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プーチンはなぜウクライナに執着するのか

登録:2021-12-11 09:12 修正:2021-12-11 10:18
ウクライナとロシアの国境があるドンバス地域に「ストップ」(STOP)と書かれた警告の標識が立てられている=タス・聯合ニュース

 ロシアとウクライナの国境に10万人近いロシア軍が集結し、緊張が高まっている。状況が緊迫すると、米国のジョー・バイデン大統領は7日(現地時間)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とテレビ電話で首脳会談を開き、談判した。しかし会談は可視的な成果なく終わった。バイデン大統領が「ウクライナに侵攻するなら強力な手段で対応する」と警告すると、プーチン大統領は「NATOがウクライナまで拡張しないと保障せよ」と対抗した。せめてもの成果といえば、両首脳が実務陣に後続作業を指示し、折衷の余地を残したこと程度だとみられる。

 ウクライナは1991年、旧ソ連の解体とともに独立した。冷戦時代に同じ垣根の中にあったロシアから離れ、別の社会を築いてからもう30年が経った。にもかかわらず、ロシアはなぜウクライナを手放すことができないのか。

 プーチン大統領は7月、クレムリンのホームページへの寄稿で、千年前の歴史にさかのぼり両国の歴史的同質性を主張した。同大統領は両国が中世国家「キエフ・ルーシ(キエフ大公国)」を起源とする「一つの民族」で、歴史や言語、宗教的に結びついた共同体だとし、現在の分裂は「災い」だと述べた。また、西欧がウクライナを「ロシア攻撃用の足場」として狙い、「危険な地政学ゲーム」を行なっていると非難した。

 しかし、このような論理はウクライナ固有の文化を否定し、自国の領土的野心を正当化しようとする「我田引水」だという冷ややかな反応を呼んだだけだった。元「ウクライナ歴史研究所」所長(現ポーランドのマリ・キュリー・スクウォドフスカ大学教授)のゲオルギ・カシヤノフ氏は「かつては違う脈絡だった歴史的事実を現在の立場に合わせて再解釈したもの」とし、例えばプーチンの言う民族は19世紀後半に出た概念だと批判した。プーチンの論理が歴史の外皮で覆った政治的宣伝であるという疑いは、彼がウクライナの主権を「ロシアとのパートナーシップでのみ可能だ」と強調するとき、さらに強くなる。

 ソ連は1990年、ドイツ統一を容認する対価として「NATOが東に拡張しない」という約束を取り付けた。しかし、これは空念仏になった。NATOはポーランド、チェコなど旧共産圏に続き、バルト3国まで加盟国として吸収し、東進した。ロシアとしては、2千キロ近い国境線を挟んで接するウクライナにNATO軍が入ってくる状況まではとても我慢ならないと考えているようだ。しかし、自分の利益のために弱小国を踏みにじることができるという一方通行は、覇権の論理と読み取れる。

 両国の対立にはプーチンの責任もある。プーチンは2014年、ウクライナで市民蜂起により親ロ政府が崩壊すると、クリミア半島を占領し、ウクライナ南東部のロシア系住民の反乱を煽って支援した。ここ7年間で1万4千人の犠牲者が出た武力衝突は、今も続いている。ウクライナの世論の地形は、これを機に急激に変わった。2008年にはロシアとの連帯を望むウクライナ人は51%だったが、2021年には逆にNATO加入支持者が58%に増え、ロシアと連帯は10%以下に下がった。

 NATOは2008年にウクライナの加盟を約束したが、「加盟国間の意見の相違が残っている」などの理由で履行を見送っている。ウクライナはロシアの軍事的脅威をNATO加盟の名分としているが、ロシアはウクライナのNATO加盟を脅威と考えている。ロシアとウクライナが互いに望む安全保障とNATO加盟カードを交換し、対立を解消することはできないだろうか。

パク・ビョンス国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1022891.html韓国語原文入力:2021-12-10 19:06
訳C.M

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