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[ハンギョレ21 2011.05.16第860号] 美味しい店のための怪しい弁明

[報道その後] 859号‘TV,不良 美味しい店を探せ!’報道以後(5023字)
ニセ物美味しい店放送慣行を公開したキム・ジェファン監督と放送・製作会社の攻防起きる

□ナム・ウンジュ

‘協賛’と書いて‘広告’と読む。放送会社は食堂を広報する目的で金を受け取ったことはないと言うが、食堂に渡す提案書は番組価格と露出程度まであらかじめ定めてあった。キム・ジェファン監督が<ハンギョレ21>に送ってきた広告代理店らの放送出演提案書と作家が作成した美味しい店のお客さんたちの称賛が込められた撮影案。

美味しい店紹介番組の裏面を暴いた映画<ツルーマッショー>は放送関係者の慣行を変えられるだろうか。封切り前から放送会社と製作会社の攻防が熱い。<ハンギョレ21>は先週RED企画‘TV,不良 美味しい店を探せ!’報道が出た後、放送会社と規制・監督機関の見解を尋ねた。

"お金は受け取っていない、協賛を受けただけ"

<ツルーマッショー>を作ったキム・ジェファン監督は<ハンギョレ21>に広告代理店から受け取った提案書と外注製作社から受け取った撮影構成案を追加公開した。1千万ウォン出せばSBS <生活経済> <モーニングワイド> <生放送トゥデイ>等のニュース・時事教養プログラムに出演できるという内容だ。別の広告代理店は文化放送<探せ! おいしいTV>出演料として‘スター美味しい店’コーナーは一回当たり900万ウォン、‘味客’は600万ウォン、‘健康宝鑑すごい食べ物’は1千万ウォンを提示した。提案書はこれらのプログラムで食堂の看板の一部や全部を画面に露出した例を広報していたりもする。この間、放送が食堂から金を受け取ってきたといううわさが具体的証拠資料を得たわけだ。

SBS <生放送トゥデイ>パク・トゥサン責任演出者は「プログラムは公式的にも非公式的にも金を受け取っていないし、ただし協賛を受けただけだ」と話した。彼は「この間、この番組では美味しい店紹介がたくさんあったが、密かに金を受け取ったケースはなかった。1月11日に放送された青陽唐辛子特集コーナーで、青陽唐辛子の効能を見せるため専門食堂と交渉し、その食堂から協賛を受けたと理解している」とした。<生放送トゥデイ>には食材を選定しマニアたちと活用事例を紹介するコーナーがある。‘そのコーナーに食堂紹介が一部入ったが、協賛代理店は協賛金を受けたのであって食堂広報費として受け取ったものではなかった’という説明だ。

SBS側が‘金は受け取らず協賛金だけ受け取った’と主張する理由は、放送法上 外注製作社は協賛を受けることができるためだ。外注製作社がプログラムを作り経費・物品・サービス・人材または場所などを提供されたとすれば、その協賛主の名称や商号を知らせられるようになっていたりもする。この法は外注製作社が放送会社から安い製作費を受け取りプログラムを作らなければならない現実を認めるものだが、不合理な制度だという指摘が多い。経営が苦しい外注製作社が便法として間接広告できる道を開く形であるためだ。

製作会社を通じて協賛を受けたというSBS側の説明が事実であるかも論議の的だ。キム・ジェファン監督が運営する食堂は、SBS <生放送トゥデイ>に出演する前にSBS広告局の審査を通過しなければならないという広告代理店の案内により、代理店に法人事業者登録証を渡したという。キム監督は「SBSが小さな食堂よりは法人形態の大きな食堂を好むためだとの説明を聞いた」と話した。この主張が事実ならば放送会社は協賛を受けてはいけないという規定にもかかわらず、協賛主の食堂を直接選定・審査するなど協賛過程に関与したことになる。SBS側は「食堂にはいかなる書類も要求したことはない」としたが、それではキム監督に食堂事業者登録証を提出しろと誰がどんな目的で要求したのかが糾明されなければならない。

あなたが見ているのは広告だ

間接広告と協賛を規制する政府機関が、美味しい店放送の運営実態を正確に知っていたかも論議の的だ。

放送通信委員会と放送通信審議委員会担当事務官は<ハンギョレ21>との電話通話で一様に「そのようなことがあったのか」と問い直してきた。放送通信委員会編成評価政策課ペ・ギョンユン事務官は「食堂が金を出して出演していることは知らなかった」としつつも「放送会社が協賛形式で食堂を出演させたとすれば規制が難しい。協賛規定を悪用しないよう放送会社に周知させてはいる」と話した。

←映画<ツルーマッショー>のキム・ジェファン監督が運営する食堂(左側)で美味しい店プログラムを撮影する放送製作スタッフを隠しカメラで逆に撮影する姿(右側).(株)B2E提供

しかし食堂を‘美味しい店’で紹介する目的で作られたプログラムに協賛規定だけを適用することができるだろうか。放送審議に関する規定では「協賛主に広告効果を与えられるようにプログラムを製作・構成してはならない」(第46条)と規定している。ドラマ<シークレット ガーデン> <マイ プリンセス>などは意図的に協賛主の広告を露出し放送通信審議委員会の懲戒を受けた経緯がある。いずれにせよヒョン・ビンの自動車やキム・テヒのノートブックが脚光を浴びれば協賛企業としては惜しくない投資だっただろう。それなら5~15分程かけて食堂の味と材料について賞賛を惜しまない美味しい店紹介プログラムは協賛や間接広告ではなく‘長い広告放送’と呼んでこそ当然だ。地上波放送3社は特定食堂がどの地域にあるか、どのようになっているか外観をさっと映しだすのでも足りなくて、ホームページで食堂の電話番号と住所を案内している。食堂が美味しい店ではなく金を出して出演した‘協賛食堂’であったという事実を前提にするならば、規制はもちろんプログラム形式の変化も必要だ。放送通信審議委員会関係者は「(金を受け取ったという)事実関係が確認されれば問題の素地がある。この部分で信憑性のある情報提供があるならば食堂を具体的に紹介したり意図的に浮き彫りにする内容は審議対象となるだろう」とした。

<ツルーマッショー>は去る4月29日、全州国際映画祭で大衆に初めて公開された。「熱くなくても熱いフリをしなければなりません」とPDが美味しい店のお客さんを指導し、スターが常連食堂を訪ね自身が好きな食べ物を紹介しなければいけないのに食べ物の名前を正しく当てられない場面では客席から笑いがこぼれた。

隠しカメラに撮影されたこれらの場面を放送会社側は全面否認した。SBSパク・トゥサン責任演出者は「食堂にメニューを変えろと要求したことはない」として「青陽唐辛子専門店でもない食堂が出演したとすれば、食堂がありもしないメニューで協賛代理店と製作スタッフをだましたのだろう」と話した。「ニセ物のお客さんたちを動員したということも初耳」と言った。SBS側は「美味しい店を選定する時は主観が入らざるを得ず難しくはあるが、美味しい店を誇張するためにお客さんを動員したり内容を操作したこともない」とも主張した。文化放送<探せ! おいしいTV>キム・ジョンギュPDも「事実と異なる内容があり把握中」としつつ「加工されたり捏造された内容であることもあり、むしろ放送会社が被害者でありうる。明らかになれば別に説明する」とした。

事前演出・出演者募集…予想されたヤラセ

←食堂は放送にとって小さいながらも確実な広告主だ。映画<ツルーマッショー>はメディアが広告のために視聴者をだます場面を映画にした。写真は全州国際映画祭‘観客との対話’時のキム・ジェファン監督. JIFF提供

キム・ジェファン監督は「作家が撮影前に電話をし、メニューに青陽唐辛子豚カツ、イガイ(紅蛤) ラーメンはどうかと言ったところ‘辛くて死のうが死ぬまいが’という意味で‘死ぬ死なない’セット メニューにしようとアイディアを出した。辛い程度により3種類のメニューでやってくれと注文した。お客さんらも社長が知っている人で3チームを構成してくれとあらかじめ要求した」とした。撮影前に社長の飲食店哲学からお客さんの所感までが詳しく書かれた構成案も送ってきた。また<探せ! おいしいTV> 4月16日撮影構成の中にはキム・ジョンミン氏がなじみの店を紹介することになっているが撮影中に自然にできないと、その日 代わりに投入されたチョン・ミョンフン氏がなじみの店として紹介するハプニングもあったという。

出演者募集過程を見れば、ヤラセ放送は予想されたこととしなければならないようだ。食堂が決定されれば作家は出演者募集カフェに文を載せる。あるカフェには「うららかな日に野外で参鶏湯を召し上がる方募集します。」「○月○○日 京畿道△△時、食堂で撮影します。出演料はおいしいお昼一食」のような文等が250件を越えている。

ヤラセ放送が明らかになっても処罰は重くない。昨年11月5日、韓国放送が‘韓国アイドル日本占領記’編で韓国にいる日本人留学生を観光客のように演出したというヤラセ疑惑に火がつくと、すぐに放送通信審議委員会は韓国放送に警告措置を下した。外注製作社の管理責任を問うただけで、相変らず韓国放送の長寿プログラムだ。映画<ツルーマッショー>ガヤラセ放送の証拠を示しても実際に番組の存廃に影響を及ぼす恐れがあるかが気になる部分だ。

地上波3社の20ヶを越えるプログラムに1年に1万ヶ所を越える食堂が出演している。ニュースと教養情報プログラムの隅々を占領したあふれかえる美味しい店の中に本当に美味しい店はどれほどあるのだろうか。大衆が一次評価し、専門家集団が最終選定しレストラン評価書を出す<ブルーリボン サーベイ>が選定した‘2011年全国のレストラン’を見れば、推薦するに値するレストランは1200ヶ所余りだ。<ブルーリボン サーベイ>調査を信頼するならば、TVに出てくる美味しい店の90%は推薦対象でない食堂だ。評価基準も問題だ。放送会社は雑音を減らすために食堂を選定する際に大型食堂を好むが、清潔と衛生など基本的評価手続きを省いたために信頼できない情報が放送に乗る。去る2月24日には有名カムジャタン フランチャイズ業者が大腸菌混じりのタレを使って食品医薬品安全庁に摘発されたことがあった。ところが、この業者は韓国放送<無限地帯 キュー>等の色々な放送で美味しい店として紹介された所だ。放送会社が視聴率と協賛金額が減ることを甘受してでも、美味しい店放送編成を減らし質を高めようとしない限り、無理な推薦は止まらないものと見られる。

‘内部告発’は‘マッ(味)ショー’を変えられるだろうか

キム・ジェファン監督は「放送会社が外注製作社に正しい道を歩けないようにしておきながら、自分たちには責任がないと主張することができるか」と問う。彼は「全州映画祭で映画が上映されるや、お前は何が望みでこういうことをしたのかという放送関係者たちの電話があふれた」とし、自分が願うことは「放送会社が利益を減らし製作費を現実化し、著作権を分け与えること」と話した。「放送3社労組が答えなければなりません。皆がこういう慣行を知っていながら放送会社職員の給与を削っても良心のないプログラムは作ってはならないと、教養情報プログラムを作る若い作家とプロデューサーが良心を売らないようにしなければなければならないとなぜ言わないのですか。私は進歩的なPDではありません。しかしこれは自分より劣悪な境遇で一緒に放送を作る他の人々の人権の問題です。金になるプログラムだけを作って放送会社の職員の賃金だけを守ろうとするなら、いっそ労組の看板を下ろして下さい。」16年目のPDでもキム・ジェファン監督は映画<ツルーマッショー>で内部告発を試みた。彼の声は汝矣島の秩序に新しい風を送ることができるだろうか。

ナム・ウンジュ記者 mifoco@hani.co.kr

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/29578.html 訳J.S