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[現地ルポ]巨大化するグローバル衣料産業の底辺にバングラデシュがある

登録:2014-09-04 21:29 修正:2014-09-06 07:51
GAP、ZARA、ユニクロなどを生産
グローバル衣料工場になったバングラデシュ
衣料産業での食物連鎖の“底辺”
バングラデシュ第二の都市チッタゴンにある輸出加工工団(CEPZ)前で、2010年12月12日、工団の労働者たちが最低賃金の引き上げ支給案などに反発してデモを行なった。この日のデモで、ヨンウォン貿易の労働者や通行人たちが警察と軍の銃に撃たれて死亡者が出た。チッタゴン/AFP連合ニュース

先進国の資本は生産費を下げるため
低賃金と劣悪な環境を放置

 全世界の衣料市場の大きさは1兆7000億ドルに達する。経済規模で世界15位の韓国が、1年間の経済活動で新たに生産した付加価値の総額(GDP・1兆1300億ドル)よりはるかに上回る。全世界に住む70億を超える人々がすべて服を着るから可能となる数値だ。

 しかし、その服を作る仕事は誰にでもできるわけではない。主に賃金水準が低く貧しい国の労働者に任せられる仕事だ。第2次世界大戦直後には日本が、1970~80年代には韓国が、90年代以降は中国が、アジアの主要な衣料生産基地だった。そして2000年代以降は、東南アジアが世界で服を最も多く生産する地域になった。

 これらの国は、衣料産業食物連鎖の底辺にある。食物連鎖の頂点には、私たちにお馴染みのGAP(ギャップ)、ZARA(ザラ)、H&M、ユニクロ、ノースフェイスなど、先進国を拠点とするグローバルブランドが位置している。開発途上国は、生産費を下げようとする先進国資本の利害を充足させられる低い賃金と劣悪な労働環境を提供する。こうして、貧しい国で安く作られた服は、有名ブランドを付けられ、金持ちの国で高く売られる。この過程で、1ドルで作られた服に3ドル上乗せして売るという、いわゆる“1対3”の法則が通用する。生産基地の賃金が上がりそうだと思えば、もっと安く服を作れる他国へ移っていく。このため、工場を移転するという脅しは、現地の労働権と賃金上昇を抑える最大の武器になることが多い。

ノースフェイスのパディングジャンパーを着た高校生たちが横断歩道で信号を待っている。キム・チョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 世界最貧国であるバングラデシュは、グローバル衣料企業に世界で最も低い水準の賃金と外国資本に友好的な経営環境を提供している。このためバングラデシュは、急速に世界第二の巨大衣料輸出基地に成長した。さらに多くのグローバル衣料企業がバングラデシュに集まりつつある。バングラデシュで大型縫製工場の建物崩壊や火災で数千人が死亡しても、このような流れは全くひるまない。

グローバルコンサルティング会社であるマッケンジーが2011年に先進国の衣料購入担当者を対象に行なったアンケート調査の結果を見れば、今後5年以内に中国に取って代わる最も有力な国としてバングラデシュが選ばれている。バングラデシュがベトナム、インドネシア、カンボジアなどに比べても低廉な製造原価と労働力および生産施設確保の面で、最も優れているという評価を受けた。

 韓国企業も、最初は主に中国に進出したが、時間が経つにつれバングラデシュ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジアなどへと移りつつある。これら後進国に工場を置き、主に先進国ブランドの下請けとして衣料を生産している。世界の衣料産業食物連鎖の中間段階にある韓国企業は、さらに安値でグローバルブランドに納品しなければ生き残れない構造だ。

 大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が昨年、バングラデシュに投資した韓国の衣料企業20社を対象に行なった調査の結果をみると、バングラデシュ衣料産業の中長期的な見通しについて、75%が「現状維持あるいは一層強化される」と見通した。これに合わせて企業はバングラデシュに投資を維持、あるいはさらに増やすことになるだろう。韓国の衣料企業にとってバングラデシュは終点の“停留所”のような所だ。ベトナムで衣料を生産してグローバルブランドに納品しているある韓国企業の幹部は「製品価格の20%が原価だとすれば、そのうち人件費が30%を超えたら工場を移さなければならない」として「今ほとんど30%に迫っていて、バングラデシュなどへ移すことを念頭に置いて市場調査をしている」と話した。

ユニクロの売場の様子

 国外に進出した韓国企業の現地での労働権侵害実態に対する監視活動も本格化している。公益及び人権法関連団体である「共感」「希望を作る法」「アピール」の3か所と民主労総、国際民主連帯などで構成された「企業と人権ネットワーク」は、8月7日~18日の約10日間、バングラデシュにあるヨンウォン貿易など韓国企業で働く労働者の労働権侵害の実態などについて調査を行なった。この団体は、チッタゴンの外郭にある韓国輸出加工工団(KEPZ)で働いていて今年の1 月に亡くなったミシン補助士パビン・アクタの遺族たちとも面談した。さらに、バングラデシュだけでなく、ベトナムとフィリピンなどにある韓国企業の労働権侵害の実態を調査し、近くその結果を発表する予定だ。

リュ・イグン、ユ・シンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/652555.html 韓国語原文入力:2014/08/25 17:00
訳A.K(2329字)

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