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「家賃5年間値上げできない」ベルリンの破格立法

登録:2019-11-04 14:08 修正:2019-11-05 09:15
人口が年5万人流入して家賃が暴騰 
低所得層が追いやられると、直ちに市政府が決断 
来年発効…「社会的家賃始動」 
「賃貸料暴騰、ドイツ全体の問題」 
…他の都市に拡散の展望
ベルリンのクロイツベルク地域のどの集合住宅にも、「誰もが住む所を必要としている」「狂った家賃」など、家賃値上げに反対する横断幕が掲げられている。ベルリン=ハン・ジュヨン通信員//ハンギョレ新聞社

 家賃暴騰により疲弊しているドイツのベルリン市が、来年1月から住宅の家賃を5年間完全に凍結する、前例のない破格的な措置を打ち出し、ドイツ全域が騒がしい。違憲議論もふくれあがっているが、都心の借家人として絶えず流入する若者層の住居負担を大幅に減らすことに主な目標を置いた今回の措置に、全世界が強い関心を示している。

 社民党、左派党、緑の党が連立政府を構成するベルリン市政府は10月22日、住宅家賃凍結を盛り込んだ「ベルリン市住宅家賃法案」を合意通過・発表した。直ちに来年1月より発効する。ベルリン議会(上院)を早期に通過するものと見られるこの法案によると、2014年以前に建てられた住宅(約150万軒)は、6月18日(法案草案発表日)時点の家賃を基準に、今後5年間、既存の借家人に対して住宅の家賃を値上げをできないように明示した。家賃凍結措置はドイツ16州の中で初めて。ただし、水道・電気・暖房費は凍結の対象ではない。

 2022年からは物価上昇率(約1.3%と予想)程度だけの上乗せを許容し、賃貸人に住宅改善補修費用が発生しても、極めて制限された水準のみ値上げを容認することにした。ベルリン借家人協会は、「適正であり、より多くの借家が提供される歴史的な機会になるだろう」と語った。ベルリンの住人は約85%が借家人だ。ただし、2014年以後に建築された住宅には今回の家賃凍結は適用されない。

 新たに賃貸契約を結ぶ借家人も、家賃の上限の恩恵を享受するようになる。今回の法案は新たな賃貸契約について、1平方メートルあたり9.80ユーロ(約1200円。2013年当時平均の家賃)を家賃の上限線に設定した。賃貸人がこれを破れば、実に50万ユーロ(6億2千万ウォン、約6千万円)の罰金が科せられる。さらに2014年以前に建てられた住宅の既存の賃貸契約も、この上限線の20%以上は賦課できないように縛りをかけた。20%以上になる場合は、借家人が該当の官庁に申告して家賃を引き下げることを可能にする追加的な法を、来年9月から施行する予定だ。ベルリン市当局はこの業務を担当する大規模な人員採用(250人の家賃管理委員)を計画中である。

ベルリンのクロイツベルク地域のどの集合住宅にも、「誰もが住む所を必要としている」「狂った家賃」など、家賃値上げに反対する横断幕が掲げられている。ベルリン=ハン・ジュヨン通信員//ハンギョレ新聞社

 ベルリンの家賃は長い間、欧州の他の主要都市に比べて安い方だったが、2008年以降、2倍以上の天井知らずに上昇した。売買価格はほぼ3倍で、家賃は2倍以上に上がった。改善補修した家は家賃が4倍程度上昇した。国際都市になろうと力を入れたため、全世界の投資家が押し寄せ創業ブームが起こり、年平均約4万8千人が新たに流入している現象と無関係ではないと分析される。賃貸住宅に流れこんでくる層は主に若者だ。都心に住んでいた高齢者や子持ちの家族が、家賃暴騰を耐え切れず、郊外に追いやられている。コントロールを失った家賃が社会問題として浮上し、とうとう「アパート数千軒を所有する巨大賃貸企業の賃貸用家を没収しよう」という急進的市民請願運動が去年繰り広げられるに至った。

 家賃凍結案を発議したベルリン市議会のカトリーン・ロンプシャー議員(左派党・ベルリン都市開発住宅部)は先月28日、ベルリン地域の民放のRBBとのインタビューで、「家賃暴騰はベルリンだけの問題ではなく、ドイツ全体の大都市の問題だ。私たちが正さなければならないという責任を感じている」と述べた。ベルリン議会の社民党院内総務のラエド・サレーも、最近開かれた社民党全党大会で、「今後ドイツの他の州もベルリンの家賃凍結政策を模倣するだろう」と見通した。ベルリン借家人協議会は、「今回の措置により『社会的家賃』政策に一歩近づいた」と意味を付与した。市場で需要・供給論理により決まる家賃を超え、住居福祉の観点の家賃政策が導入されたという意味と解釈される。

 賃貸事業者は強く反発している。ベルリンの賃貸業者団体の「ハウスウントグルント」は、「ベルリンの住宅市場の未来は絶望的だ」として、家賃凍結は根本的な解決方法にはならず弥縫策にすぎないと語った。ドイツ日刊紙の「南ドイツ新聞」は社説で「長期的には新規住宅建設と住宅投資が減少し、住宅難がより深刻になるだろう」と指摘した。

 今回の家賃凍結・上限法案は、ドイツ憲法裁判所に回付されて違憲かどうかが争われている。ベルリンのフンボルト大学のウルリッヒ・バイス名誉教授(憲法および建築法専攻)は、「5年凍結」は憲法裁判所で合憲として通過する可能性が高く、「上限線の20%制限」規制は違憲判決が出る可能性が高いと語った。

ベルリン/ハン・ジュヨン通信員、チョ・ゲワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/915620.html韓国語原文入力:2019-11-04 09:54
訳M.S

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