ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核ドクトリン改定を宣言した。非核保有国が通常兵器でロシアを攻撃した場合でも、核保有国の支援を受けている場合、ロシアが核兵器の使用で対応することを可能にするという内容だ。ロシアの核兵器使用のハードルを下げるという発言であり、核保有国である米国などの支援を受けたウクライナに対する脅しとも受け取れる。
プーチン大統領は25日(現地時間)、国家安全保障会議を開き、核兵器使用の基本原則を含めた大統領令「ロシア連邦の核抑止政策に関する基本原則」を改定する議題を議論したと明らかにした。プーチン大統領は、一般に核ドクトリンと呼ばれるこの大統領令について、「ロシアと同盟国に対する新たな軍事的脅威とリスクが現れたことを含め、現代の軍事・政治的状況が躍動的に変化している点を考慮すべき義務がある」として、過去1年にわたり核使用の可能性に対するアプローチ方式を調整する必要性について評価してきたと述べた。
プーチン大統領が明らかにした核ドクトリンの改定の核心内容は、「非核保有国が核保有国の支援を受けてロシアを攻撃した場合、これを両国家の共同攻撃とみなす」というものだ。核武装国である米国や英国、フランスなどの支援を受けている非核保有国のウクライナを意識したものとみられる。また、先月初めにロシア領土のクルスクを侵攻したウクライナが、米国などの西側に対し、長距離ミサイルの支援や西側が支援した兵器のロシア領土への使用制限解除を何度も要請してきたことも関わり、西側に対する警告ともとらえられる。
また、プーチン大統領は「戦闘機・ミサイル・ドローンなどでロシア国境内に大規模攻撃を行うという信頼に値する情報が探知されたとき、核兵器の使用を考慮する」とも述べた。また、「われわれは(同盟国である)ベラルーシに対する攻撃発生時に核兵器で対応する権利を保有する」と述べた。
2020年6月にプーチン大統領が署名した核ドクトリンによると、ロシア領土または同盟国に核兵器や大量殺傷兵器による攻撃が行われた場合▽ロシアや同盟国を攻撃する弾道ミサイルが発射されたと信じるに値する情報を入手した場合▽ロシアの中核をなす政府・軍事施設が攻撃され、核戦争力対応行動が弱まる場合▽ロシアが通常兵器で攻撃され、存立を脅かされる場合の4つを使用条件として提示している。
通常兵器で攻撃を受けた場合であっても、存立の危機の場合には核の使用は可能にはすでになっているが、核兵器使用のハードルをさらに下げるという意味だ。カーネギー・ロシアユーラシアセンターのアレクサンダー・ガブエフ氏は「現時点では、非常に攻撃的かつ最も具体的なシグナル」だと述べた。
プーチン大統領は2022年2月末のウクライナ侵攻後、核兵器使用の可能性を一貫して示してきた。政権5期目の就任式の前日の5月6日には、西側の脅威を理由にロシア軍に戦術核兵器の訓練を指示し、ロシア国防省がこれを発表することで対外的に伝えた。
ロシアの政治学者で親プーチン派のセルゲイ・マルコフ氏はSNSのテレグラムに投稿し、「新ドクトリンによって、ロシアはもうウクライナに核兵器を使用できるようになった」として、「西側がロシアに対する戦争を拡大するという脅威のため、ロシアは核ドクトリン改定を強要された」と主張した。