ロシアとウクライナが直接交渉を始めた後も大規模な空襲が続いている中で、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は26日(現地時間)、西側がウクライナに提供した武器の射程制限を解除したと初めて明らかにした。
メルツ首相は同日、ドイツ・ベルリンで開かれた欧州フォーラムの行事で、「ウクライナに提供される兵器には、もはや射程距離の制限はない」とし、「英国、フランス、そして我々(ドイツ)と米国の(提供する)兵器も同様だ」と述べた。これは「ウクライナがロシア内の軍事陣地を攻撃して自らを防衛できるということを意味する」とも補足した。これは、ロシアがウクライナに開戦以来最大規模の無人機(ドローン)攻撃を加えるなど3日連続で攻勢を強めている状況で、ロシアに圧力を加えるための発言でもある。
ロシアは直ちに反発した。ロシア国営のタス通信の報道によると、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官はメルツ首相の発言に対し「これは危険な決定だ」としたうえで、「そのような決定が下されるならば、それは政治的解決に到達しようとする我々の熱望、合意の枠組み内で行われる努力に絶対的に反するもの」だと述べたという。
支援兵器の長距離制限解除と関連し、西側同盟国がどの水準までウクライナに武器を供与するかは不明だ。特に、前政権でドイツがタブー視した長距離巡航ミサイル「タウルス」を供与するかどうかが最大の関心事だ。メルツ首相はこの日、X(旧ツイッター)への投稿でも「今後もウクライナを支援するため、あらゆる力を尽くす」とし、「我々が供給する武器に射程制限を設けないということも意味する」と書いたが、具体的な支援計画は明らかにしなかった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は28日、ベルリンを訪問してメルツ首相と会い、軍事支援についてより具体的な論議を交わす予定だ。
タウルスミサイルは射程500キロ以上で米国のATACMSや英国・フランスのストームシャドーミサイルより長く、ロシア本土のさらに奥の方を攻撃できる。英国と米国が支援したATACMSとストームシャドーは昨年11月、初めてロシア本土攻撃に使われたが、両国政府は公式にしない形で静かに武器使用を承認した。メルツ首相は就任後、ロシアに対する戦略的曖昧性を強化するため、ドイツの兵器支援地域は公開しないとしていた。ただし、キリスト教民主同盟(CDU)所属のメルツ首相は、就任前からウクライナに対する強い支援意志を示し、公然とタウルスミサイルを供与する意向があると明らかにしてきた。英ガーディアンによると、ドイツではすでに政府レベルでミサイル供与に関する発表をしうるという反応が出ているという。社会民主党(SPD)所属の前任者であるオラフ・ショルツ首相は戦争拡大を懸念し、タウルスミサイルの供与を拒否してきた。
メルツ首相の発言が公開された後、ドイツ政界は賛否両論に分かれた。緑の党の副代表であるアグニエシュカ・ブルガー氏は「論理的であり、とっくに出てこなければならなかった言葉だ」と歓迎した。一方、連立政権の一軸である社会民主党と左派党では批判的な意見が出たと、独紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」は報道した。社民党のラルフ・シュネグナー議員は「全般的に戦争を拡張させるのは何であれ間違っている」と述べた。
ロシアは同日までの間に、一晩でウクライナ全域に350機のシャヘド・ドローンと9機の巡航ミサイルを発射するなどの攻撃をかけている。ドナルド・トランプ米国大統領は25日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して「狂ってしまった」と批判し、追加の制裁も考えると強調して収拾に乗り出した。しかし、ロシア大統領府はそれを気にせず、トランプ大統領の発言は「感情的」だと述べた。ペスコフ報道官は26日、プーチン大統領が「国家安保のために必要な決定を下している」とし、「これは皆に感情的に非常に大きな負担になる重大な瞬間であり、感情的な反応が伴わざるを得ない」と語った。