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[ハンギョレ21 2011.09.26 第878号] ザイニチ、韓国に投票する(5031字)

[特集2]来年初めて付与される在外選挙投票権にざわつく在日同胞民心…‘総連介入説’流す民団と、怒る総連の後に積極的な広報に出た韓統連


□キム・ナムイル


←日本、大阪、鶴橋駅付近にある在日同胞居住地域の電信柱に貼られた在外選挙広報ポスター。在日韓国民主統一連合(韓統連)が貼ったものだ。現在、韓国の裁判所では韓統連を反国家団体と規定した過去の宣告に対する再審が進行中だ。 ハンギョレ21 チョン・ヨンイル


 "意図的に特定人物を推す動きもあるようだが、私は人物本位で選びたい。" (シン・ジョンウィ・65・東京) "(韓国に)自分の意見を発信できる貴重な機会だ。私たちの存在意義を示すためにも本国のことをもっと知らなければならない。" (イ・ヤンミ・32・東京) "私の一票がどの程度の影響があるかは分からないが必ず投票する。 日本では一度も投票をしたことがないので期待している。" (チャン・トヒョン・42・東京) "韓国人として一票の権利を行使できることがとてもうれしい。私にはとても重い一票だ。 韓国が良くなるよう願って投票する。"(チョ・ドジ・71・大阪) "5年に一度実施する(韓国の)大統領選挙開票速報を常に注目していた。いつか私も私の手で投票することができれば良いと思っていた。" (パク・ヒョジャ・49・東京) "初めてする選挙でありとても期待している。多くの人々が投票を体験することになれば(日本の)地方参政権運動にも弾みがつくと考える。"(キム・ジンヒョ・47・東京)

47万人余りに投票権


←韓統連が在日同胞たちに在外選挙投票権を広報するために作った案内文と質問用紙(下側)。在日本大韓民国民団(民団)が発行する<民団新聞>は北韓と関連した勢力が‘親北韓政権樹立’のために在外選挙に介入しようとしているという記事を載せた。ハンギョレ21 チョン・ヨンイル


日本に帰化していないザイニチ(在日同胞)たちには参政権がない。日本民主党執権後の2009年、永住外国人地方参政権付与が本格的に推進されたが、依然として答は出ていない。数十年間、地方参政権運動をしてきた在日同胞たちに韓国から先に飛んできた投票権付与の知らせは感慨が格別だ。2012年4月11日に行われる第19代総選挙は在外国民にも投票権が与えられる最初の選挙だ。日本での‘暮らし’より韓国人だという‘血’に重きを置いて生きてきたこれらの人々は第19代総選挙に続き6ヶ月後の12月19日の第18代大統領選挙にも一票を行使できる。こういう彼らが凡そ47万人余りだ。


在日本大韓民国民団(民団)インターネット ホームページには生まれて初めての国政投票に対する期待を込めたいくつかの韓国国籍在日同胞たちの意見が上がってきている。参加自体に意味があるという人もいるが、制限された情報であっても人物や政策を語りながらとても真剣に韓国政治を覗き見ている人々も多い。気ぜわしく揺れ動く選挙状況に気を取られる韓国とは違い、日本では祭りのように非常に楽しい選挙戦が繰り広げられることもある。


こういう状況で韓国の一部保守勢力と民団中央では、在日本朝鮮人総連合会(総連)等いわゆる‘反国家団体’に所属した人々の組織的選挙介入が憂慮されるとして、すでに理念的反駁状況が現れている。在日同胞社会の悩みをどのように選挙に反映するかは後まわしにされた感じだ。すでに民団-総連に理念的に分裂した在日同胞社会が一度も経験したことのない選挙戦を経て、また別の亀裂に直面しかねないという話だ。


“ひとりでも多く選挙人登録をして、ひとりでも多く投票するようにしなければならない。選挙権を行使するに相応しい在外国民としての自覚を育て、在日同胞社会に政治的葛藤をもたらさず健全な選挙がなさうる土壌を培養しなければならない。”去る8月15日、民団中央本部のチョン・ジン団長は光復節の祝辞で在外選挙参加運動を行うとしてこのように話した。それと共に民団の‘責務’として‘不純な政治工作の排除’を取り上げた。「韓国には当然 与党・野党があり、多様な理念と政策を掲げる政党・政治家が存在する。それだけでなく北韓独裁に追従する勢力も在日従北勢力と連係を強化しており、侮りがたい存在になっている。それぞれの境遇で在日有権者に対する活動が明らかに強化されるだろうし、在日社会に政治的党派性が生じ新たな火種を作り出すおそれもある。”チョン団長の話はこのように続く。 「私たちが堅持してきた不偏不党という、あくまでも大韓民国の正統性と憲法秩序を遵守する範疇だけで適用される原則であり、北韓独裁とその追従勢力を断じて容認しない。分断の伝統とも言えるこういう組織的立場は在外国民選挙権を行使する時代には一層徹底的にしなければならない。”


投票権があるのか、よく分からない


部分部分を聞いてみれば正しいように聞こえるが、まとめてみれば在外選挙参加運動自体を理念的基盤に置いているという印象を消し難い。これに先立ち民団で週刊発行する<民団新聞>は「親北韓政権樹立に照準…北韓、韓国2大選挙へ介入工作」等の記事を載せた。この頃、韓国でも保守新聞を中心に「総連‘来年 大統領選挙-総選挙投票’韓国国籍取得の動き」等の記事を載せた。民団の名を借りて書いた推測性記事は、在日韓国民主統一連合(韓統連)と北韓、総連が関連づけられており、これらが投票権を得るために組織的に国籍取得をしているという内容だった。


“投票権があるのかどうか、よく分からない。分かってもこれと言った関心がない。 関心があっても(投票のための)パスポートがない人が多い。”在外選挙を控えた現在の在日同胞社会の断面は‘反国家団体’という着せられた汚名を未だ脱げない韓統連側から話を聞くことができた。去る8月23日、韓統連副事務総長兼国際局長のパク・ナミン氏に日本、東京、秋葉原にある韓統連事務室で会った。韓統連は在外選挙を広報するインターネット ホームページと案内文に続き、質問用紙まで作るなど民団よりさらに活発な活動をしている。パク局長は「日本に散らばっている地方本部8ヶ所を中心に宣伝物の配布、アンケート調査、戸別訪問などをしている」として「だが、戸別訪問をすれば‘韓国の国政や政治、内部問題には関心がない’という人が多い」と話した。在日同胞が貼りついて暮らしているのが海の彼方の韓国ではない日本社会であるだけに‘今-ここで’の生活により多くの関心を持っているという話だ。パク局長は「ただし、朝鮮半島の平和問題に対しては直・間接的に関係があるので関心を示すケースがある」と語った。


韓統連が作った質問用紙はこういう内容を含んでいる。△在日韓国人も投票権があるということを知っているか△投票するつもりがあるか△総選挙で投票する政党は△大統領選挙で支持する政党・人物は△選挙を通じてどの分野の政策が実現されることを願うか(在日同胞権益、平和・統一、韓-日関係、その他) △韓国政府は選挙広報をもっとしなければなければならないと考えるかなどだ。パク局長は“投票権があるという事実自体を知らない在日同胞がとても多い。去る1月の韓統連代議員大会で2012年を‘政治決戦の年’と見て、投票権広報活動をしようと決めた」として「私たちが反国家団体に規定されているため特定政党支持・反対は誤解を呼び起こしかねず、選挙広報活動に優先的に力を注いでいる」とした。その一方で「来年の選挙で民主・民生・平和を破綻させた責任を問い、政権交替を実現しなければならない」という意は明確にした。彼は「選挙が近づけば組織が大きいだけに民団側が保守政党などに投票しろと組織的に動くだろう」と見通した。


総連側は在外選挙関連の質問に応じなかった。「私たちはそのような質問には最初から返事をしない方が良さそうだ。どんな話をしても北韓が組織的に韓国の選挙に介入しようとしていると言われるのではないか。」ある在日同胞は「総連側は韓国国籍者自体が多くない。もちろん個人的に投票する人は一部いるだろうが、組織的に選挙に介入するということはおかしな話に聞こえる」と話した。


民団にも総連にも属していない大阪コリアNGOセンターのクァク・ジンウン代表理事は「どの政党を支持してという政治活動次元ではなく、権利次元で投票権を積極的に行使しなければならない」と語った。


総連介入の可能性は低い


中央選挙管理委員会、外交通商部、法務部、最高検察庁などは去る9月8日、在外選挙関係機関協議会を開き、総連系韓国国籍者などの在外選挙権制限方案を議論した。外交通商部は2000年から今年7月までに韓国国籍を取得した在日同胞が5万人余りだと説明した。外交部関係者は「それでもそれらの皆が総連系という話ではない。 総連所属であったか否かを確認できる方法はない」とした。


中央選管委側は中立的に進行されなければならない選挙管理業務が政治的色彩を帯びることは不適当だという反応だ。中央選管委関係者は「政界や言論などが心配する趣旨は分かるが、それでは北韓から脱北し韓国国籍を得た人と総連系韓国国籍取得者の公平性問題はどのようにするか」と反問した。中央選管委側は「反国家団体・利敵団体所属員の選挙権制限も司法的に判断がなされて初めて可能だ。私たちの国民だというのに選挙参加を阻む方法は事実上ない。憲法的にもそぐわない」とした。9月8日の会議は結局、特別な所得なしに終わった。9月14日にはハンナラ党ユン・サンヒョン議員が「海外で北韓を支持する勢力が国内選挙に介入し民意がわい曲されかねない」として、公職選挙法改正案を国会に提出すると言ったが具体的方案は全く出せなかった。検察関係者は「北韓が選挙局面に積極的に介入するという情報機関の諜報がある」として「だが、総連も凝集力を持って動く人は限定されており、総連内でも‘片方’にだけ投票がなされるかは分からない」と否定的に見た。 この関係者は「過去の軍事独裁時期に日本留学生などが韓国でスパイに追いやられ厳しい体験ををしたせいで、韓国政治に介入しないとする在日同胞らの情緒が強い」としつつも「総連介入の可能性が低いだろうが‘汚染された票’が一票でも入ってくれば選挙直後に公正性是非など韓国社会に消耗的葛藤がもたらされる恐れがある」とした。彼は「初めての在外選挙だ。ひとまず一度選挙を行ってみるしかない」とした。


民団であれ韓統連であれ、肯定的であれ理念的であれ、在日同胞社会で在外選挙が少しずつイシューになってはいるものの投票率に直ちにつながるには難しい問題が幾つもある。在米同胞社会は1・5~2世が中心であり、依然として韓国とも身近に接している。反面、在日同胞社会は3世中心に移っているが、3世ということだけでも韓国との距離感を大きく感じるということだ。その上、韓国政府の在日同胞政策も障害物だ。クァク・ジンウン代表理事は「1990年代初期までは在日同胞政策ということが北韓と総連に対抗するための政策だった。率直に言って韓国政府が在日同胞に何をしてくれたのか分からない」と話した。3・4世の若い在日同胞が訪ねようとしない民団の影響力にも懐疑的視線が多いという。


韓日両者が参加を模索してこそ


在日同胞たちの在外選挙投票権行使を憂慮する人々もいる。日本で経験した徹底した差別の記憶と日本国内の右翼保守勢力の蠢動のためだ。‘日本で暮らし地方参政権まで要求しているが、結局 お前たちは韓国人だ’という認識を日本社会に植え付ける恐れがあるということだ。これに対してクァク代表理事は「韓国と日本ぼ両側に参加する開かれたネットワークが必要だ」と診断した。根は韓半島に置くという意味で在外選挙投票権を行使しながらも、日本では地方参政権を模索する道を探さなければならないということだ。


東京・大阪(日本)=キム・ナムイル記者 namfic@hani.co.kr


原文: http://h21.hani.co.kr/arti/special/special_general/30452.html 訳J.S