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ウクライナのノルドストリーム爆破作戦…「酒の勢いで出たアイデア」

登録:2024-08-16 08:15 修正:2024-08-16 09:42
2022年9月のノルドストリームのパイプライン爆発 
WSJ「ウクライナ軍のザルジニー前総司令官が指揮」 
消息筋の話を引用して報道…ザルジニー氏は否定
ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が爆破された2日後の2022年9月28日、もれたガスが水面に気泡を作っている様子=デンマーク軍司令部提供//ハンギョレ新聞社

 2022年9月にバルト海の海底で起きたガスパイプライン「ノルドストリーム」爆発事件は、ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官(当時)が指揮して実施したウクライナの「民官合同作戦」だったとの報道が出た。米国のウォール・ストリート・ジャーナルが匿名の消息筋の話を引用し、14日(現地時間)に報じた。ノルドストリーム爆発事件は、ロシアとウクライナが互いに相手方の仕業だと指摘し実体が不明な事件で、事件発生から2年が経過しても全容は明らかになっていない。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、作戦の開始は2022年5月ごろ。ウクライナ軍の高級将校と事業家数人が集まり、2022年2月末に始まったロシアの侵攻を防いでいることを祝う席でアイデアが出てきた。参加者の一部が酒の勢いと愛国心から、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプラインであるノルドストリームを破壊しようと提案した。ロシアは、ノルドストリームを通じてウクライナを経由せずにドイツなどに天然ガスを輸出し、巨額の利益を上げているため、このパイプラインを破壊すればロシアにとっては経済的にかなりの打撃となる。ロシアは、ウクライナを経由するパイプラインを通じても西欧に天然ガスを輸出しているが、ウクライナはパイプラインに対しては通行料を得ており、ウクライナ経由のパイプラインは戦争中も稼動している。

 特殊作戦の経験がある現職将軍がザルジニー総司令官に直接報告することにして、ウクライナの事業家が戦争初期に資金の不足していた軍に作戦遂行の費用として30万ドル(約4500万円)を支援した。ウクライナ軍は資金が足りず、この作戦は西側から支援を得られる性質のものではなかったためだ。ある作戦参加者はこの作戦を「民官協力」と表現した。

 作戦に参加した将校1人と消息筋3人によると、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、作戦について報告を受け、数日後に作戦を承認したと同紙は報じた。機密保持のために文書には残さず、口頭だけで意思疎通がなされた。

 しかし、この作戦計画はオランダ情報機関に流出した。2014年のウクライナ東部地域での内戦当時、オランダ人多数が搭乗したマレーシア航空の旅客機が、親ロシア派反乱軍が撃ったと推定されるミサイルで撃墜された事件が発生した後、オランダはロシアとウクライナにかなりの情報網を構築していた。

 オランダの情報機関は米国中央情報局(CIA)に伝え、米国はゼレンスキー大統領に作戦を中止するよう圧力をかけた。ゼレンスキー大統領はザルジニー総司令官に作戦中止を命令したが、ザルジニー総司令官はこれを無視した。ザルジニー総司令官は作戦実行後、ゼレンスキー大統領から叱責を受けたが、海外に行った作戦チームと連絡が取れなかったと主張したという。

 3月に駐英ウクライナ大使に任命されたザルジニー氏は、これに関する質問について、自分はそのような作戦は知らないと主張した。ザルジニー氏は、ウクライナ軍は海外で作戦を行う権限がなかったとして、自分は海外での作戦には関与していないと主張した。

 作戦は最初の提案が出てから4カ月後の9月に実行された。レジャー用ヨットを借りて30代女性1人を含む6人が参加。民間の潜水士も加わった。30代女性を参加させた理由は、本人の潜水能力も優れてはいたが、作戦チームを休暇に遊びに来た友人たちのように見せるためでもあった。潜水士は2人ずつペアを組み、暗いバルト海の海底に入り、タイマー付きの起爆制御装置と接続したHMXという強力な爆発物を設置した。

 作戦に参加した将校1人は同紙に「メディアから、潜水艦やドローン、さらには人工衛星も動員された巨大な作戦だという推測が出るたびに、私は笑った」として、「すべては祖国のために命をかけた少数の勇敢な人たちの鋼鉄のような決断力から始まったものだ」と述べた。

 しかし、作戦に参加した要員がヨットの中に爆発物の一部や指紋などの痕跡を残し、これがドイツ捜査当局に捉えられた。シュピーゲルなどのドイツメディアは最近、ドイツ捜査当局がノルドストリーム爆破事件の容疑者として、ウクライナ国籍の人物らを指名して追跡中だと報じた。

 今後もノルドストリーム爆破の真実が明らかになることは容易ではないとみられる。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、作戦に関与した、あるいは知っていた匿名のウクライナ当局者は、指揮官はだれも裁判にかけられることはないと述べたという。匿名の当局者は、最高位の当局者の間では少なくとも初期はすべての合意を口頭だけで行ったので、証拠は残っていないと述べた。

チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1153916.html韓国語原文入力:2024-08-16 00:13
訳M.S

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