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米国と距離を置く同盟国…デカップリングかデリスキングか

登録:2026-01-29 00:15 修正:2026-01-31 12:18
チョン・ウィギルのグローバル・パパゴ
カナダのカーニー首相が20日、スイスのダボスで行われた世界経済フォーラム(WEF)で演説している/ロイター・聯合ニュース

何が起きているのか?

年明けから国際社会で米国のトランプ政権の暴走が続いていることを受け、カナダをはじめとする同盟国は米国との「デカップリング(分離)」に乗り出している。デカップリングは当初、米国による中国のグローバルサプライチェーンからの排除の試みだったが、今や米国自身が対象になりつつあるのだ。ベネズエラ侵攻とマドゥロ大統領の連行▽繰り返されるグリーンランド併合主張と武力使用も辞さずという脅し▽これに反対する欧州諸国に対する関税による脅し▽イランに対する軍事的威嚇▽アフガニスタン戦争で欧州諸国は最前線を避けたという発言▽中国と貿易をめぐって合意したカナダに対する100%の報復関税による脅しなどを受け、従来の同盟国は米国との関係の縮小、中国およびその他の国との関係の拡大などの動きを見せている。(編集者)

Q.年明けの国際社会での米国の暴走に対して、同盟国からは具体的にどのような反応や不満が表出しているのか。

A.代表的なものは、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF:ダボス会議)でのカナダのマーク・カーニー首相の演説だ。

 カーニー首相は「ルールにもとづく秩序は衰退しており、強者はなせることをなし、弱者は耐えねばならないことに耐えねばならないという現実」、「大国は経済的統合を武器として使用し、関税をテコとしつつ、金融インフラを強圧の手段として、サプライチェーンを悪用可能な弱点として利用しはじめている」と指摘した。カーニー首相は、したがって「統合が相互利益の源泉ではなく従属の源泉となった瞬間、その偽りの中で生きることはできなくなる」として、「その結果、多くの国はエネルギー、食糧、核心鉱物、金融、サプライチェーンでより大きな戦略的自律性を確保すべきだという、同じ結論に到達しつつある」と述べた。そして「同盟国は不確実性に備えて多角化するとともに、保険をかけて選択肢を増やすことで、主権を再建しようとするだろう」とし、「中堅国は共に行動すべきで、私たちが食卓に座っていないとすると、私たちはメニューに載せられるだけ」だと強調した。彼は「旧秩序は戻ってはこないし、それを哀悼してはならないし、郷愁は戦略ではない」と既存秩序の終えんも宣言した。

 ベルギーのデウェーフェル首相も「非常に多くの禁止線が侵犯された」、「満足な属国になることと不幸な奴隷になることは異なる」として、「いま後退すると尊厳、そして民主主義で手にしうるおそらく最も大切なものを失うだろう」と述べた。

 カーニーのこの演説が国際社会で話題になったことで、トランプは「カナダは米国のおかげで生きている」と述べつつ、「カーニーはこのことを覚えておき、次回は言及せよ」と改めて脅した。

Q.カナダは口だけではなく行動でも何らかのものを示しているのか。

A.カーニー首相はダボス会議の直前に中国を訪問し、両国の主要交易品の関税を大幅に引き下げることで合意した。カナダは第1期トランプ政権で始まった対中デカップリングに参加して中国に対して関税を引き上げており、先端製品の輸出制限もおこなっていた。その一環として2018年には、中国最大のテクノロジー企業ファーウェイの最高経営責任者の娘で、最高財務責任者でもある孟晩舟を対イラン制裁違反容疑などで逮捕したため、両国関係は大きく悪化した。

 カーニー首相は中国の習近平主席との首脳会談で、「世界は劇的に変化してきた」と述べつつ、カナダがどのように位置づけられるかということは「今後数十年間の私たちの未来を形成するだろう」と語った。カーニー首相は、米国が主導していた多国間主義体制は「弱まっているか、事実上傷ついている」として、両国のパートナー関係は両国に「新たな世界秩序」を設定しつつあると評価した。中国との関係拡大を通じて対米依存を弱めるということだ。カナダはインドやオーストラリアなどとも、貿易などで関係拡大に乗り出している。

 さらに、カナダ軍が米軍の侵攻を想定した計画を作成したことを、カナダの日刊紙「グローブ・アンド・メール」が20日に報じている。これは軍事計画ではなく概念的で理論的な枠組みだが、カナダ軍が米軍の侵攻を想定した計画を立てたのは100年ぶりだ。同じNATOの同盟国同士で侵攻を疑うところまで来ているのだ。トランプがカナダを米国の51番目の州にすると公言したり、カナダの北にあるグリーンランドを武力を用いででも併合しうると脅したりしたからだ。

 対してトランプは24日、「もしカナダが中国と取引したら、米国にやって来るすべてのカナダの商品と製品に100%の関税が直ちに課されるだろう」とまたも脅した。ベッセント財務長官も25日のABCとの会見で、「中国が米国に安い商品を浴びせるための穴にカナダがなるのを放っておくことはできない」として、「彼らが自由貿易協定を結べば、100%関税の可能性がある」と再度威嚇した。

 カナダは中国との自由貿易協定の可能性はないと否定しているが、米加両国の関係は友好国だとは思えないほど悪化している。

Q.他の同盟国の反応や動きは。

A.欧州連合(EU)は20年にわたって議論を続けてきたインドとの自由貿易協定を急進展させている。

 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は26日、インドの首都ニューデリーで開催された「共和国の日」記念式典にEUの高位級人士としては史上初めて出席し、27日には自由貿易協定をめぐる交渉をまとめた。EUとインドは両者の自由貿易協定を「すべての協定の母」と呼ぶほど、その波及効果に期待を寄せる。高率関税などによる市場保護で悪名高いインドは、EUから輸入する自動車に対する関税を従来の110%から40%に引き下げる。EUはインドから輸入する織物や宝石などの関税を撤廃する。

 EUとインドが20年も引き延ばしていた自由貿易協定を突如妥結したのは、米国の一方的な高率関税のせいだ。フォン・デア・ライエン委員長はダボス会議で、「EUとインドの力を合わせるということは、世界の総生産の4分の1を占める20億人の人口の自由市場を作るということ」だと語った。EUは、インドとの関係拡大で対米依存を弱める、との意志を示したのだ。

 インドは第1期トランプ政権時代、米国の対中デカップリングに積極的に加わり、対中依存を弱めようとしていた。ところが、再び政権の座についたトランプがインドによるロシア産石油の輸入などを問題視して50%の相互関税を課したことで、改めて米国との距離を調整している。

 欧州における米国の最高の同盟相手である英国も、中国との関係拡大を試みている。スターマー首相は今週北京を訪問し、貿易をめぐって合意を目指すなど、両国関係の拡大を推進する。

Q.米国の既存の同盟国が推進する米国とのデカップリングは、現実的に可能なのか。最近の同盟国の動きは、米国への依存を弱めることを目指す関係の多角化とみるべきではないか。

A.そうだ。米国への依存を弱めるとともに危険を避けようという「ディリスキング」を開始したものだと考えられる。

 しかし、NATOとしてまとまっていた米国と欧州は、今や感情的には同盟だとはみなし難しい状況に至っている。米国と欧州のメディアでは一斉に「大西洋両岸同盟の瓦解」という表現が用いられている。米国のことを、同じ価値観を共有する同盟相手だと考えている欧州住民は、すでに16%のみであることが、昨年11月の欧州外交問題評議会(ECFR)による調査で明らかになっている。2024年の21%からさらに低下しているのだ。欧州における米国の最大の同盟相手である英国でも、2024年は37%だったが、昨年は25%にまで低下している。

 このような中、トランプの米国はグリーンランド併合で武力も排除しないと脅し、欧州諸国は独自にグリーンランドで合同演習を行い、トランプはこの演習に参加した欧州諸国に関税を課すと脅した。このような状況だけをみると、両者は同盟関係にあるとは事実上みなし難い。米国もウクライナ戦争の処理を欧州に押し付け、西半球勢力圏の強化および中国への対処に集中しようとしている。

 だが欧州などの米国の従来の同盟諸国は、ウクライナ戦争でロシアとの関係は最悪であり、中国には市場を蚕食されているのが現実だ。米国の従来の同盟諸国は、これからが独り立ちのはじまりだと言える。欧州はロシアとの関係を再調整するとともに、中国とも貿易問題で妥協しなければならない。

 3年後、米国で民主党政権が再び発足すれば、米国と同盟国との関係が改善する可能性もあるが、両者の行く先はこれからさらに遠ざかっていくことは明らかだ。

[チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは?]

 「パパゴ」は国際公用語のエスペラント語でオウムを意味します。鋭い洞察力を有し歴史的事例を豊富に知るチョン・ウィギル先任記者がエスペラント語でさえずるみなさんのオウムとなって、国際ニュースの行間をわかりやすく解説します。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1241828.html韓国語原文入力:2026-01-27 10:38
訳D.K

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