イスラエルのエフード・オルメルト元首相は、イスラエル政府がガザ地区南部に建設しようとしている、いわゆる「人道主義地域」について、「パレスチナ住民たちの強制収容所になるだろう」と批判した。
オルメルト元首相は13日(現地時間)、英紙ガーディアンのインタビューで、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相が最近発表した、ガザ地区南部のラファでの人道主義地域の建設計画について「強制収容所だ。遺憾だ」と述べた。これに先立ち、カッツ国防相は、60万人の住民を皮切りに、200万人以上のガザ地区の住民全員を受け入れる計画だとして、「人道主義地域」という名の事実上の強制収容施設の建設計画を7日に発表した。オルメルト元首相は2006~2009年にイスラエルの首相を務めた。
これについて、オルメルト元首相は「パレスチナ人をこの人道主義地域に追放するのであれば、これは民族浄化」だとして、「現時点ではそのようなことは起きていないが、数十万人のための収容所を作ろうとする試みだという解釈は避けられないだろう」と述べた。ただし、オルメルト元首相は、現在のイスラエル国防軍(IDF)がガザ地区で実施している作戦自体を民族浄化とはみなさなかった。しかし、数カ月にわたりイスラエルの極右の閣僚たちがガザ地区を「浄化」せよと要求してきたことや、イスラエル入植地の建設計画などを推進してきたなかで、政府が人道主義地域という一種の収容所を建設するという主張は、パレスチナ人を保護することにはなりえないと強調した。オルメルト元首相は、極右の閣僚たちを「内部の敵」と呼び、「この戦略はパレスチナ人を救うのではなく、彼らを追放し、押し出し、捨て去るもの」だと指摘した。
オルメルト元首相は、最近発生したヨルダン川西岸地区でのパレスチナ住民2人の死亡事件についても「戦争犯罪」だと指摘した。オルメルト元首相は「許すことも容認することもできない。最も残忍かつ犯罪的な手法で組織され操作された作戦が、継続して行われている」と述べた。さらに、オルメルト元首相は「イスラエルが占領したパレスチナの領土で、このような一貫した広範囲な暴力行為が行われているのは、イスラエル当局の支援と保護なしでは不可能だ」とも述べた。
12日にヨルダン川西岸地区では、20代のパレスチナ人青年1人と米国籍のパレスチナの青年1人の計2人が死亡した。2人は、イスラエルの入植者からの暴行や、イスラエル軍の発砲によって死亡した。西岸地区でのパレスチナ住民と入植者の対立や衝突は、1967年にイスラエルが第3次中東戦争に勝利した後、西岸地区を無断で占領して入植地を建て始めて以来ずっと続いている。
オルメルト元首相は、ガザ地区とヨルダン川西岸地区での残虐行為がイスラエルに対する怒りを増幅させていると指摘し、これをすべて反ユダヤ主義とみなすわけにはいかないとも強調した。オルメルト元首相は「米国でイスラエルに対する憎悪の表現がますます広がっている。そうした人たちを『反ユダヤ主義者』としておとしめている。(しかし)私は、そうした人たちを単なる反ユダヤ主義者だとは考えていない。そうした人たちは、テレビやソーシャルメディアを通じて(ニュースに)接するため、反イスラエル的(な考えを持つようになった)と考えている。『度を越している』と言う人たちの、痛ましいが正常な反応だ」と述べた。
オルメルト元首相は、イスラエル内部で政治的反対がない状況であるだけに、国際社会の強力な介入が必要だと主張した。また、イスラエルのメディアがパレスチナ人に対する暴力を正しく報道していないとも批判した。
2006年1月から2009年3月まで首相を務めたオルメルト元首相は、2023年10月7日にパレスチナのイスラム組織「ハマス」のイスラエル奇襲攻撃によって勃発したガザ戦争の初期には、政府を支持した。しかし、戦争が長期化し、ハマスとは無関係のパレスチナ民間人の被害が増加し、ガザ戦争がイスラエルのベンヤミン・ネタニアフ首相の私的な政治的戦争になったとして、政府批判の発言を続けている。今年に入り、イスラエルの進歩メディア「ハーレツ」への寄稿を通じて、イスラエルが戦争犯罪を行っているとも批判した。