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中国軍高官、「覇権国家との戦争に備え、国防予算増額が必要」

登録:2021-03-10 05:40 修正:2021-03-10 08:03
許其亮・中央軍事委員会副主席、全人代の部門別会議で 
米中衝突の警告「トゥキディデスの罠」、異例の議論 
中国国防相、「封鎖と応戦が米中関係を規定するだろう」
中国の全国人民代表大会(全人代)の憲法・法律委員会の代表者らが8日、部門別会議を行っている=北京/新華・聯合ニュース

 中国軍高官が、「覇権国家」に対抗する戦争に備えるために国防予算を増やさなければならないと主張した。ジョー・バイデン政権発足後も、米中対立の構図は変わらないだろうという悲観論に基づいたものだとみられる。

 9日の「サウスチャイナ・モーニングポスト」の報道を総合すると、中国共産党中央軍事委員会の許其亮副主席は、5日の全国人民代表大会(全人代)部門別会議で「トゥキディデスの罠」に言及し、国防予算の増額の必要性を力説した。「トゥキディデスの罠」は、新たに浮上した新興大国と既存の覇権国が衝突せざるを得ない状況を意味する。

 許副主席は「トゥキディデスの罠と国境紛争に直面した状況では、軍事力増強に拍車をかけなければならない」とし、「戦闘方式と遂行能力により突破口を設け、軍事力の現代化の強固な基礎を磨かなければならない時」だと強調した。「トゥキディデスの罠」は米国を、「国境紛争」は、昨年に流血をともなう衝突をしたインドをはじめ領有権で対立している東・南シナ海をそれぞれ指したものだと分析される。

 さらに許副主席は「中国はすでに浮上した経済大国であり、中国の国内総生産(GDP)は米国の70%の水準を超えた」とし、「これは、中国がすでに強大国に進む新たな場所の重要な地位に上ったことを意味する」と強調した。人民解放軍の空軍司令員(参謀総長に相当)出身の許副主席は、党中央軍事委員会の主席を兼ねる習近平国家主席に続く軍序列2位。共産党の指導機関である中央政治局(25人)の一員でもある。

 中国軍の指導部が「トゥキディデスの罠」を公開の場で取り上げたのは異例だ。ブルームバーグ通信は「中国指導部はこれまで、トゥキディデスの罠の危険性を努めて低く評価してきた」とし、「習近平主席も2015年の訪米時に『強大国が戦略的に誤った判断だけを避ければ、トゥキディデスの罠のようことはないだろう』と強調したことがある」と報じた。

 にもかかわらず、許副主席がこれに言及したのは、バイデン政権発足後にも米中関係改善の可能性がほどんどみられず、中国内で広がっている“悲観論”を反映したものだという評価が出ている。実際、ホワイトハウスは3日に公開した『国家安全保障戦略指針の暫定案』で中国を「経済・外交・軍事・技術力の側面で、安定的に開放された国際体制に持続的に挑戦できる潜在力を備えた唯一の競争国」だと規定した。24ページの暫定案には「中国」が合計で15回も登場する。

 これに先立ち、魏鳳和国防相も6日、「封鎖とそれに対する応戦が、長期的に米中関係を規定することになるだろう」とし、「国家安全保障の危険が強まる状況では、“強力な敵”に対抗し戦いに勝てる能力をただちに備えなければならない」と強調している。中国当局は、今年の財政支出の縮小基調においても、国防予算は昨年より0.2ポイント多い前年比6.8%の増額をすることにした。

北京/チョン・インファン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/china/986043.html韓国語原文入力:2021-03-09 16:17
訳M.S

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