本文に移動

[ルポ-ウクライナ国境地帯を行く]「夫は祖国に残ってます」…1歳の子と国境越え

登録:2022-03-08 03:25 修正:2022-03-08 08:07
ウクライナ国境地帯を行く:ポーランド・コルツォワ 
 
ポーランド国境検問所近くのサービスエリア 
難民と親戚たちの再会の「約束場所」に 
隣接国に知人のいない人々は途方に暮れ 
「どこへ行けば良いのか…居場所もありません」

 <先月24日のロシアの侵攻以降、それまでの暮らしを捨てて脱出したウクライナ人は6日現在で150万人を超えると集計される。ウクライナ政府が18~60歳の男性に総動員令を下しているため女性や子どもなどが大半を占める難民は、極度の恐怖と不安の中、列車で、車で、または歩いてポーランド、ハンガリー、モルドバ、ルーマニア、スロバキアなどの隣国との国境を越えた。本紙はキム・ヘユン、ノ・ジウォンの両記者を欧州のウクライナ国境地域に急派し、住み慣れた故郷を離れざるを得なかった人々の事情と戦争の惨状を伝える。>

ウクライナ2世のミシェルさん(44)が6日(現地時間)午後、ポーランドはコルツォワの国境検問所で、ワルシャワ行きのバスから降りた従妹たちと姪を歓迎している。ミシェルさんは彼らを連れて車で15時間かけてベルギーの自宅へ帰る予定だ。コルツォワ/キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 6日午後4時(現地時間)、60人前後のウクライナ人を乗せたバスが、ポーランドのコルツォワにある国境検問所近くのサービスエリアに止まった。ウクライナ西部の町ルビウを経由してきたバスだ。ドアが開くと、20~30代ほどに見える女性たちがどっと降りてきた。

 コルツォアの検問所は、先月24日にロシアの侵攻が始まって以降、ウクライナとポーランドの国境にある11の検問所の中で最も早く新型コロナウイルス拡散防止のための国境規制を解除した。そのため多くの避難民とその親戚たちが集まり、検問所周辺のサービスエリアは再会の「約束広場」として使われている。

 四角いサービスエリアの建物から出てきた女性たちは、熱いコーヒーやお茶の入った紙コップを一つずつ持っていた。そして、片隅に三々五々集まってタバコに火をつけた。女性の口から吐き出されるタバコの煙には、安堵とため息が混じっているようだった。彼女たちはみな、ウクライナから長時間走ってきたあげく、入国前に国境検問所で数時間待たされたために疲れ果てていた。

 ウクライナ難民事態の最大の特徴は、短期間で難民が急激に増えたことだ。ロシアの軍事的脅威は昨年10月ごろからあったが、実際に戦争が起こると予想していた人は多くはなかった。そのためか、戦争が起こると驚いた人々が一斉に国境を越え、一瞬にして難民となった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の5日の資料によると、戦争が勃発してわずか10日で実に153万人ものウクライナ人が国境を越えたことが確認されている。このうち89万人が西に国境を接するポーランドへと渡った。

 準備期間がなかったため、大半の難民は無対策だ。検問所で出会ったガリアさん(37)は、西部の町イバノフランキフスクにある家を出てワルシャワ行きのバスに乗り込んだ。ロシアが開戦を宣言した先月24日、この町の空港はロシア軍の爆撃により火災に見舞われた。恐怖に襲われたガリアさんは、ひとまず故郷を離れることを決心した。英語は苦手だったが、「エアポート(空港)」、「ファイア(火)」という単語くらいは正確に話せた。ガリアさんにどこへ行くのか、居場所はあるのかを尋ねたが、返事は短かった。「ありません」。ポーランドにガリアさんの知人や友人はいない。生きたいという気持ちから、ひとまずワルシャワ行きのバスに乗ったに過ぎない。

 西欧の国に親戚がいる人々はましな方だ。バスから降りた2人のウクライナ女性は、他の人々のように再びバスに乗り込む代わりに、バスのトランクを開けてカバンを取り出した。彼女たちを迎えに来る従姉がいるからだった。濃いピンク色の宇宙服のようなベビー服を着せた幼い赤ん坊を抱いたまま四方を見回す彼女たちの前に、1台のSUVが止まった。2人より背の高い1人の女性が、いきなり運転席のドアを開けて降りてきて2人を抱きしめた。女性たちの顔に笑みが広がった。背の高いミシェルさん(44)はウクライナに住んでいた従妹たちをベルギーに連れて行くために、15時間かけてコルツォワまでやって来た。「私はアメリカ人です。ベルギーに住むウクライナ移民の2世です。ウクライナ人の祖父母が第2次世界大戦の時に米国に移民したんですが、まだ従妹たちはウクライナに住んでいます。従妹たちはベルギーで新たな人生を始めるでしょう」

 ミシェルさんの2人の従妹は、ウクライナ西部のルビウからバスに乗ってポーランドに渡ってきた。夫はまだウクライナにいるが、1歳の赤ん坊を危険なところに置いてはおけないため従姉のところに行くのだ。「夫は来られません。総動員令が出たんです。祖国に呼ばれるのを待っています。どうか戦争が終わって夫に再会できることを願います」

 別のウクライナ人イリャさん(38)は、チェルニーヒウに住む友人たちを連れて、コルツォワの国境からポーランドに入国した。チェルニーヒウは、4日のロシア軍の砲撃により民間人居住地域に大きな被害が出た。ひとまず友人たちと飼い犬をワルシャワに連れて行き、それからウクライナに帰る。参戦している軍人のための医薬品を購入するという理由で通行権を得てポーランドにやって来たからだ。国境を越えるついでに、恐怖を訴えて家を離れようとしている友人を車に乗せて連れてきたのだった。

 「ロシアはウクライナを攻撃しました。ウクライナの兵士たちには治療が必要です。医薬品をウクライナに送りたいのですが、どこへ行けばいいでしょうか」。ポーランドに住むウクライナ人のケイトさん(29)は、コルツォワの国境付近をうろうろしている途中で、取材陣とあいさつを交わした。国境に行けばウクライナに送る救援物資を受け付けていると思って駆けつけたのだが、どこに渡せばいいのか分からず迷っていた。ケイトさんは1人でクラクフを経由してコルツォワの国境まで、車で8時間かけてやって来た。ケイトさんの車のトランクは止血剤と包帯で一杯だった。

コルツォワ/ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1033912.html韓国語原文入力:2022-03-07 18:30
訳D.K

関連記事