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ワクチンの成果を破壊するデルタ株…それでも頼みはワクチンのみ

登録:2021-06-25 03:21 修正:2021-06-25 06:48
チェ・ヒョンジュンのDB_deep 
昨年末インドで発見の「二重変異」が由来 
インドで感染者が急増、英国も増加 
ワクチン2度接種すれば予防率上昇 
韓国でも4月から確認、256人の感染確認
新型コロナウイルスを形象化したグラフィック/AP・聯合ニュース
チェ・ヒョンジュンのDB_deep//ハンギョレ新聞社

 新型コロナウイルスが変異したインド発の「デルタ株」が、世界各国の防疫網をかいくぐって急速に拡散している。韓国をはじめ、すでに90カ国あまりに拡散しており、一部の国ではこの変異株が防げていないため、苦労して築き上げてきたワクチン防疫網が崩壊しそうになっている。ようやくマスクを外しつつある世界に、デルタ株が再びウイルスの恐怖をもたらしている。

由来は?

 インドでコロナの変異株が発見されたというニュースは、昨年4月に初めて伝えられた。中国の清華大学とオーストラリアのマードック大学の研究陣が発見したもので、ウイルスがヒトの細胞と結合するメカニズムが異なるため、開発中のワクチンが「無駄」になる可能性があるという懸念が示されていた。

 その後、変異株の動向はあまり伝えられなくなったが、昨年末の英国発の変異株を皮切りに、南ア発の変異株やブラジル発の変異株などが続々と登場した。インドでは昨年12月に現在と同じ変異株「二重変異ウイルス」が初めて発見された。インド保健省は3カ月後の3月末、西部マハーラシュトラ州で二重変異が発見されたと認めた。当時のインドではコロナの1日の感染確認が10万人に迫っていた。

 世界保健機関(WHO)は今月初め、特定の国へのレッテル張りにつながるとして変異株の名をアルファ(α、英国)、ベータ(β、南アフリカ)、ガンマ(γ、ブラジル)、デルタ(δ、インド)に変更した。

威力は?

 デルタ株が危険なのは強力な感染力のためだ。従来の変異のないウイルスより、感染力が3倍も強いことが知られている。

 韓国の中央防疫対策本部は、デルタ株の感染力は最初の変異株であるアルファ株より60%強く、入院率は126%高いと発表している。昨年末に英国で感染者を増加させたアルファ株は従来のウイルスより感染力が70%も高いとされているが、デルタ株はこれをはるかに上回るのだ。インド政府は23日、デルタ株より感染力の強い「デルタ・プラス株」が登場したと発表し、懸念が高まっている。

 デルタ株が発生したインドは、3月末からコロナ感染者数が急増し始め、先月初めには1日の感染確認数が40万人あまりに達した。インドは、昨年は10万人を超えた日が1日もなかったが、今年は4月6日から今月10日まで毎日10万人以上の感染が確認された。デルタ株の拡散が主な原因として挙げられる。インドは23日現在で累計感染者が3002万人で、3357万人の米国に次いで感染者数が2位となっている。

23日、チリのサンティアゴのあるワクチンセンターで、医療スタッフがコロナワクチンを注射器に入れている=サンティアゴ/AFP・聯合ニュース

英国はなぜ?

 インド以外に、デルタ株の深刻な打撃を受けている国の一つが英国だ。昨年末に世界で初めてワクチン接種を開始した英国は、今月に入って1次接種率が全国民の80%にまで上昇したが、23日の感染確認は1万6135人で、厳しい封鎖政策(ロックダウン)を取った今年2月の水準に逆戻りした。感染者の98~99%がデルタ株によるものだ。

 英国はかつてインドを植民地として支配していたため、インドとつながりのある国民が多い。他国よりインドとの往来が活発だが、英国がインドからの入国を規制したのは4月23日だった。また英国政府は先月17日から海外旅行を認めており、変異株が流入する可能性を高めてしまった。

 英国で多く接種されているのが、デルタ株の予防率が相対的に低いアストラゼネカのワクチンであることも、原因の一つに挙げられる。今年4月時点での英国のアストラゼネカ接種者の割合は60%、ファイザーは40%ほどだ。

その他の国は?

 英国の他にも、ロシアの新規感染者に占めるデルタ株の割合は99%、ポルトガルは96%と非常に高い。ドイツはまだ15%ほどだが、1週間でデルタ株感染者数が2倍に増えるなど拡散が速い。このような傾向はさらに拡大するものとみられる。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は23日、デルタ株が8月末までに欧州連合(EU)内で新規感染の90%を占めるようになると予想されると明らかにした。室内でもマスクを外すことを認めたイスラエルは、デルタ株の感染者が増加したことを受け、再び室内ではマスクをつけることを勧めている。

 感染者数が世界最多の米国でもデルタ株が急増している。米国疾病予防管理センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長は最近、米国でのデルタ株が2週間で2倍となっていると懸念を示した。23日現在、米国のデルタ株感染者の割合は30%ほど。およそ1カ月後にはデルタ株が米国の支配種になる見通しだ。米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長もこの日、CBSの番組に出演し「ワクチン接種率の低い地域では、この異変株が支配的な種になるだろう」「(ただし)ワクチン接種率が高い地域ではこのようなことは発生しないだろう」と述べた。

23日、トルコのイスタンブールで、ある市民がコロナワクチンを打っている=イスタンブール/新華・聯合ニュース

韓国は?

 英国や欧州ほどではないが、韓国国内でもデルタ株が4月から確認されている。現在までのデルタ株感染者数は、遺伝子検査による確認が190人、疫学的な確認が66人の256人にのぼる。中央防疫対策本部(防対本)の資料によると、最近1週間(13~19日)の国内の新規感染者のアルファ、ベータ、ガンマ、デルタの「懸念される変異株」4種の検出率は33.2%。内訳はアルファ株が91.6%、デルタ株が8.4%。国内で発生の感染者数を100人とすると、33人ほどが変異株の感染者であり、このうち30人がアルファ株、3人ほどがデルタ株の感染者というわけだ。

どう防ぐ?

 変異株はワクチンによってある程度は予防できるが、完全ではない。特に1次接種のみの場合は予防率が低いため、注意が求められる。英国公衆衛生庁の調査によると、デルタ株に対する予防率はファイザーのワクチンが87.9%、アストラゼネカが59.8%。これは従来のウイルスに対する予防率、ファイザーの91.3%、アストラゼネカの81.5%に比べてやや低い。しかも、このような効果は2回の接種を終えてはじめて現れる。1回の接種のみでは、デルタ株の予防率はファイザーが33.2%、アストラゼネカが32.9%と極めて低い。1回の接種で済むヤンセンファーマのワクチンは、デルタ株の予防率が60%にのぼる。

 ECDCのアンドレア・アモン所長は「初期の研究資料によると、ワクチンを1回だけ接種した人もこの変異株に感染しうる」とし「良いニュースは、ワクチンを2回打って接種を完了すれば、この変異株から守られるということ」と述べた。

チェ・ヒョンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1000747.html韓国語原文入力:2021-06-24 14:42
訳D.K

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