東京オリンピック組織委員会が、日本看護協会に対し五輪期間中に看護師500人を派遣してほしいと要請した事実が明らかになり、医療現場の反発が強まっている。医療団体は「派遣要請を再検討せよ」と声明を出し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では抗議デモが続いている。
愛知県の「医療・看護・福祉労働組合連合会」が28日から始めた「看護師の五輪派遣は困ります」という内容のハッシュタグを付けた“ツイッターデモ”は2日、5日間で33万人を超えた。ツイッターデモには、看護師だけでなく一般人、政治家も参加している。ある看護師はツイッターに「患者を助けたくて看護師になった」として「現場の患者を置いて五輪に派遣されるとはありえない」と文を載せた。日本共産党の志位和夫委員長もツイッターで「医療崩壊が起こっている最中に、五輪のために看護師派遣を要請するなど正気の沙汰とはいえません」として、「コロナ収束にすべての力を集中することを強く求めていこうではありませんか」と明らかにした。
東京オリンピック組織委員会が先月9日、看護協会に対し五輪大会期間にボランティア次元で看護師500人を派遣してほしいと要請する公文書を送っていたことが最近知らされ、議論になっている。医療関係者は、コロナ長期化にワクチン接種で現在も人手が足りず苦痛を訴えているためだ。朝日新聞は、「重症患者らに多くの人手を割く状況が続く」として「自身が感染する看護師もいるため退職者も増えている。妊娠中に夜勤を迫られる例も見受けられた」と報道した。医療関係者労組の関係者は同紙に「今は1人でも抜けたら大変。簡単に500人と言うけれど、今の状況がわかっていない。現場は怒っている」と批判した。
日本医療労働組合連合会も先月30日、談話を出し「オリンピック開会までにコロナ感染が落ち着く見通しなどまったくない」として「患者と看護師のいのちや健康を犠牲にしてまでオリンピック開催に固執しなければならないのかと、強い憤りを感じる」と明らかにした。
看護師派遣についての菅義偉首相の安易な発言も反発を煽っている。菅首相は30日、記者団に「休んでいる方もたくさんいると聞いている」として「(500人の派遣が)可能だと考えている」と話した。
日本の新型コロナの状況は深刻だ。今月11日まで東京・大阪・京都・兵庫の4地域に3回目の緊急事態が発令されたが感染者が減っておらず、専門家の間からは緊急事態宣言を延長しなければならないという声が出ている。日本の1日の新規感染者は、東京などで増え続けており、1日は5986人と集計された。4月28日5792人、29日5913人、30日4684人など、まだ減少傾向に入っていない。朝日新聞は医療専門家の話を引用して「11日の期限までに流行が収まるとは思えない」として「延長する場合、単に今の対策を続けるのではなく、より広く休業を要請するなど次の手を考えておく必要があるだろう」と伝えた。
新型コロナの深刻化に伴い、日本の政界でも野党を中心に五輪懐疑論が出ている。田村智子共産党政策委員長は30日、記者会見を開き「医療や検査の態勢を(五輪に)取っていかれたら、国内の感染に対応ができなくなる」として「中止を含めた議論をすぐにでも行うこと」を要求した。国民民主党の玉木雄一郎代表も最近「五輪の実現可能性を客観的に検証する、医療関係者をいれた第三者機関をつくり議論を開始すべきだ」と提案した。