日本の岸田文雄政権が新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン」の流入を防ぐため、外国人の新規入国禁止など強力な先制対応に出た。デルタ株の感染拡大を食い止めることができず、1年の短命に終わった菅義偉前首相の失敗事例と、来年7月の参議院選挙などが影響したものとみられる。
岸田首相は先月26日、オミクロン株に関する報告を受けた後、27~-28日に南アフリカ共和国など9カ国を対象に外国人の新規入国を禁止し、29日にはすべての国に範囲を広げた。先月8日、10カ月間固く閉じられていた扉をやっと開いて外国人の入国が可能になったが、約20日後に「封じ込め政策」に逆戻りしたのだ。日本政府内でも「そこまでしなくてもいいのでは」という慎重な意見が出たが、岸田首相の意志を曲げることはできなかった。岸田首相は29日、記者団に対し「批判は私がすべて負う覚悟だ」と述べた。封じ込め政策の逆効果を懸念する経済界にも、自分の責任を強調し、理解を求めたという。
短時間で強硬策が次々と打ち出されたことで、内部の混乱も起きている。日本政府は1日には、航空会社に日本着の全国際線の新規予約を停止するよう要請した。この場合、航空便を予約していない日本人も入国が困難になる。これによる混乱を懸念する声が高まったことを受け、松野博一官房長官は2日、定例記者会見で、「(日本着の国際線の)新規予約の一律受け付け停止の要請を取りやめた」とし、「岸田首相から日本人の帰国需要を十分配慮して対応するよう指示があった」と述べた。わずか1日で撤回したわけだ。
岸田首相が一部の悪影響をやむなしとしてまでオミクロン株への対応に積極的に乗り出しているのは、菅政権の失敗を反面教師にしているためとみられる。菅前首相は、デルタ株の感染拡大にもかかわらず、経済活性化政策を進め、大きな困難に陥った。新型コロナウイルスが手のほどこしようもなく広がり、東京五輪の無観客開催や病床不足などで支持率が下落した。その影響で、1年で自ら身を引かざるを得なかった。岸田首相は菅政権の教訓を周囲によく語っていたという。それを踏まえ、「後手」に回るよりは過剰対応が良いと判断したものとみられる。
来年7月に予定された参議院選挙も、今回の対応に影響を及ぼしている。再び新型コロナの感染拡大が起きた場合、「政権審判論」が浮上する可能性が高いからだ。政府・与党連絡会議では自民党の幹部から「対応次第では参院選の結果に直結する」という声もあがったと朝日新聞が伝えた。日本は今年9月初めに2万人を超えていた新規感染者数が急速に減り、11月に入ってからは100~200人台に落ち着いている。オミクロン株はこれまで外国人2人が感染したことが確認された。