米国のジョー・バイデン大統領は14日に声明を出し、日本製鉄のUSスチール買収に反対すると明らかにした。AFP通信などの報道によると、バイデン大統領は声明で「USスチールは1世紀以上続く米国の鉄鋼企業の象徴だ」と強調した。このような反対の立場表明は、11月の大統領選を控えてUSスチールが外国企業に渡ることに対する政治的負担のためだという解釈が出ている。
これに先立ってフィナンシャルタイムズは13日、バイデン大統領が日本製鉄のUSスチール買収に対する懸念の表明を計画していることを日本政府にも伝えたと報じた。この報道により、USスチールの株価は13%暴落。世界4位の鉄鋼メーカーである日本製鉄は昨年12月、USスチールを149億ドル(約2兆円)で買収すると発表した。
米国の大統領が、財務省傘下の外国人投資委員会が審議中の事案について公に意見を表明するのは異例のことだ。鉄鋼メーカーの合併で1901年に誕生したUSスチールは、一時は世界最大の企業だったが、今は鉄鋼分野では世界25位へと大幅にランクが下がった。しかし、米国の製造業の象徴である企業という点、鉄鋼は兵器の主要素材であるため安全保障への悪影響が懸念されるという点で、(買収計画に)強い反対意見が出ていた。ドナルド・トランプ前大統領は、自分が政権を握れば取引を中止させると述べた。
バイデン大統領としては、主要な支持基盤である労働組合も意識しなければならない。USスチール本社のあるペンシルベニア州は代表的な激戦州だ。バイデン大統領は2020年にここでトランプ前大統領に1.17ポイント差で勝った。2016年の大統領選挙では、トランプ前大統領が0.72ポイント差で民主党のヒラリー・クリントン候補を破った。ワシントンポストは、バイデン政権が日本政府側にペンシルベニア州の支持を維持するためという理由を挙げたと、産業界の消息筋の話を引用して報道した。日本製鉄はUSスチールのブランドとペンシルベニア州ピッツバーグの本社も維持するとして説得に出たが、労組は工場が低価格品の生産施設として利用されれば労働者の処遇が悪化すると主張している。
今回の取引が流れた場合、岸田文雄首相の立場にも不利に働くものとみられる。米国外交協会の通商・経済専門家のマシュー・グッドマン氏は「日本の首相は対米関係をうまく管理しなければならないだけでなく、強化されているという点も示さなければならない」とし、低い支持率に悩む岸田首相がさらに困難に陥りかねないとロイター通信に語った。