米国などが引き止めたにもかかわらず、イスラエルが19日(現地時間)、イランに反撃を加え、中東で戦争拡大への懸念が再び高まっている。だが、イランがこの日の攻撃による被害はあまりなかったと述べており、イランが本格的な再報復に乗り出すかは不透明だ。
イスラエルの同日の反撃は、形式的にはイランによる攻撃に相応するものだった。イランが13日、イスラエル本土に向かってドローン(無人機)とミサイル攻撃をしたように、イスラエルもこの日イラン本土を打撃した。だが、両者の攻撃はいずれも実質的被害が大きくはなかった。
米国当局者は、イスラエルがミサイルでも攻撃したと明らかにしたが、イラン側はミサイル攻撃を受けていないと否定している。イランの国家サイバースペースセンター(NCC)の報道官、ホセイン・ダリリアン氏はソーシャルメディアに「国境から(中部)イスファハンや他の地域までいかなる空爆もなかった」とし、イスラエルは「クアッドコプターを飛ばす無駄な試みをしただけで、そのクアッドコプターも撃墜された」と強調した。クアッドコプターは、配達用に多く使われるドローン。
イラン官営メディアも、イランの防空網が作動し直接的な打撃はなかったと報じた。イスファハン空港近くで聞こえた爆発音も、防空網に撃墜されたドローンの爆発音だと報じた。イラン政府当局者らは、イスファハン近隣の核施設は完全に安全だと強調しており、国際原子力機関(IAEA)も被害がなかったことを確認した。
イスラエルの攻撃がこの程度で終わるなら、これは非常に限られた象徴的な反撃と言える。だが、イスラエルがこの日、イランの核施設があり、由緒ある都市イスファハンを州都にするイスファハン州に飛翔体を飛ばしたのは警告の意味がある。イランの核施設を爆撃する能力があると警告したのだ。米国のある当局者はCNNに「イランの核施設は空襲の目標ではない」と述べた。
イスラエルは本土に対するイランの前例のない攻撃に対し、何の対応もしないわけにはいかなかったため、このように制限的で象徴的な反撃を加えることで、米国など西側が懸念する戦争拡大の線を越えないようにしたものとみられる。イランも13日の攻撃に先立ち、西側に事前に攻撃計画を伝え、大規模な被害が発生しないようにし、戦争拡大を防ごうとする姿勢を見せた。双方とも、ひとまず自分たちの体面を保ちながら、実際的な被害はなるべく与えないようにした情況がうかがえる。
ボールは再びイラン側に渡ったが、イランが実質的な再報復攻撃に出るかは不透明だ。前日、イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相はCNNに「イスラエルが再び冒険主義に乗り出し、イランの利益に反する行動を取った場合、イランは直ちに最大限のレベルで報復を行う」と強調した。だが、この日イラン側では外国から攻撃を否定する報道が出ている。「タスニム通信」はイランが攻撃されたことを否定した。同通信は消息筋の話として「外国からイスファハンやイランの他の地域に対する攻撃報告はない」と報じた。イランはすでに明らかにした再報復攻撃に足を引っ張られ、戦争拡大に吸い込まれることを警戒しているようだ。
だが、双方の本土攻撃は以前と異なるレベルで中東の緊張を高めている。イランとイスラエルはこれまで相手を密かに攻撃するか、代理勢力を動員する「影の戦争」を繰り広げてきたが、今や本土を直接打撃する衝突の扉が開かれた。中東の2大軍事大国である両国の本土攻撃は、中東を広域の戦場にする素地がある。国境を接していない両国が、中間にあるシリア、イラクなどを舞台に本格的な対決を繰り広げる恐れもある。