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レバノンでハマス幹部を暗殺したイスラエル、ガザ戦争の拡大狙ったか

登録:2024-01-04 07:00 修正:2024-01-09 05:00
イスラエルが2日、ハマス幹部のサレフ・アル・アルリ氏を暗殺するために空爆したレバノンのベイルート近郊のダヒエにある建物の残骸で救助隊員たちが人命救助作業を開始している/AP・聯合ニュース

 イスラエルがパレスチナの武装組織ハマスの幹部を暗殺するためにレバノンの首都ベイルートまで空襲したことで、イスラエルがガザ戦争の拡大を企てているのではないかという観測が出ている。

 ハマスが運営するアルアクサテレビは、ハマス政治局のサレフ・アル・アルリ副局長(57)がレバノンの首都ベイルート南部のダヒエ地区でイスラエルのドローン攻撃を受けて死亡したと報じた。イスラエルはアルリ氏の暗殺を公式には認めていないが、米国の高官2人がこの攻撃がイスラエルの仕業だと確認したと、ニューヨーク・タイムズが報じた。

 アルリ氏暗殺の前日の1日、イスラエルはカザ地区から一部の兵力を撤収する戦線再調整を発表したが、これはレバノンに第2戦線を作るための作業の一環とみる見方が出ている。イスラエルの主要日刊紙「ハーレツ」は高官の話を引用し、ガザ戦争はハマスが打倒されるまで続くとして、一部の戦力撤収はヒズボラとの第2戦線のための準備だと報じた。

 イスラエル戦時内閣に参加しているベニー・ガンツ氏は先月27日の記者会見で、「イスラエルの北部国境の状況は変化を要求する」とし、「外交的解決の秒読みは終わった」と述べた。ガンツ氏は「もし、世界とレバノン政府がイスラエル北部の住民に対する砲撃を止めず、ヒズボラを国境から退去させるための行動をしないのであれば、イスラエル国防軍がそれを行うだろう」と述べた

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相も12月初めにレバノンに接する北部国境を訪問し、兵士たちにヒズボラが全面戦争を始めるだろうという見方を示したうえで、イスラエルは「単独でもベイルートと南レバノンをガザ地区に追い込む」と公言した。レバノンをガザ地区のような戦場にするという意味だ。

 イスラエルの今回の攻撃によって、なにより人質解放交渉が失敗に終わる危機に直面した。アルリ氏はカタールが仲介する人質解放と休戦交渉でも重要な人物だったとハーレツは報じた。アルリ氏暗殺は、休戦に向けた第一歩であるイスラエル人の人質解放交渉を技術的にも崩壊させる効果がある。

 国際社会の休戦圧力と、人質解放交渉に積極的に取り組めという国内からの要求に対して、イスラエル史上最悪の極右内閣とされるネタニヤフ内閣は不満を示していた。

 内閣の極右勢力は、ガザ地区からパレスチナ人住民を追い出すべきであり、ユダヤ人入植地を作ろうという主張を最近強化した。 ベザレル・スモトリッチ財務相は先月31日のラジオ会見で「ガザ地区に必要なことは、外部への移住を促すこと」だとしたうえで、「ガザ地区に200万人ではなく10万~20万人のアラブ人がいるだけならば、今後の議論は完全に変わるだろう」と述べた。イタマル・ベングビール治安相も1日の新年行事で、ガザ戦争は「ユダヤ人のガザ帰還が正解で、正義的、道徳的かつ人道的な解決策」だと述べ、ガザ戦争はその機会だと主張した。ネタニヤフ首相は先月30日、イスラエルがガザ地区とエジプトの境界の隣接地の回廊を完全に統制しなければならないと主張し、イスラエルがガザ地区を事実上占領するつもりであることを示した。

 ネタニヤフ極右内閣がこうした態度を示すのは、戦争を継続する方が権力維持に役立つためだ。2日に発表された世論調査では、イスラエル国民の56%は軍事攻勢を継続することが人質解放のための最善策だとする政府の主張に同意したが、戦争後のネタニヤフ氏の首相職継続に賛成した人は15%に過ぎなかった。

 イスラエルはガザ戦争を低強度の長期戦の方向に切り替えているが、これは休戦と終戦を要求する声が強まるきっかけになる可能性がある。また、米国はイランとイランが支援するヒズボラなどと接触し、ガザ戦争の拡大を防ぐ外交努力を行っているが、今回の事件によって、米国がイスラエルとヒズボラの間の戦闘を終わらせるための外交的仲裁の努力はよりいっそう難しくなった。

 ヒズボラはガザ戦争勃発後、イスラエルとの国境地域でイスラエル軍と200回以上にわたり武力衝突を繰り広げているが、全面戦争は避ける慎重な姿勢を示していた。しかし、今回の事件をきっかけに、イスラエルとヒズボラの間で第2戦線が開かれるのであれば、戦争拡大は避けられず、イスラエルのガザ地区攻撃も同様にけん制を受けなくなる。

 レバノンのナジブ・ミカティ首相が、イスラエルのベイルート空襲に対して、レバノンをイスラエルと「対立させる新たな局面」に引きずり込む「イスラエルの犯罪」だと非難したのも、こうした流れからだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1122817.html韓国語原文入力:2024-01-03 15:47
訳M.S

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