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[インタビュー]「日本も極右の“難民嫌悪”表現が障害物…韓国を鋭意注視」

日本難民支援協会の石井宏明理事 

1999年、難民を支援する非営利団体を共同設立 
「難民問題は国際的イシュー、韓国や日本も例外ではない 
日本の難民制度は韓国と類似…市民団体の交流増やしたい」
16日午後、出張で韓国を訪れた日本難民支援協会(JAR)の石井宏明理事(58)=ファン・クムビ記者//ハンギョレ新聞社

 今月17日、韓国政府は済州(チェジュ)に集団で入島し難民申請をしたイエメン人339人に対して人道的滞留許可を決めた。ただの一人も難民として認定しなかった。二日後の19日、ソウル出入国庁は宗教的迫害のために韓国に難民申請したイラン人中学生に対しては難民認定決定を下した。難民受け入れ問題を契機に、さまざまな政治的・社会的葛藤を経験した多くの欧州国家のように、韓国にも難民問題はいつのまにか日常に深く入り込んでいる。

 こうした状況は同じ東アジアの国家である日本も同じだ。隣国日本では、特に済州イエメン難民など韓国の難民認定状況を注視している。ハンギョレが出張で韓国を訪問した日本難民支援協会(JAR・以下、難民協会)の石井宏明理事に16日午後、ソウルのあるカフェで会ったのもそのためだ。

 難民協会は、日本で難民を支援する最大規模の市民団体だ。石井理事は「難民を包容することは今後いかなる国家も回避できない国際的イシュー」だとして「難民と関連した法的制度が日本と似ている韓国の市民団体と持続的に交流する予定」と話した。

 石井理事は、1999年に難民協会を共同で設立した。これより4年前の1995年から国際アムネスティで難民支援担当として仕事をしていたが、石井理事は当時難民イシューを専門的に担当する市民団体の必要性を切実に感じたという。「アムネスティは、ほとんどすべての人権イシューを担当するデパートのような団体でした。難民支援事業も、主に難民の地位認定のための法的支援に限定されていました。しかし、難民はほとんどすべての基本権が剥奪された人々であり、彼らが必要としているのは法的支援だけでなく、生計・医療などの基本権を支援することなのです」

 同じ問題意識を共有した10人の活動家が集まって設立した協会は、20年が過ぎた今、30人の常勤者が仕事をする比較的規模の大きい非営利団体になった。政府の支援金は、難民のための医療支援を除いては受けないということが原則であり、ほとんど個人の支援金で難民のための住居支援、現地適応支援事業などを進めている。

 難民問題に限定すれば、日本の環境は韓国よりはるかに貧弱だ。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、難民認定率が韓国(4.1%)より低い国は日本とイスラエルのみだ。2018年2月、日本の法務省発表によれば、2017年基準で日本は難民申請者1万9623人のうち20人だけを難民として認定した。難民認定率は0.2%だ。「2020年東京五輪が近づいて、就職・学業ビザなどのビザは一層簡単に受けられます。しかし難民認定率は依然として国際的基準よりはるかに低いままです。難民協会も15年前から難民法の制定を推進しているものの、相変らず停滞状態です」

 石井理事は、2011年の韓国の難民法制定は日本の市民団体にとっても非常に鼓舞的なことだったと話した。「カナダのような国家でも難民に関連した法が一層厳格になっています。韓国の難民法は、法それ自体だけを見れば、欧州よりましと言えるほどに国際基準にさらに合致する部分が多くあります。もちろん法は、現実に実行されることとは別の問題ですけど」

22日、日本の難民支援協会のホームページ。難民支援と関連してさまざまな活動の様子が含まれている=難民支援協会ホームページより//ハンギョレ新聞社

 難民に対する認識は、その国の歴史的・社会的脈絡と軌を一にする。石井理事は、右派政権の長期執権と官僚的社会ムード、カルテルのような政治と言論の癒着などにより、日本は難民支援のような進歩的な活動をするには非常に劣悪な環境だと伝えた。難民・移住労働者に対する差別も社会問題になっている。「極右派はかなり以前から外国人に対する嫌悪の感情を表出してきたが、特に若年層で『外国人が私たちの働き口を奪っている』という感情が少しずつ強まっていることは警戒しなければならない部分です」

 日本語で“難民”を漢字のままに解釈すれば「困難に出会った人」になる。だから「政治・経済・宗教的理由で迫害を受け、その国を離れた人」という難民の本来の定義より包括的な概念として受けとめられる。石井理事は「用語の特性上“難民”が本来の定義よりは“困難な人”と受けとめられる。基本的に“困難に出会った人”は助けるべきという認識のために、日本ではむしろ難民に対する偏見が少なくなっている面もあるようだ」と指摘した。

難民の受け入れをめぐる賛反集会が同時に開かれた6月30日午後、ソウル市鍾路区の東和免税店付近の派出所前で市民が「難民受け入れ集会」を開き、済州島の難民を受け入れることと政府の対策準備を求めている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 日本が直面した“人口の壁”もまた難民イシューと切り離すことのできない問題だ。「日本では外国人の流入より人口の減少で村が消えることに対する恐怖の方が大きいと言えます。社会の維持のために難民を含めて外国人に対する包容政策が必要だという認識でしょう」

 石井理事は「ただし、極右派の嫌悪表現などにより多くの人がそうした意見の表現をためらっているのが現実」だとし、「難民に対するきちんとした定義を伝え、彼らを助けなければならないという声を上げられる環境を作るのは、市民団体が必ずしなければならないこと」と強調した。

 「300人を超えるイエメン難民が済州島を通じて入国したという韓国のニュースを日本でも注意深く聞きました。小さな島に今までにない大規模な難民が入国するならば、誰もが驚くのは当然でしょう。だが、難民を包容することは、いかなる国家も回避してはならない人権の問題です。韓国も日本も難民を包容して、彼らと共に生きていける社会になることを願います」。石井理事は最後にこう願った。

ファン・クムビ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/866790.html韓国語原文入力:2018-10-22 14:31
訳J.S

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