本文に移動

10~40代の若いがん患者が80%増…ワクチンのない上咽頭がんの脅威

登録:2023-09-16 08:16 修正:2023-09-16 10:03
食習慣の変化など影響…40代が最も危険 
多いのは乳がん、肺がん、大腸がん、胃がんの順
喫煙と飲酒はがんの主なリスク要因=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

 がんは伝統的に、主に老年層で発症する疾患だった。免疫力の低下、健康に良くない生活習慣、遺伝的要因などのリスク要因が重なり、発症の臨界点を越えるまでには、長い蓄積期間が必要だ。しかし、最近は50歳以下の若い世代でもがん診断を受ける人が多くなっている。

 米国ハーバード大学、英国エジンバラ大学、中国の浙江大学が中心となった国際研究グループが、2019年の世界疾病負荷研究(GBD)のデータを分析したところ、この30年間に全世界で50歳未満のがん発症者が約80%、死亡者が約28%増加していた。国際学術誌「BMJ腫瘍学(BMJ Oncology)」に発表された。

 世界各国で若年層のがん発症率が高まっていることはよく知られているが、それが全世界レベルで検証されたのは今回が初めて。研究グループは今回の研究で、209カ国から収集された29のがんに関するデータを分析した。

 研究陣によると、全世界で14~49歳の人口におけるがん発症例は、1990年の182万件から2019年には326万件へと79.1%増加していた。また、これらの年齢層のがんによる死亡者の数は年間100万人を超える。

食習慣の変化が若年層のがん発症率を高める主な要因としてあがった=Unsplash//ハンギョレ新聞社

■全体での1位は乳がん…男性1位は肺がん

 乳がんの発症率と死亡率は10万人当たりそれぞれ13.7人、3.5人で、最も高かった。地域別に見ると北米地域では若年層の乳がん発症率が30.6人から23.1人に低下した一方、アジアでは4.9~13.1人から8.7~15.6人へと上昇していた。

 研究陣は「全世界的に早期のがん検診が広がったことで乳がん発症率が高くなった面があるが、より重要なのは、それがなくても一部の国で若年層の乳がん発症率が上昇していること」だとし、「これはここ数十年間の初潮年齢の低下、経口避妊薬の使用、初産年齢の上昇、母乳非授乳、肥満、身体活動の不足、飲酒、喫煙などが発症率上昇に影響を与えた可能性があることを示唆する」と述べた。

 報告書によると、がん発症による死亡および障害による期待寿命の損失(DALY)のリスクが最も高いがんは、高い順に乳がん、肺がん(上咽頭がん、気管支のがんを含む)、大腸がん、胃がんだった。肺がんは全体では2位だったが、男性では発症率1位だった。男性の肺がん発症率は女性の1.7倍、死亡率は1.8倍だった。

若年層のがん発症例は30年間で80%増え、死亡者は年間100万人を超えた=pexels//ハンギョレ新聞社

■東アジアで大腸がん急増…食習慣の変化に注目

 若年層でのがん発症増加の原因はどこにあるのだろうか。

 研究陣は、若年層のがん発症率の上昇は様々な要因が複合的に作用しただろうが、主に健康に良くない食習慣、飲酒および喫煙、身体活動の不足および肥満である可能性が高いと述べた。

 まず男性の肺がんは、最大のリスク要因は喫煙だが、空腹血糖値の高さと果物の摂取不足もリスク要因だと説明した。

 大腸がんについては、悪い食習慣、飲酒、喫煙、身体活動の不足、肥満、空腹血糖値の高さを6大リスク要因として提示した。研究陣は、東アジアは大腸がんの早期発症率が10万人当たり4.2人から10人へと上昇し、世界でも上位の地域となっていることを強調した。研究陣は、リスク要因分析の結果、牛乳と全粒穀物、カルシウム含有量の低い献立が大腸がん早期発症の最大のリスク要素であることが分かったと強調した。

 胃がんは、喫煙と塩分を多く摂取する食習慣を早期発症の主なリスク要因としてあげた。

予防ワクチンのある肝臓がんは発症件数が減っているが、ワクチンのない上咽頭がんは非常に急速に増えている=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

■上咽頭がんと前立腺がんの増加が最も速い

 若年層の発症率が最も急速に上昇しているがんは、上咽頭がんと前立腺がんだった。増加率は年平均でそれぞれ2.28%、2.23%だった。一方、肝臓がんは発症例が年平均で2.88%ずつ減少していた。

 研究陣は、予防接種の有無が上咽頭がんと肝臓がんの発症の流れを変えたと推定している。肝臓がんはB型肝炎の予防接種のおかげで発症例が減っている一方、エプスタイン・バール・ウイルスが誘発する上咽頭がんはまだ効果的な予防ワクチンがない。

 報告書は「1990年以降、早期発症がんの発生率と死亡率が世界的に大きく上昇している」とし、「健康的な食習慣と、禁煙・飲酒の節制、適切な野外活動などの健康な生活習慣を身につければ、早期発症がんは減らせるだろう」と述べた。

 若年層のがん発症率が最も高い地域は北米、オセアニア、西欧で、死亡率が最も高いのはオセアニア、東欧、中央アジアだった。男女別では、低所得および中所得国で男性より女性のがん発症率と死亡率の方が高かった。

 研究陣は、この30年間の傾向からみて、2030年までに全世界の早期がん発症件数は31%、死亡件数は21%増加すると予想する。研究陣は、特に40代のがん発症リスクが最も高いとの見通しを示している。

 世界疾病負荷研究(GBD)は、ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)が中心となった、およそ140カ国の3600人あまりの研究者の協力体で、1990年にはじまった。世界の100あまりの疾病と負傷が健康に及ぼす影響を研究している。これまでに研究報告書を6回出している。

*論文情報

doi: 10.1136/bmjonc-2023-000049

Global trends in incidence, death, burden and risk factors of early-onset cancer from 1990 to 2019.

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1108683.html韓国語原文入力:2023-09-15 09:30
訳D.K

関連記事