岸田文雄首相がコロナ禍の被害に対する経済政策などを推進することについて、現職官僚が「バラマキ政策」と批判し、物議を醸している。韓国で与党の共に民主党が新型コロナ対策として全国民を対象に災害支援金を支給するのを推進したことに対し、ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官が反旗を翻したのと類似した展開だ。
日本の財政政策を総括する財務省の最高幹部である矢野康治事務次官(59)は8日に発売された月刊誌「文藝春秋」11月号に寄稿した論文で、日本の政界の新型コロナ対策をめぐる政策論争について「バラマキ合戦」だとし、「このままでは国家財政は破綻する」と指摘した。
矢野氏がバラマキ政策と指摘したのは、岸田首相と自民党が推進する数十兆円規模の経済政策や被害を受けた自営業者などに対する支援金、現在10%の消費税引き下げ問題だ。このような大規模な政策は、今月31日に予定された衆議院選挙を意識したものでもあるが、コロナ禍で緊急事態が宣言され、あまりにも大きな被害を受けた自営業者を支援するために進められた面もある。
しかし、矢野氏は日本の国家債務が深刻な状況にあることを直視すべきだとして、「財政健全性」問題を正面から提起した。矢野氏は「今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」だとし、「氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けている…このままでは日本は沈没してしまう」と指摘した。
日本の政府債務は現在、国内総生産(GDP)の2倍を上回る1200兆円を超えている。新たに発足した岸田政権に対する矢野氏の批判は「かなり異例」と言える。安倍晋三元首相時代に財務省は「忖度」で国会で虚偽の証言をし、公文書を改ざんするなどの不正を犯し、物議をかもした。
矢野氏の批判に対し、岸田首相と自民党は不快感をあらわにした。高市早苗党政調会長は10日、NHKに出演し「大変失礼な言い方だと思う」とし、「基礎的な財政収支にこだわって、困っている人を助けないのはばかげた話」だと述べ、厳しく批判した。岸田首相も10日「いろんな議論はあっていいが、いったん方向が決まったら関係者はしっかりと協力してもらわなければならない」と述べた。