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[記者手帳]映画『インタビュー』騒動、ハリウッド「安保商業主義」を助けた過剰対応

登録:2014-12-26 05:54 修正:2014-12-26 06:49
映画『インタビュー』の一場面

 ワシントン市内にある「ウエストエンドシネマ」劇場が『インタビュー』を上映するというので、24日午後行ってみた。この日の朝になってようやく上映決定が知らされたにもかかわらず、すでに25日の初回分と2回分は完売だった。オンラインで予約を取っているのか、チケット売り場は閑散としていたが、テレビカメラ2台がチケットを買う人々を取材していた。ある人はニュースで騒ぎになっているから気になって、ある人は米国の表現の自由を抑圧することは我慢ならないから観に来たと話した。 「大当たり」になりそうな兆しだ。

 24日昼、オンラインに公開されたこの映画を観ると、ハリウッドが長い間使い古した「安保商業主義」の典型だった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党第1書記は核兵器を大陸間弾道ミサイルに乗せてアメリカ人数百万人を殺そうとする悪役として描かれ、彼を目いっぱい面白おかしく仕立て上げた上に、最終的には米国中央情報局(CIA)の指令を受け暗殺まで実行するアメリカ人のトークショー製作陣は自由の闘士だった。ハリウッドの大手映画会社が現職の指導者の暗殺場面まで描くことはほとんど前例がない。『ニューヨークタイムズ』は、映画業界の言葉を借りて「ソニー・ピクチャーズは、この映画を作る時から敏感で新しい領域を歩いていることを知っていた」とし「二人の監督は境界線を押し広げようとしたし、映画会社は彼らのライバル映画会社行きを止めたいがために、部分的にそれを許した」と指摘した。映画は、金第1書記を現代版のヒトラーに例え、彼が下着姿の女性たちと酒パーティーを開いたり、部下が死ぬと彼を返してくれと神に訴えたりする場面も入れた。また、北朝鮮はもちろん、全世界に生放送されるインタビュー途中で父親の話になると金第1書記が子供のように泣く場面や、結局怒りを抑えきれず記者を現場で銃殺する場面まで登場する。インタビューを見る北朝鮮の人民は「彼は神ではなかった」と動揺する。クライマックスは金第1書記が乗ったヘリコプターがタンクの砲弾を受け、炎に包まれ消える。

 北朝鮮側が反発するのに十分な内容だ。しかし、米国が主張するように北朝鮮がハッキングを行ったのが事実ならば、これまた行き過ぎた行為だ。この映画は、試写会を見た批評家たちから平均以下の評価を受けた。 ニューヨークタイムズ映画担当記者は、ハッキング事件が浮き彫りになる前は批評を書くつもりなんてなかったと話した。この程度なら、開封後2〜3週間で大衆から忘れ去られるというのが一般的な評価だった。結果的にハッキングが映画会社を助けた格好になった。

 ソニーピクチャーズは当初ハッキングに屈服し上映を取り消したが、米国内の事業基盤が揺らぐほどの批判にさらされると、再上映に踏み切った。なのに、今さら表現の自由の守護者のような顔をするのも見苦しい。

 米連邦捜査局(FBI)は北朝鮮をハッキング責任者と目したが、具体的な証拠は出せずにいる。証拠が「敏感なソース(情報源)と方法」によるものだという理由からだ。 米国家安保局(NSA)による盗聴装置だろうと推測されるだけだ。しかし、米国が「比例的な対応」をするには、具体的な証拠を開示しなければ説得力を得られないだろう。

 映画制作からハッキング、上映キャンセルと米国大統領の登場、それから再上映の決定まで、一遍の喜劇を見ているようだ。今回の事件で北朝鮮と米国との関係改善の道はより遠くなった。北朝鮮を崩壊させようとする人々にとっては「クリスマスプレゼント」かもしれないが、朝鮮半島に一日でも早く平和が訪れることを切望する人々にとっては、悲しくも怒りが込み上げる出来事である。

ワシントン/パク・ヒョン特派員

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2014/12/25 19:54

https://www.hani.co.kr/arti/international/america/670806.html  訳H.J

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