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[現地ルポ]恐怖に沈んだキーウ…「今回の空襲はこれまでとは違う」

登録:2022-10-12 06:30 修正:2022-10-12 07:56
北マケドニア在住のウクライナ人たちが10日(現地時間)、首都スコピエのロシア大使館前で、ロシアの無差別なウクライナ爆撃に抗議するデモを行っている=スコピエ/AFP・聯合ニュース

 「昨夜はご無事でしたか」

 ウクライナ全域に対するロシアの「報復攻撃」が行われた翌日の11日(現地時間)、現地で会ったり、連絡を取り合ったりした人々から安否を気遣う連絡が相次いだ。人々は互いの無事を確認し、安堵した。現地の人たちは突然の空襲に驚いた記者に「これは誰にとっても異常な状況」だと慰めるのも忘れなかった。ウクライナ市民のセルヒさんは「今日は人々が普段通り出勤している。以前は空襲警報が鳴っても仕事を続けたが、今は皆空襲警報に神経を尖らせている」と語った。現地のある韓国人在住者も「今回の空襲はこれまでとは違う。身をもって(戦争の惨状を)感じた」と心配そうに言った。

 10日の空襲直後、地下防空壕として使われる地下鉄フレシチャーティク駅に駆け込んだ本紙の取材陣は、そこで5時間待機した。午後になって市内の外郭に移動する車窓の外に映ったキーウの風景は、重苦しい空気に包まれていた。都心の真ん中に位置するシェフチェンコ公園と空襲で被害を受けたサムスン電子現地事務所入居ビルがある地域に入る道路は、すでに遮断されていた。速やかに復旧作業が始まったようだった。

 突然の空襲に驚いたせいか、軍の検問が強化された。都市中心部から30分の距離の市内外郭に移動する途中、ライフルを持った兵士に車を止められ、スマートフォンを見せるよう求められた。近くには官公庁と州警察庁、産業施設が並んでおり、誰かが施設座標を撮ったり、情報を提供するスパイ活動をしたりするのを防ぐためのようだった。

 前日の空襲は1回では終わらなかった。郊外に移動していた午後3時頃、再び空襲警報が鳴り響いた。多くの人が再び地下避難所に身を潜めた。中部のドニプロペトロウシク州の都市クリビリフなどでは、2回目の空襲を受けた。都市のあちこちで火の手が上がった。駐ウクライナ韓国大使館から「ロシアの空襲で国民の安全が非常に危険な状況だ。ウクライナに滞在中の韓国国民はできるだけ早く出国するよう勧告する」という知らせが届いた。午後3~6時には通信が「途切れたり繋がったり」を繰り返す一方、基幹施設の破壊で停電が続き、夕方になってようやく電力が復旧した。断水も1時間ほど続いた。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は10日、安全保障会議を開き、「クリミア橋で起きた8日の爆発はテロだ」と断定し、「今朝、国防総省などの提案を受けてウクライナのエネルギー・軍事・通信施設に対する全面的な空襲を実施した」と述べた。さらに「我が国の領土に対する追加テロ攻撃を試みた場合、ロシアの対応は過酷なものになるだろう」と脅した。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は怒りに震えた。ゼレンスキー大統領は前日夜、キーウ中心部のボロディミルスカ通りとシェフチェンコ通りに繋がる交差点で、ロシアの脅威に屈しないと重ねて強調した。「彼ら(ロシア)はいつものように嘘をついている。実際、(攻撃された)ターゲットはエネルギー施設とは程遠い。ここから数百メートル進むと、聖ソフィア聖堂の鐘塔がある。あの建物が建てられた時(1037年)モスクワは存在もしなかった。もう少し行けばウォロディミル丘だ。そこは東欧のキリスト教文化の発祥地だ。私の隣にあるシェフチェンコ大学はもうすぐ創立190周年を迎える。これらの施設がロシアの空襲で被害を受けた」。ゼレンスキー大統領は、「わが軍の戦力を強化するため、あらゆる措置を取る。占領軍はすでに戦線で我々に対抗できない。それが彼らがテロに依存する理由だ」と述べた。

10日午前、ロシアのミサイル攻撃が行われた後、驚いたウクライナ市民たちがキーウ中心部にある地下鉄駅のフレシチャーティク駅に避難した。 親たちが驚いた子どもたちをなだめている=イム・インテク記者//ハンギョレ新聞社

 戦力強化のために「あらゆる措置を取る」というゼレンスキー大統領の発言とは裏腹に、米国の反応は微妙だった。ウクライナがプーチン大統領に本格的な打撃を与えるためには、ロシア本土を直接打撃できる長距離ミサイルが必要だ。そのため、ゼレンスキー大統領は米国に射程300キロメートル(190マイル)に達する陸軍の戦術ミサイルシステム(ATACMS)の提供を要請してきた。

 しかし、空襲後も米国の立場は変わらなかった。ジョー・バイデン大統領は同日の声明で「ロシアのミサイル空襲を強く糾弾する」としたが、ゼレンスキー大統領との電話会談後に発表した資料では「先端防空システムを含めウクライナが自らを防御するのに必要なものを引き続き支援する」と言及するに止まった。ウクライナにミサイルを防ぐ防衛用兵器を供給するだけで、致命的な打撃を与える攻撃用兵器は提供しないという従来の立場を確認したのだ。11日の主要7カ国(G7)の緊急テレビ首脳会議と、12日のベルギーのブリュッセルで開かれる北大西洋条約機構(NATO)国防相・ウクライナ防衛連絡グループ(UDCG)会合でも、このような基調が維持されるものとみられる。

 ロシアもそれなりに自制する姿勢を見せている。当初、プーチン大統領が戦術核などを爆発させ、一気に禁止線(レッドライン)を越えるかもしれないという懸念があったが、プーチン大統領は同日、ウクライナが再びテロ攻撃を強行すれば、「その脅威に相応する(commensurate)対応を取る」と述べただけだ。テロ攻撃に核を使用することは相応の対応とはいえない。

 ロシアと連合部隊を構成することにしたベラルーシも、戦闘に直接参加しないとして、慎重な立場を維持した。ベラルーシのビクトル・フレ二ン国防相は、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領がウラジーミル・プーチン大統領と連合部隊配置に合意した後に発表した映像メッセージで、「私たちはリトアニア人、ポーランド人、ウクライナ人と戦うことを望んでいない」と述べた。また、自国軍をウクライナに配置することは望まないと付け加えた。ロシアの10日の空襲で19人が死亡しており、戦争は続いている。

キーウ/イム・インテク記者、シン・ギソプ、キム・ヘユン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1062223.html韓国語原文入:2022-10-12 02:30
訳H.J

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