一時は「欧州のエンジン」と呼ばれた「ドイツ経済」が尋常ではない。コロナ禍から3年が経過した昨年はふたたび「マイナス成長」を記録したことが分かった。ドイツ経済が新たな経済変化に適応できず、停滞が長期化するのではないかという懸念さえ出ている。
ドイツ連邦統計局は15日、2023年度の国内総生産(GDP)が昨年比で0.3%減少したことを明らかにした。ドイツ連邦統計局のルート・ブラント局長はこの日、ベルリンで開かれた記者会見で「2023年は、様々な危機が続く環境のもとで、ドイツの全般的な経済発展が揺らいだ」と述べた。
ドイツ経済は、コロナ禍開始直後の2020年に前年比で-3.8%の成長率を記録した後、2021~2022年に回復傾向をみせ、昨年、ふたたびマイナス成長を記録した。それによって、2023年のドイツ経済は、コロナ禍前の2019年よりわずか0.7%増えるにとどまった。
専門家らは、現在のドイツが、サプライチェーンの危機▽持続的な物価上昇圧力▽金利上昇▽製造業に対する世界的な需要の低下などによって、四面楚歌の危機に直面していると診断している。特に、2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻後、安価なロシア産天然ガスの輸入が途絶え、エネルギー費用が大幅に増大した。
それと同時に世界の景気が停滞し、輸出主導型の国であるドイツは、よりいっそう大きな痛手を受けることになった。建設業を除くドイツの主な産業基盤はこの1年間で2%減少した。キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・カニンガム首席研究員は、英国ガーディアン紙に「企業投資は萎縮する可能性が高く、建設は急激な停滞に向かっており、政府は財政政策を急激に減らしている」として、「今年の成長率はゼロだと予想する」と述べた。
相次ぐ景気低迷と物価上昇の圧力から、各分野ではストライキが相次いでいる。鉄道機関士労組は8日にストライキに突入し、農民らも同様に8日から15日まで農業用車両に対する補助金と減税の特別措置を減らそうとする政府の計画に反対して街頭に出た。
さらに大きな問題は、ドイツ経済の長期の見通しだ。ドイツは低い出生率(2022年時点で1.46人)による労働力不足、特有の官僚主義、デジタル転換の失敗という根本的な問題に直面している。ドイツは今後12年間の「ベビーブーム」世代の引退で、2035年までに労働者700万人を失うことになる。ドイツ経済省は昨年2月に発表した報告書で、熟練労働者不足が企業の成長の潜在力に直接的な影響を与える可能性があると説明した。2045年までにカーボン・ニュートラルを達成するという目標も同様に、関連分野の熟練労働者なしでは達成できない。
ドイツ経済のもう一つの問題は、根深い官僚主義だ。ドイツ技術者協会の依頼で中小企業研究所が進めた2022年の研究によると、ドイツのある中小企業は、すべての行政義務の遵守のために売り上げの3.2%を支出している。これは約70万ユーロ(約1億1000万円)にあたり、正規職の職員10人を雇用できる金額だ。大企業の状況もたいして違いはない。
社会の各分野のデジタル化も同様に周辺の欧州各国に後れを取っている。超高速データ通信ネットワークへの接続も改善されてはいるが、依然としてばらつきがある。
こうした問題を集約してみせるのが、自動車業界の不振だ。ドイツの自動車業界の2022年の生産量は10年前より40%近く減少した。「ウォークマン」などのアナログ電子製品を前面に出して世界経済を制覇した日本がデジタル転換に失敗し、「失われた30年」と呼ばれる長期低迷を迎えたたように、ドイツの自動車業界も同様に「EVシフト」という新たな挑戦の前に大きな弱点をさらけ出している。