米国のジョー・バイデン次期大統領が7日夜(現地時間)に「勝利宣言」をしてから3日が経過したにもかかわらず、北朝鮮はいまだ反応を示していない。「労働新聞」や「朝鮮中央通信」など、北朝鮮の主要メディアは論評はもちろん、当選確定の事実さえ10日まで報道していない。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の公開活動の報道もここ20日間ない。
北朝鮮メディアの“沈黙”は異例とは言えない。北朝鮮のメディアは過去の米国大統領選挙の際も、当選確定から2~3日が過ぎてからその事実を報道する慣行を続けてきた。
2008年のバラク・オバマ大統領初勝利では当選確定から2日後に、2012年にオバマ大統領が再選を果たした際は、当選確定から3日後に報じた。2016年にドナルド・トランプ大統領が当選した際は、当選確定から2日後に関連記事を掲載したが、名前は言及せず、「新政権」と記しただけだった。
ただし、今回は北朝鮮メディアの“沈黙”がかなり長く続くかもしれないと予想する専門家もいる。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と3回会ったトランプ大統領が、今回の選挙に不正があるとして法廷闘争に乗り出した状況を意識せざるを得ないということだ。トランプ大統領が敗北を認めるなど、状況が落ち着いてから北朝鮮の反応が出ると見られるのも、そのためだ。
○2019年11月14日「朝鮮中央通信社の論評」
バイデン氏 =「老いぼれの狂人」、「狂犬」
○ 2017年9月22日「国務委員会委員長声明」
トランプ氏 = 「老いぼれの狂人」、「怯えた犬」
しかも、北朝鮮は選挙過程で金正恩委員長を「暴君」や「独裁者」と非難したバイデン氏に対する不快感を隠さなかった。例えば、2019年11月14日の「朝鮮中央通信社論評」は、バイデン氏に対し、「政権欲に目がくらんだ老いぼれの狂人」や「謀利奸商輩」、「狂犬」、「痴呆末期症状」などといった暴言を吐いた。
しかし、北朝鮮のこのような荒い言葉は、2018年の首脳会談前にはトランプ大統領にも向けられており、今後、金委員長がバイデン氏に敵対的な態度を示すとは限らない。例えば2017年9月、トランプ大統領が国連総会演説で「北朝鮮を完全に破壊する準備ができている」と主張したことを受け、金委員長が「国防委員長声明」(2017年9月22日)で猛非難し、対抗したこともある。金委員長は前例のない個人声明で、トランプ氏に対し「老いぼれの狂人」や「ならず者、ごろつき」、「おびえた犬」などの暴言を並べた。気に入らない時はトランプ氏であれ、バイデン氏であれ、“若い”金委員長にとっては、「老いぼれの狂人」であるわけだ。
非難の主体と非難の公式性から見て、バイデン氏に対する北朝鮮の非難は以前のトランプ氏に対する非難とは比べものにならない。このため、金委員長にとっては当初「老いぼれの狂人」だったトランプ氏が、最近は「閣下」と呼ばれるように、「老いぼれの狂人」と呼ばれたバイデン氏がこれから何と呼ばれるかはまだ分からない。