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[ハンギョレ21 2011.07.25 第870号] 性暴行事件法廷に召還されたジーンズ

[表紙の話] ジーンズ‘脱がせることの臨界点’を巡り交錯した性犯罪判決…
女性の‘行動’を問い詰める性差別的観点は簡単には変わらない(3579字)

□キム・ナムイル

←ジーンズは着ている女性の'協力'なしには強制的に脱がせるのは容易でないという判決がしばしば出る。拳で殴り凶器で威嚇し殺すと脅迫して脱がせるジーンズはどうだというのか。 ハンギョレ キム・ミョンジン

朝鮮時代の女性たちのチョゴリも流行に乗った。16世紀に腰の線を覆うのに十分な長さ(65cm前後)であったチョゴリは、朝鮮末期に向かうほど短くなった。19世紀になると28cm程度に大幅に短くなった。‘於于同(オウドン)ファッション’だ。さらに長さ14.5cmの超ミニ チョゴリまで登場した。 今風の言葉で言えば‘上衣失踪’だ。胸を隠すにも足りなかった。エロチックな露出ファッションは当初、妓女らのトレンドであった。 通念上‘尻軽女’(Slut・スラット)たちの服飾だった超ミニ チョゴリが静粛な両班家の女性たちにまで広まった。社会的論議になり、短いことに我慢のならない男たちが出てきた。 英・正祖年間の実学者 イ・ドンム文集<青莊館全書>でこういう流行が 「妓女の愛嬌に震える姿を世俗の男たちが自分の妻妾に見習わせて生じた」と指摘した。 韓服デザイナー キム・ヘスン氏が最近出した<美しい私たちのチョゴリ>にこういう内容がよく整理されている。

イタリア女性のジーンズ デモ

両班(ヤンバン)が妓女をまねてだぶだぶの脱ぎやすいチョゴリが短くなりさえしたために身分制儒教社会が耐えられる臨界値に触れたとしよう。王候将相 老若男女の別なくジーンズを着る21世紀にもジーンズを巡る新しい臨界点が生じた。ジーンズと女性下半身の間の摩擦係数を考慮する時、ジーンズを強制的に脱がすための男性の腕力がどれほど必要か、その‘脱がせることの臨界点’だ。

1999年2月10日、イタリア大法院が脱がせることの臨界点を判例として残す画期的宣告をした。運転練習教師から性暴行にあったというローザさん事件で、イタリア大法院は「ジーンズはそれを着た女性の積極的な協力なしいは脱がせることはできない」として、男性に無罪を宣告した。下級審で懲役2年10ヶ月が宣告されたこの男性は、女性と合意の下に性関係を持ったと主張したが、大法院は 「ジーンズは着た女性が全力を尽くして抵抗する場合、強制的に脱がせることが不可能だ」と判断したのだ。 性犯罪の対象になる場合‘全力を尽くして抵抗する義務’が女性に賦課されたわけだ。 中世的判決に女性団体が大騒ぎになった。 「ジーンズが何か貞操帯なのか」「大法院はジーンズについているジッパーの存在を考えよ」「ジーンズを着た女でも相手が拳や凶器で威嚇して服を脱がせることができる」という抗議が相次いだ。イタリアの女性議員はジーンズを着て議事堂前でデモを行った。

ジーンズが何かいが栗にでもなっているように‘脱がすのが容易でない’という判決は韓国でも出てきた。1990年代初め、ソウル地方裁判所のある判事はジーンズを着た女性をポニー乗用車内で性暴行した容疑で起訴された男性に無罪を宣告した。この判事は自身の妻にジーンズを履かせポニー乗用車で再演した。結局、女性が反抗する状況では裂くことのできないジーンズを下げ、性暴行することは難しいと判断した。

2008年ソウル高裁は強姦致傷容疑で拘束起訴され1審で懲役7年が宣告された男性の控訴審で1審判決を完全に覆し無罪を宣告した。9種に及ぶ性暴行情況に対し「強姦致傷の犯行を犯したのではないかという強い疑いは持てる」と暗示した裁判所は、まもなく30種類余りの反対論理を提示した。この中の一つが女性が着用していたジーンズのズボン幅だった。裁判所は「当時、被害者は下に行くほど幅が狭くなり脱がしにくいジーンズを着用しており、モーテルの床にジーンズとパンティがそろってきちんと丸めた状態で置かれていた点」を挙げた。脱がせにくいジーンズがパンティとともに‘きちんと’巻かれていた点から見て、強制的に脱がせたものではなく自ら脱いだという話だ。‘きちんと’という主観的副詞は論外としてもズボンの上にパンツを履くスーパーマンでない以上は、自らズボンとパンティを同時に脱いで丸めておく人はいないという‘合理的疑い’は除外された。

女性を自殺に追い込んだ2次加害

裁判所は「刑事裁判で有罪の認定は裁判官にとって合理的疑いを持つ余地がないほど確信を持たせるに足る証明力を持った証拠によらなければならない」という判例を挙げ、男性に無罪を宣告した。この判決で該当女性は性暴行でもないのに上衣だけを着て、6階モーテルの窓から飛び降り下半身マヒなど全治20週の‘自害行為’をした‘間抜けな’女になった。 幸い最高裁は「ズボンとパンツが別々に整頓されておらず一緒にぐるぐる丸めておかれた状態であった点に照らし被害者が自発的に服を脱いだのではなく被告人が強制的に被害者の下衣を一度に脱がせたと推測もできる」として再び有罪と判断した。

脱がすことが難しいジーンズが被害女性に有利に解釈されるケースもある。2008年仁川地方裁判所は「被害女性が着用していたジーンズはからだにくっつくものであるため酒に酔った状態で一人で脱ぐことは難しかった」という被害者側陳述を「推測に過ぎない」として、加害男性に一部だけ有罪を認める有利な結論を下した。 反面、ソウル高裁はこの事件の控訴審で「被害者はからだに過度にきついズボンを履いていたが、被告人の家で目覚めた時、ズボンは玄関の前に完全に裏返った状態であった。 …ズボンが脱げた形状も一般的に人が自ら脱いだ場合とは異なり全体が裏返った状態であった点」等を挙げ全て有罪と認定した。

性器の挿入を基準とする強姦罪は被害女性がどれほど‘無力化’されたかが重要な判断根拠となる。このために強姦罪が適用された裁判では暴行の強度と経緯、被害者との関係、被害者の服装、反抗強度、服を脱がせる過程がどのようだったかを問い詰めることになる。 ジーンズが性暴行裁判でしばしば登場する理由がここにある。 だが、裁判所の男性的・保守的見解も見過ごしにくい。

去る6月、性暴行にあった女性が裁判途中に自ら命を絶った。この女性は亡くなる二日前、ソウル中央地裁で開かれた性暴行事件公判に被害者資格で出席し証言をした。加害男性の弁護人はこの女性が以前にも該当男性に何回も会っていたし、性関係が行われた場所も男性が暮らす考試院だった点を挙げ、一方的性暴行とは見られないという側で弁論した。 裁判所も弁護人側資料などを土台に過去にカラオケ コンパニオンとして働いた前歴、性経験の有無などを女性に問い質した。 女性は「あまりに恥かしく悔しい」という遺書を残した。 ある女性検事は「カラオケ コンパニオン経歴、性経験があるということは性暴行にあったことと全く関連がない。 そのような経験があれば性暴行にあってもかまわないという意味か? ‘私はお前に偏見を持っている’という質問でしかない」と指摘した。 裁判所は女性の死後になされた宣告で、加害男性に懲役3年を宣告し「この事件を契機に性暴行被害者に対する証拠調査過程で2次的精神的衝撃を受けないよう最善を尽くす」と明らかにした。

国民参加裁判の時も偏見が作用する場合が多い

性犯罪裁判で性暴行という実体的真実と関連のない女性の‘行動’を問い詰めるのは古くからの慣行だ。「ドアを開けたまま一人で寝て」「服を少し脱いだまま寝て」「被害者は酒を飲んで被告人について行き」「寝巻姿でドアを開けてやり」「夜明けに一人で停留場に立っていて」等、日常では誰でもしうることが性犯罪では問題になる(パク・ソンミ、<女性学的観点からみた強姦犯罪の裁判過程>)。

一般市民が陪審員として参加する国民参加裁判でも性暴行事件がたびたび扱われる。 ある部長判事は「加害者側弁護人が実体的真実と関係のない被害女性の行動を問題にし‘美人局’に追い込む場合がある。 訓練されていない陪審員は‘それならそうだろう。女が口実を与えたのだろう’としてむしろ加害者に同情する人々が出てきたりもする」と話した。 ひょっとして陪審員になったら各自心をいましめてかからなければならない。

キム・ナムイル記者 namfic@hani.co.kr

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/cover/cover_general/30070.html 訳J.S