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[寄稿]「経済集中」宣言した金正恩、“北朝鮮式ドイモイ”を成功に導くか

登録:2019-02-26 08:58 修正:2019-02-26 17:41
クォン・ユル対外経済政策研究院(KIEP)主任研究委員寄稿 
ベトナム、市場経済導入で紆余曲折、部分改革に終わり弊害が累積 
1986年「ドイモイ」で全面開放、米国との関係正常化が突破口 
財政・金融改革のためIMF支援も、外資誘致に力を入れる 
北朝鮮の工業基盤はベトナムより優秀…先進市場への輸出基地の潜在力を持つ
ベトナム・ハノイの街を埋め尽くしたバイクと車=ハノイ/EPA 聯合ニュース

 ハノイで開催される第2回朝米首脳会談を控え、ベトナムの改革モデルへの関心が高まっている。ドイモイ(刷新)路線を採択したベトナムのように、北朝鮮も市場経済を導入して成功的な経済開発を推進できるという期待が大きいからだ。

 北朝鮮の経済開発は計画経済から市場経済への移行問題と重なり、非常に複雑で困難な政策的課題を抱えている。すでに2002年7月、実利社会主義を標榜し、北朝鮮は部分的な経済改革措置を推進している。金正恩(キム・ジョンウン)委員長も2012年に新しい経済管理改善措置に続き、さまざまな経済開発区政策を通じて地域開発と産業回生のための措置を施行した。昨年4月には労働党中央委員会で核開発を中止し、経済建設に総力を傾けるという新しい戦略路線を発表した。

ベトナムのGDP成長率と1人当たりのGDP推移//ハンギョレ新聞社

 ドイモイ路線を採択したベトナムも、全面的な改革開放以前にさまざまな試行錯誤を経た。1979年、「新経済政策」を通じて部分的改革措置を数年間推進したが、むしろ財政赤字が累増し、物価が急騰した。1985年には貨幣改革を断行したが、経済の不安定はさらに深刻化した。財政と金融が統合されている計画経済体制で導入された部分的な改革措置は、慢性的な財政赤字と経済的な不安定に帰結するほかないためだ。深刻な財政難と部分的な経済改革の弊害が累積している状況で、全面的かつ包括的な改革が伴わなければならないのはそのためだ。

 特に改革以前のベトナムは、中国とは異なり社会主義国家間の経済協力組織であるコメコン(COMECON)体制に対する経済依存度が高かったため、80年代半ばにペレストロイカの風が吹きつけ、旧ソ連の支援が事実上中断され、東欧諸国とも交易関係が断絶し、深刻な経済的ショックを受けた。結局、1986年にドイモイ路線を採択し、経済自由化と開放を掲げ、改革初期に外国人投資法を制定するなど、積極的な外資誘致に力を入れた。しかし、1989年にカンボジアからベトナム軍が撤退し、国際社会の経済制裁が解除されるまでは大きな成果がなかった。

 1991年、米国との関係正常化ロードマップが突破口となった。米国は1992年に臨時連絡代表部を設置し、部分的な制裁解除を通じて国際金融機関の支援を許可し、ベトナムは改革路線を支えるために1992年に憲法を改正し、本格的に経済改革に着手した。国営部門の主導的な役割を強調しながらも、民間部門と外資系企業に基づく多部門経済体制を樹立するため、市場経済を拡大し、経済分権化に重点を置いた。その後、2回の憲法修正を通じて「社会主義を志向する市場経済」を明示し(51条)、政治的に社会主義を維持しながら経済的には市場経済を重視する改革路線を堅持している。

 今回の第2回朝米首脳会談が成功裏に開催される場合、北朝鮮も社会主義市場経済体制のために積極的に改革措置を拡大していくだろう。しかし、市場メカニズムに基づく分権的資源配分体制に転換するには財政・金融改革と構造調整が避けられない。市場機能が弱かったベトナムは、政府主導で財政と金融を分離し、新しい制度の構築に重点を置いた。中国とは異なり、ベトナムは国際通貨基金(IMF)の支援の下、財政・金融改革を体系的に推進しながらマクロ経済の安定化を達成することができた。

第2回朝米首脳会談を2日後に控えた25日、ベトナムの首都ハノイのメトロポールホテルの前を観光客を乗せた人力車が通り過ぎている/聯合ニュース

 また、経済開発と産業化のためには企業改革と所有制改革のための段階的な措置が綿密に検討されなければならない。ベトナムは急速な民営化よりは、国有企業改革に優先順位を置いた。北朝鮮も、金融体制の改編と税制改革による財政基盤の強化が急務であり、競争的市場環境づくりを通じて、国有企業の改革が可能になるように、制度的環境を改善することが重要だ。

 改革の初期、ベトナムは農業人口が70%を占める典型的な農業国家として農業改革に大きな成果を上げた。しかし、国営企業が主導する製造業の基盤は脆弱だった。改革初期に1万2000社余りだったベトナムの国営企業は、2017年には2500社水準に構造調整が行われ、国内総生産(GDP)に占める比重も40%台から28%へと大幅に低下した。一方、外資企業の国内総生産に占める割合は20%に過ぎないが、ベトナムの輸出の70%以上を担当している。ベトナムの成長エンジンは、外資誘致に基づく輸出拡大といえる。

クォン・ユル対外経済政策研究院主任研究委員//ハンギョレ新聞社

 ベトナムの場合、この30年間ドイモイ路線を推進したにもかかわらず、依然として製造業の比重は国内総生産の17%水準に過ぎない。これに比べ、北朝鮮は工業基盤がベトナムより優秀で、製造業の割合も20%水準を超えているため、初期条件はもっと有利だ。北朝鮮もベトナムのように社会主義体制を維持しながらも、市場経済を積極的に拡大していけば、今後の北朝鮮の改革・開放の進路と経済開発の環境は肯定的だ。ベトナムや中国はいずれも、低賃金労働力を活用した先進市場の迂回輸出基地として浮上し、順調に大規模な外資誘致や開発財源の調達に成功した。移行の速度や順序は異なるだろうが、北朝鮮の安定した成長基盤のためには、国際社会の支援と協力が必要だ。北朝鮮が社会主義市場経済を全面的に受け入れなくても、金正恩委員長が今回のハノイ訪問を機に、ベトナム式の改革モデルを北朝鮮経済の進路と今後の政策にどのように適用するのか注目される。

クォン・ユル対外経済政策研究院主任研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/globaleconomy/883569.html韓国語原文入力:2019-02-25 22:36
訳M.C

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