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[現場]米国の大学生「ガザの苦しみに比べれば逮捕など何でもない」

登録:2024-04-26 02:37 修正:2024-04-26 08:17
学内でテント張り座り込み 
「パレスチナ人集団虐殺、イスラエル支援やめろ」 
100人連行されたコロンビア大学の抵抗運動が全国に広がる
23日、米ニューヨークのコロンビア大学の学内で、テントを張って座り込みをおこなう人々が三々五々集まってきている=イ・ボニョン特派員//ハンギョレ新聞社

 「反ユダヤ主義ですって? 私、ユダヤ人ですよ。この人もユダヤ人です」

 23日午後(現地時間)、ニューヨークのマンハッタンにあるコロンビア大学。数々のテントが張られた芝生広場で出会ったある学生は、「このような行動には反ユダヤ主義だとの批判もある」と記者が問うと、目を丸くして反論した。アリと名乗ったこの学生は「この場に出入りしているユダヤ人は200人にはなる」と話した。彼は逮捕や停学が心配ではないかと尋ねると「ガザ地区の人々が集団虐殺に直面していることに比べれば、私たちが停学になることなんて何でもない」と述べた。

 今月17日の座り込み開始に続き、翌日には100人あまりの学生が連行され、米国の大学生たちの抵抗運動の震源地となったコロンビア大学のキャンパスの内外には、物々しく緊張した雰囲気が漂っていた。鉄の鎖で封鎖された正門には警察が配置され、外部の人間の出入りは禁止されていた。学生と教職員は脇戸から出入りしていた。

「大学は集団虐殺で稼いだ企業への投資を回収せよ」

 コロンビア大学は、学生の安全のためだとして前日、リモート授業への転換を発表した。記者団は午後2~4時の間だけキャンパスへの立ち入りが許された。入場の際には教職員に身分証を確認され、名前と報道機関名を書かされた。大学内での講義が中断されたにもかかわらずキャンパスに向かっていたある男性は、経済学の講師だと自己紹介しつつ、「事がどのように回っていくのかが気になって来た。私は学生の行動を支持する」と言った。

 30張りあまりのテントが設置され、フェンスを取り囲んだ座り込み会場では、参加者たちが討論したり食べ物を分け合ったりする姿が見られた。教職員なのか、幼い子どもたちと共に絵の具をつけた筆で紙にスローガンを書く人々もいた。日差しを浴びていた学生は、寝るときには寒くないかという質問に「とても寒い」と語った。参加者たちは大学がメディアに開放した時間に合わせて、弁の立つ学生たちを立てて主張を語らせた。学生たちは、イスラエルの「集団虐殺やパレスチナの土地の占領」で稼ぐ企業に対する投資を回収しろなどの要求がコロンビア大学に受け入れられるまで、座り込みの現場を離れないと語った。

コロンビア大学の学生が、ハマスに拉致されたイスラエル人の写真を座り込み現場の近くに貼っている=イ・ボニョン特派員//ハンギョレ新聞社

 彼らに反対する数人の学生たちの活動も目にとまった。近くの壁にパレスチナ武装勢力ハマスに拉致されたイスラエル人の写真を貼っていた学生は、座り込み現場の方を見つめながら、「事を大局的にみられない人が多い」と話した。この学生は、まずハマスが人質を解放したうえで、ガザ地区の再建に取り組むのが望ましいと述べた。

「米政府はイスラエルへの資金・武器支援を中止すべき」

 マンハッタンにあるニューヨーク大学でも、各建物で警備員が身分証を確認し、出入りを厳しく規制していた。前日の夜、警察は大学の要請で、同大学のグールドプラザでデモをしていた133人の学生らを逮捕した。23日に記者が訪れたグールドプラザでは、学生の進入を遮ろうとするかのように、木の板で壁を作る作業が行われていた。

 ニューヨーク大学が封鎖されたことから、学生と市民は道の向かい側の公園で集会をおこなった。ビラを配っていた市民は、「私たちの声が広がるのが怖いから学生たちを捕まえたのだ」と述べた。ニューヨーク大学の学生のジェス・アイカンさんは「バイデン政権はイスラエルに対する資金や武器の供与を中止すべきだ。虫ずが走る」と話した。

大学側が学内集会を許可しなかったことから、ニューヨーク大学の学生が近所の公園で集会をおこなっている=イ・ボニョン特派員//ハンギョレ新聞社

イェール大学、ミシガン大学、MITにもテントが

 今や抵抗は全国へと広がりつつある。前日にはイェール大学でも60人が警察に連行されている。同日にはミシガン大学、エマーソン大学、タフツ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)でもテント座り込みが始まった。ニューメキシコ大学の学生たちも23日、2日連続でデモをおこなった。ミネソタ大学ではテント座り込みを始めた9人の学生らが逮捕された。

 このような中、各大学は学生たちの動きにどのように対応するか迷っている。政界やユダヤ系の後援者たちは、反ユダヤ主義勢力は断固として抑え込まなければならないと注文する。しかし、反ユダヤ主義とは別の「虐殺をやめろ」との要求を抑圧することは、他でもない大学が表現の自由を否定するものだ、との指摘も多い。コロンビア大学と向かい合う姉妹大学であるバーナード大学は、テント座り込みに参加して逮捕された学生たちに停学処分を下し、学内の建物への立ち入りまで禁止した。ニューヨーク市民自由連合のドナ・リーバーマン事務局長は、「イスラエルに対する批判を反ユダヤ主義と同一視」し、政治的反対意見を抑え込むのは不当だ、とAP通信に語った。

前夜に学生ら133人が逮捕されたニューヨーク大学のグールドプラザに、学生が再び集結するのを防ごうとするかのように、木の版で壁が急造されている=イ・ボニョン特派員//ハンギョレ新聞社

 だが、コロンビア大学のネマト・シャフィク学長はこの日の夜、座り込み参加者が深夜12時までに解散しなければ「代案を考慮する」として、再び警察を投入する可能性を示唆した。今月17日の下院公聴会で、反ユダヤ主義には強く対応せよと叱責され、翌日に警察を学内に引き込んだ同氏は、まだ手ぬるいとの理由で共和党議員たちから辞任を迫られている。

 一方、コロンビア大学の教授会は、警察を引き入れて学生たちを鎮圧したとの理由で、シャフィク学長の不信任を推進している。コロンビア大学の学生たちを大量に逮捕したことが他の大学の学生たちを刺激したという点で、「第2次鎮圧」がどのような結果につながるかは予測が難しい。

ニューヨーク/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1137949.html韓国語原文入力:2024-04-24 14:53
訳D.K

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