として、「彼らの後援者であるロシアと中国も同様に戦争を望んでいないことが、強力な制約要因」だと指摘した。過去の1960~80年代と同様に北朝鮮は弱く、後援国は朝鮮半島での戦争を支援する考えがないという構造的な現実はそのまま続いているという。「韓国とワシントンの多くの人が北朝鮮の脅威を強調するが、実際には戦争の可能性は非常に低い。誰も言わないが、戦争のリスクは実際には大幅に減った。正確な現実認識に基づき、対北朝鮮政策を設計しなければならない」
■「核兵器は防衛用の抑止手段…『防衛的均衡』状態に移行」
北朝鮮の核能力の高度化が脅威を増大させるという指摘についても別の見解を示した。「核兵器は攻撃用兵器ではない。核兵器で領土を占領できるわけではないではないか。核兵器は優れた『防衛用兵器』であり、『抑止手段』にすぎない」
現在の朝鮮半島の状況は、一種の「防衛的均衡(defensive equilibrium)」状態だと定義した。「逆説的だが、今は朝鮮半島において、一つの安定的な均衡点にある。戦争の可能性が減り、各国が自国の問題に集中している、悪くはない状況」だと評した。ロシアはウクライナ戦争に没頭しており、中国は朝鮮半島で大規模な戦争が起きることを望んでいないだけでなく、他国の問題に介入しないことを好むスタイルであるため、静かに身を潜めているという。
ただし、この均衡は望ましい状態を意味するのではないと強調した。北朝鮮は自ら作った罠に深くはまっており、現在の安定は、条件が変わればいつでも揺らぐ可能性があるという。一例として、現在の朝ロ密着の関係は永久ではないと見通した。「これは徹底的にビジネス取引(transactional relationship)だ。ウクライナ戦争が終われば、プーチンはイメージの洗浄を試み、北朝鮮を裏切るだろう」。また、「北朝鮮もロシアを信頼していないが、生存のために選択しただけにすぎない」と補足した。
ウォルシュ博士は、この時点が北朝鮮核問題の新たな可能性が開かれる転換点になり得るとみている。ウクライナ戦争終結でロシアが北朝鮮と距離を置き、北朝鮮内部では権力継承問題が本格化し、トランプ大統領の後に異なる性格の米国指導部が登場する三つの変化が重なるときが来れば、これまでとはまったく異なる交渉環境が形成される可能性があるという。「そのときになれば、われわれは別の局面に入ることになるだろう。異なる指導者たちとともに、まったく異なる状況が展開することになるだろう」