「昨日、(米国カリフォルニア州ロサンゼルス近隣の)トーランスで白人女性がアジア系のおばあさんにひどい罵倒を浴びせ、『お前らの国に帰れ』と言ったというニュースを聞いた。米国に住みたくなくなるほど恐ろしいことが、頻繁に起きている」
ロサンゼルスのコリアタウンに住んでいるエドワード・リーさん(66)は8日(現地時間)、ロサンゼルスから1時間離れたリアルトで、在米韓国人の高齢者がアジア系という理由で黒人に暴行されたというニュースを聞いてから、怒りと恐れが心の中で混じり合っている。黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察の過剰鎮圧により死亡した後、米国全域で人種差別反対などを叫ぶ抗議デモが続いている中、在米韓国人を始めとするマイノリティーを対象とするヘイトクライム(憎悪犯罪)のニュースが続き、ロサンゼルスの在米韓国人社会が揺れている。
事件直後、弱者である黒人がまた別の弱者である在米韓国人の高齢者を暴行の標的にしたという点が浮き彫りになり、在米韓国人社会で熱い論争の的として浮上したのだ。在米韓国人社会では加害者が「黒人男性」ということに対して怒りを示す意見があるかと思えば、今回の件を「黒人対在米韓国人」の対決構図で見るのではなく、米国社会の根深い人種差別に起因するものと見なければならないという意見が熱く交錯している。
在米韓国人が多く利用するオンラインコミュニティー「MissyUSA」では、加害者が黒人という点に注目し、黒人はもちろん黒人運動を支持する在米韓国人をも非難する意見が目立った。「在米韓国人の商店を略奪して高齢者を暴行する黒人が、人権を掲げる資格があるのか」ということだ。「白人に差別された黒人がアジア系に腹いせをする」として悔しさを吐露する声を越え、「黒人は怠惰で秩序を守らず、税金を不足させ犯罪に走る」というヘイトスピーチ(嫌悪発言)まで出たりもした。
特に在米韓国人の高齢者が標的となったことに関連し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以後、米国のドナルド・トランプ大統領が中国との対立状況を作り、アジア系に対する嫌悪を急激に拡散させたことが触媒の役割を果たしたという指摘も出てきた。移民法の弁護士であるジョン・ユーは「白人が多数派である国家が、科学的に検証されていない事実で中国にCOVID-19事態の責任を負わせたことにより深刻化した反中国感情が、無差別的に反アジア系感情に拡大した」とし、「これを通じ、すでに持っていた先入観や嫌悪が再生産される過程を経ている」と語った。
一方、この件の底に根付いている米国社会の慢性的な人種差別問題に注目しなければならないという意見も少なくなかった。暴行されて顔にあざができたおじいさんの写真を投稿した当事者(被害者の孫娘)が9日、「私が昨日投稿した書き込みは、人種差別がいたるところに存在するということを教えるためだった」と明らかにしたのが代表的だ。彼女は同日、ツイッターに投稿し、「多くの人が今回の件をアジア系と黒人の対決にすり替えようとしている」とし、「今回の件で在米韓国人と黒人との間の対立を助長してはいけない」と強調した。
被害者の孫娘と意見を共にする人たちは、人種差別的ヘイトクライムと戦うために、弱者間の連帯と和解の必要性を強調した。ロサンゼルス市民のイム・ジェファンさんは「弱者への差別と暴力は人種に関係なく起きる」とし、「弱者同士が連帯する姿を見せてこそ、過去の失敗を繰り返すことなく前に進むことができるのではないか」と語った。
ロサンゼルス地域で在米韓国人とアジア系の人々を中心に平和運動を展開している「アジアン和解センター」のホ・ヒョン牧師は、これに関連して「ヘイトクライムを防いで人種間の和解を引き出すためには、『正しく記憶する』とともに『真の謝罪』が必ず伴わなければならない」と語った。「米国の近現代史において、そのような過程を十分に経ることができなかったため、ヘイトクライムが相変わらず横行している」という指摘だ。
「米州韓人有権者連帯」(KAGC)は、リアルトを選挙区とするノーマ・トーレス連邦下院議員の事務所に、短期間のうちに加害者に処罰を与え、すべての市民が人種と出身に関係なく人種主義や敵意、差別に起因する暴力から保護されるよう、実質的な措置を講じることを要求した。
一方、在米韓国人の高齢者の暴行事件に関連し、リアルト警察は10日、事件に対する捜査に着手したと明らかにした。リアルト警察は同日、報道資料を出し、「高齢者虐待という重犯罪としてこの事件を捜査中」とし、「加害者は黒フード付きのTシャツまたはジャケット、白いズボンをはいた黒人男性」であったという被害者の陳述に基づいて容疑者を追跡していると明らかにした。ただし、「今回の事件が人種的動機によるものだという情報がインターネットで広まっているが、容疑者の動機は確定できていない状況」だと付け加えた。