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プーチン大統領の「逮捕状」発行したICC…気になる3つの問題

登録:2023-03-20 03:11 修正:2023-03-20 07:24
先月17日(現地時間)ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がマリヤ・リボワ=ベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)と会談している/ロイター・聯合ニュース

 国際刑事裁判所(ICC)は17日(現地時間)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と子どもの権利担当の高官に対する逮捕状を発行した。戦争の過程でウクライナの子どもたちを不法に移送した責任を問うためだ。

 ICCのカリム・カーン検事長は声明を出し、17日に裁判所がプーチン大統領とマリヤ・リボワ=ベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)の2人に対して令状を発行したことを明らかにした。昨年2月末にロシアがウクライナに全面侵攻した後、裁判所がロシア大統領を被疑者に特定したのは今回が初めて。カーン検事長は1カ月前の先月22日、ICCの予審裁判所にウクライナ戦争の状況と関して逮捕状の発行を請求した。

(1)なぜ逮捕状を発行したのか

 ICCの予備裁判所は、2人がロシアの占領下にあるウクライナ地域で、ウクライナの子どもを不法に移送させた点において刑事責任があると信じるに足る「合理的な根拠」があることを確認した。ロシアが少なくとも子どもたち数百人を孤児院など連れていき、ロシアで養子縁組させるようにしたということだ。「親西側のナチ政権の圧力を受ける親ロシアの住民を救援する」というかたちの戦争の名分を宣伝し、ロシアのアイデンティティを持つ市民を育成するための目的だと解釈される。

 ロシアは昨年、ウクライナ東部のドンバス(ルハンスク・ドネツク)地域の子ども2000人以上をロシアに移動させた事実を認めている。19日現在、ウクライナは、戦争開始以降ウクライナの子ども1万6000人以上が不法に追放された状態だと主張している。

 予備裁判所は、プーチン大統領がウクライナの子どもをロシアの家庭の養子にしやすくするよう法令を修正したと指摘している。ロシアのこうした行為が、ICCローマ規程第8条2項に明示される戦争犯罪、すなわち、「不法追放や移送または不法な監禁」「人質行為」に該当するとみなした。カリム・カーン検事長は、今後証拠が確保され次第、逮捕状を追加で発行すると明言し、プーチン大統領ら2人の他に別のロシアの関係者に令状が発行される可能性がある。

(2)プーチン大統領の逮捕は可能か

 ICCが発行した逮捕状は、ロシアの戦争犯罪に関する重要な措置だが、実際にプーチン大統領が現職にいる間は、逮捕され審判台に上がる可能性は極めて低いとみられる。ICCは集団殺害(ジェノサイド)、戦争犯罪、人道に対する罪に関連した場合、国家元首に対する免責特権を認めず、現職の国家元首を起訴することもできる。だが、ICC自身は現職の国家元首を逮捕することはできず、「国際刑事裁判所に関するローマ規程」に加盟した加盟国が逮捕して引き渡さなければならない。プーチン大統領が自身が逮捕されうる国家に行く可能性は、現在では非常に低い。

 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、ロシアはICCの管轄権の外にある点を再確認し、「こうした種類のいかなる決定も、法の観点では無効であり、効力はない」と述べている。ただし、カーン検事長はCNNのインタビューでこれに反論し、「ローマ法令第27条は、個人の公式の地位はICCの管轄権と関係がないという点を明確にしている」としたうえで、「ICCの独立裁判官も令状発行が適切だと判断した」と反論した。

 ICCは被告人が参加しない欠席裁判を進めないため、裁判開始の時期も不透明だ。だが、これについてもカーン検事長は、被告人がいなくても裁判前に裁判官が疑惑に対する証拠を評価する審議は可能だと主張している。

(3)逮捕状の意味は

 逮捕状は、国際社会がプーチン大統領に戦争に関する責任を問い、西側からプーチン大統領の外交的孤立を強めさせ、海外移動を制限できるという点で、象徴的な意味がある。プーチン大統領がICCの当事国に旅行する場合、該当国は国際法上の義務にしたがい、プーチン大統領を逮捕して裁判所に引き渡さなければならないため、今回逮捕状を出されたプーチン大統領とリボワ=ベロワ大統領全権代表は、海外への移動が自由にできなくなるとみられる。現時点の加盟国は英国、ドイツ、フランス、韓国、日本など123カ国。ロシアは2016年にICC加盟国から脱退し、米国と中国は加盟していない。

 プーチン大統領は、ICCが逮捕状を発行した国家元首クラスの要人であるスーダンのオマル・アル=バシール元大統領、リビアの独裁者ムアンマル・カダフィー大佐などと同列に並ぶ汚名を受けることになった。何より、国連安全保障理事会の常任理事国の元首がICCから逮捕状を出されたのは初めてのことだ。逮捕状を請求したICCのカーン検事長はプーチン大統領を、第二次世界大戦後のニュルンベルクで裁判にかけられて処罰されたナチス戦犯▽1990年代にバルカン全域で戦争や虐殺などを行い旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)で投獄され死亡したユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ元大統領▽シエラレオネ内戦で殺人、性的暴行、少年兵の利用などを支えた疑惑でシエラレオネ特別法廷において50年の刑を宣告され服役中のリベリアの独裁者チャールズ・テイラー元大統領などに例えた。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/1084207.html韓国語原文入力:2023-03-20 01:15
訳M.S

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