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米国、「3カ国協議のコミットメントは『義務』」…文書にない内容を強調する理由とは

登録:2023-08-21 06:36 修正:2023-08-21 07:45
韓米日首脳が18日、キャンプデービッドで共同記者会見を行っている/AP・聯合ニュース

 18日(現地時間)、キャンプデービッドで開かれた韓米日首脳会談直後、ジョー・バイデン米大統領は共同記者会見場に姿を現すや否や「私が幸せそうに見えるなら、本当に幸せだからだ」、「素晴らしい会談だった」と大きな満足感を示した。ニューヨークタイムズ紙も今回の首脳会談の成果について、「米国外交の夢が実現した」と表現した。

 米国が今回の会談を大歓迎するのは、自国中心の国際秩序を再編する意図と能力を兼ね備えた米国の「唯一のライバル」とされる中国の「抑止」を外交の最優先課題に掲げ、それに向けて力を入れてきた「韓米日安全保障枠組みの構築」という目標がついに実現したためだ。首脳会談の中心的な合意事項である、首脳および外相・国防相などの会合の定例化▽危機時には「互いに協議するというコミットメント」▽多領域における共同訓練実施の定例化などは、すべてこの目標に向けたものだ。長い目で見れば、「韓日の和解→韓米日共同安全保障枠組みの構築→中国けん制の強化」という目標はバイデン大統領が副大統領でアントニー・ブリンケン現国務長官が国務副長官だった2010年代半ば、バラク・オバマ政権時代から進められてきた米国外交の悲願といえる。

 しかし、バイデン大統領など米国高官らは、自分たちの外交成果を強調するためか、合意文書に明示されていないことを主張し、内容を拡大解釈する姿も見せている。表面的には今回の合意の性格は「反中国」や「太平洋版北大西洋条約機構(NATO)」の推進ではないとしながらも、韓日を対中戦線にさらに深く引き込み、けん制の尖兵として利用しようとする意図がうかがえる。

 具体的に、米高官らは首脳会談前日のブリーフィングで、共同声明にあたる「キャンプデービッドの精神」に出てくる「脅威に対応するため、3カ国政府が相互に迅速な形で協議するというコミットメント(Commitment to Consult)」は義務(duty)であると重ねて強調した。だが、大統領室高官は「これは新しい国際法上義務を課するものではない」とし、「韓国にとっては脅威ではないため、3カ国間で情報を共有する必要がないと判断された場合は、(協議の場に)出なくても良い」と説明した。

 これを文書化した「韓米日間の協議に関するコミットメント」という短い発表文を見ても、これが韓米、米日の相互防衛条約に取って代わるものではなく、「国際法または国内法上の権利または義務(obligation)を生じさせることを意図するものではない」と明示されている。韓国語で「義務」と訳せる「obligation」には「duty」より法的順守責務をさらに強調するニュアンスがある。「協議のコミットメント」の拡大解釈を防ぐために義務ではないと規定した文書が別途発表されたにもかかわらず、米国側では義務という表現を繰り返し使っているわけだ。

 これをめぐる議論は、現実外交的に非常に重要な意味を持つ。大統領室の高官の発言が正しければ、韓国は台湾有事の際、協議に応じない選択権を持つ。米国の主張どおりならば、協議の場に呼び出され、米日の様々な協力要請に応じなければならない。台湾有事に韓国が直接巻き込まれる危険性が劇的に高まるわけだ。

 3カ国共同訓練の拡大計画についても同じことが言える。「キャンプデービッドの精神」は「3カ国は毎年、名称を付した複数領域(multi-domain)に及ぶ共同訓練を定期的に実施する」と明らかにした。日本を含む3カ国の訓練を、従来の韓米合同演習レベルで本格的に実施することを目指しているものとみられる。ところが、ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は首脳会談直前の記者懇談会で、さらに一歩進んで「空中・地上・海洋・水中・サイバー・その他すべての領域(all domains)で、数年間の軍事訓練計画を約束」したとし、「これは単に1年または3年間などではなく、非常に広範囲な計画」だと述べた。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、韓米日は公海で前政権も行っていたミサイル防衛(MD)訓練はもちろん、対潜水艦など多くの海軍共同演習を実施してきた。しかし、陸軍の共同訓練は全く次元が違う問題だ。訓練は実戦を想定するという点を考えると、朝鮮半島における日本の陸上自衛隊の展開という極めてセンシティブな問題につながりかねないからだ。

 バイデン大統領はさらに共同記者会見で、3カ国首脳と外相・国防相などによる定例会合を「単に1年か翌年だけでなく、永遠に開催する。そうするつもりだ」と述べた。これも合意文にない内容だ。これに先立ち、米高官らは韓米日3カ国の関係を不可逆なものにするのが今回の首脳会談の目標だと強調してきた。しかし、今回発表された合意文書は法的拘束力を持つ条約ではなく政治的宣言文に過ぎず、その中でも永久に会合に参加することを約束する内容は含まれていない。

 米国メディアと専門家たちは、合意を不可逆なものにするという言葉の意味は、韓国に進歩政権が発足したり、米国でドナルド・トランプ前大統領が政権を握る場合を念頭に置いたものだと説明している。しかし、政権交代は大統領選候補が掲げた外交政策などに対する有権者の選択だ。米国側は来年11月の大統領選挙を控え、首脳間の「政治的合意」にも含まれていない内容を義務付け、永久化することで、外交成果の極大化を狙っているということだ。

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1105009.html韓国語原文入力:2023-08-21 02:43
訳H.J

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