45年前に平和協定を結んで友好を維持していたエジプトとイスラエルの関係が、ガザ戦争をめぐって急激に冷え込んでいる。両者はガザ地区に対する人道支援が閉ざされた理由を相手に転嫁し、責任攻防を繰り広げている。
イスラエルのカッツ外相は14日、X(旧ツイッター)に「世界は(ガザ地区の)人道的状況に対する責任をイスラエルに要求しているが、この危機を止めるためのカギはすでにエジプト側にある」と書きこんだ。さらに、英国やドイツの外相らと「ラファ国境を再開放するようエジプトを説得する必要性」について協議したことに加え、イタリアの外相とも議論すると述べ、公にエジプトへの圧迫メッセージを送った。
イスラエル国防軍(IDF)は7日、ガザ地区最南端のラファでの地上戦を開始し、外部からの救援物資が入ってくる数少ないルートとして機能していたラファ国境を掌握。以後、救援物資の搬入が阻まれた。国際社会がガザ地区の壊滅的な人道主義的危機を懸念し、イスラエルを非難している状況で、外交トップ自らがラファと接するエジプトに責任を転嫁したのだ。
エジプトは直ちに反発した。ロイター通信とエジプトのメディアによると、エジプトのサミハ・シュクリ外相はこの日声明を発表し、イスラエルがラファ国境を統制し軍事作戦を行っている状況で、救援物資を運ぶトラックを搬入することは「救護人員とトラックの運転手を直ちに危険」にさらすことだと述べた。そしてこれが「救援物資が国境を通じて入れなくなっている最も大きな理由」だと反論した。
エジプトがイスラエルとの外交関係の格下げまで検討しているという報道も出ている。米ウォール・ストリート・ジャーナルは匿名のエジプト政府関係者の話として、エジプトがイスラエルの首都テルアビブにいる大使を呼び戻すかたちで関係を格下げすることを検討していると伝えた。エジプトは、7日にイスラエル軍がラファに対する地上作戦を開始する直前になって、この計画をエジプトに伝えてきたことを問題視した。これに先立ち、イスラエルはエジプト政府に対し、ラファ国境掌握に関わらず救援物資の搬入地は維持され、数週間前にパレスチナ住民の退避を担保すると約束したていが、これを守らなかったということだ。ガザ地区の状況が悪化し、避難民が自国に大挙して流入する状況を懸念していたエジプトを当惑させることであり、信頼を裏切る行動だった。
エジプトは1979年、アラブ諸国の中で初めてイスラエルと平和協定を結んだ後、イスラエルと緊密に協力してきた。特にエジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領の就任が始まった2014年以来、イスラム国(IS)過激派を撲滅するために情報を共有するなど、重要な安全保障パートナー関係を維持した。今回のガザ戦争でも、米国やカタールとともに、イスラエルとイスラム組織ハマスとの仲裁役を担ってきた。アラブ圏の英語メディアである「ニューアラブ」は、現在の状況を「イスラエルのラファ攻撃は、長く続いてきた平和協定を試そうとするもの」とし、「実際に現在は双方に一種の疑いがある」というエジプトの元議員の発言を伝えた。
エジプトは12日、「集団殺害」の疑いで国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルを告発した南アフリカ共和国の訴訟に参加するという立場も明らかにしている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、エジプトがイスラエルと直ちに外交関係を断ち切ることはないとしても、訴訟への参加を通じてイスラエルと米国に圧力を加えようとしていると指摘した。