ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問後、域内の軍事的緊張が高まっている中、日本が米国主導の多国間合同演習「リムパック(環太平洋合同軍事演習)」で集団的自衛権を行使する「存立危機事態」に備えた訓練を初めて実施した。
岸信夫防衛相は8日の記者会見で「防衛省と自衛隊は7月29日から8月3日まで、存立危機事態と認定した上で、武力行使を伴うシナリオ訓練に初めて参加した」と明らかにした。この時期はペロシ議長が台湾を訪問した時期(今月2~3日)と重なる。
防衛省は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が行われ、これにより日本の存立が脅かされ、日本国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある状況を「存立危機事態」と規定している。存立危機事態が発生すれば、他の対応手段がない場合、自衛隊が必要最小限の範囲で米軍艦船を防衛するなど集団的自衛権を行使できる。日本が直接攻撃を受けない状況でも武力の使用が可能ということだ。
しかし、岸防衛相は今回の演習が「集団的自衛権の行使を想定した演習だったのか」という質問に対し、「シナリオ設定の詳細は運営に関わるので(答弁を)控えたい」と答えた。
自衛隊は6月29日から今月4日まで、米国ハワイ一帯で行われたリムパック2022に参加した。存立危機事態を前提にした訓練は、この過程で実施された。日本はこの訓練に垂直離着陸(STOVL)が可能なステルス戦闘機F-35Bなどを運用できる軽空母「いずも」などを派遣している。
一方日本政府は、北朝鮮・中国など周辺国のミサイル基地を直接打撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)保有計画と関連し、長距離巡航ミサイルの実戦配備を当初の計画より2年繰り上げる案を推進しているという。読売新聞は9日、「日本政府は、陸上自衛隊の『12式地対艦誘導弾』を改良した長射程ミサイルを当初計画より約2年早めて2024年度にも配備する方針」だと報じた。日本は射程距離が約200キロの12式地対艦誘導弾を5倍長い1000キロ以上に改良し、「敵基地攻撃能力」の中核の装備として使用するという構想だ。同紙は同ミサイルを「(日本政府は)台湾有事に備え、南西諸島から九州にかけて順次配備したい考えだ」と伝えた。