生協運動に根を置いた日本の地域政党たち…
生活の中で問題を政治的・政策的に解決しなければならないという共感の中で急成長
■チョ・ヘジョン,チョン・ヨンイル
千代田クラブ,神奈川ネットワーク,東京生活者クラブ,新しい政治千葉…。日本の地方自治制度で最も特徴的な要素の一つである‘地域政党’の名前だ。地域政党とは我が国のように‘地域主義’に便乗した政党という意味ではない。広域自治団体や基礎自治団体単位の地域だけで活動する政党を称する。我が国でいえばソウル,麻浦区に‘麻浦○○党’,釜山,釜山鎮区に‘釜山鎮区市民の会’のような政党が存在するという話だ。地域政党は字句どおり地域懸案に集中し住民生活の質を高めることに最も大きな関心を持つ。日本の中央政治が前後半世紀を越えて自民党・公明党の保守連合に支配されてきた反面、地方政治では比較的多様な勢力が活躍できた背景にはこういう地域政党が位置している。
←2009年12月14日、日本,千葉市の‘市民ネットワーク千葉’所属議員らが市議会事務室で対話している。代表的地域政党であるネットワークは日本社会に生活政治を伝播する上で大きな役割を果たした。
1978年ネットワーク誕生,1979年初当選者
その中でも特に注目を集めるのは‘神奈川ネットワーク’ ‘市民ネットワーク千葉’ ‘横浜ネットワーク’ ‘東京生活者クラブ’のように生協運動に根を持つ地域政党だ。地域政党の中で最も活動力が旺盛なだけでなく、女性,特に主婦が地方自治の主人公に出て ‘生活政治’ を伝播したためだ。
高度経済成長にともなう後遺症で1970年代の日本は深刻な環境汚染問題を体験することになった。主婦らが安全な食べ物を求めて神経を尖らせることになったのは当然だった。有機農・畜産物と生産者-消費者間の信頼を前面に掲げた‘生活クラブ生協’は東京をはじめとする大都市を中心に大人気を呼ぶことになった。生活クラブ生協は3軒以上が共同購買をすれば配送料が不要で、町内ごとに会員たちを集め環境教育も行った。自然に主婦たちが‘組織化’された。生協会員たちの自発的な学習会も生まれた。福祉・教育・共同体・政治などに関心分野は日々拡大した。1978年ついに“生活方式を変化させよう”というスローガンを掲げた地域政党‘東京生活者ネットワーク’が誕生した。翌年には東京都,練馬区議会選挙では地方議員も輩出した。他の地域でも‘創党’と‘当選’が相次いだ。
ネットワークが地方自治の中に急速に食い込むことができたのは誰もが感じる生活問題を政治的・政策的に解決しなければならないという共感を得たためだ。
“家で子供たちにいくら食品添加物が入った食べ物を食べさせなくとも学校給食が変わらなければ効果がなく、廃食用油石鹸を自分一人が使っても水質汚染を防ぐことはできない。こういう問題を最もよく分かっている主婦が直接政治と制度を変えなければ既存政治家たちは何も変えることはできない。”
ネットワーク活動をした福士敬子東京都議会議員はこういうネットワークの論理がきちんと受け入れられたと紹介する。このようにして当選したネットワーク所属議員たちは各地域で老人病手当てを新設し、学校給食に地域で生産した食材を使うようにするかと思えば、シックハウス症候群を減らす住宅建設指針を用意するなど福祉・環境・教育分野で大きい変化をリードした。
食傷された‘女性候補’に対する悩み
←横浜市,神奈川区アイスリンク場の壁に描かれた大型壁画.
住民と地方議員の距離も近づいた。2009年8月、横浜市,神奈川区のアイスリンク場の壁は色とりどりの多くの絵で埋め尽くされた。幅が46.5m,高さが7mにも及ぶ巨大な壁画だった。‘誕生,現在そして未来’という題名のこの壁画は横浜開港150周年を記念し神奈川区の小・中・高校生84人が5日間かけて描いたものだ。アイディアは日本で壁画画家として有名な西森禎子が出した。特別な行事を記念して壁画を描いても一定期間が過ぎれば大部分は撤去されてしまう慣行に残念さを感じた西森は神奈川区の‘横浜ネットワーク’所属市会議員の杉山典子を訪ねて行った。彼女は壁画を永久保存できる場所を物色する一方、横浜市から補助金30万円(約390万ウォン)を得た。これに住民寄付金200万円(約2600万ウォン)が加わり壁画が完成した。他の議員たちならば聞き流してしまうアイディアを杉山議員は「学生たちが横浜市に対する自分の考えを描くことで表現する良い機会とし、町も美しく育てることができる」と考え積極的に受けとめた。
ネットワークが‘女性の政治組織’ということも長所だった。男性中心の腐敗した政治に嫌気をおこした有権者たちは「少なくとも女性たちは悪いことをしない」として女性という理由だけで期待感を表わした。 子供を学校に行かせたり一緒に買い物をして形成された主婦たちだけの関係ネットが当選に一次的な力になりもした。
だが最近では他の政党からも女性候補がたびたび登場する。地域社会で専業主婦はますます減り、その代わりをするのは定年退職した高齢の男性たちだ。ネットワークでも新しい支持層拡大戦略を準備しないわけにはいかない状況だ。‘市民ネットワーク千葉’の湯浅美和子議員は「危機感を感じる。以前には生活を理解する女性が地方自治に出るべきだという主張が新鮮に思われたが、今は(男性候補を前面に掲げた)民主党も私たちと同じように‘生活政治’を語る。 専門性を確保し力量ある候補を発掘することが課題」と話した。
だがネットワークが地方議員候補を送りだす構造自体が専門性を強化する上で障害物になるという批判も出ている。ネットワークは基本的に議員を住民の‘代表者’としてでなく‘代理人’と認識する。そのためにネットワークのすべての会員は選挙に出馬でき一人当たり当選回数は2~3回に制限している。専門的な力量が蓄積されても、それを発揮する時間が足りないという話だ。
市民ひとりひとりの自治のために
また議員たちは議会で議論されるすべての懸案に対し意見を出す時、ネットワーク事務局の判断に従わなければならない。もちろんネットワーク事務局で議員と会員たちの意見が民主的に収斂されるが、どれ一つも議員の思いのままに決めることはできない構造は他の政党議員や団体長に‘交渉権がない’という認識を持たせ、時には政治的に無視されることもおきる。
福士敬子議員の経験と実践はネットワークはもちろん韓国の地域運動団体にとっても示唆点がある。福士議員は‘東京生活者ネットワーク’で活動し1983年無所属で東京都,杉並区議会議員選挙に当選し、1999年から東京都議員を務めている。1993年からは‘自治市民93’という政治団体も運営中だ。彼女は政治を始めた時から今まで地方区で学習会を続けている。住民たちが政治に関心を持てるように懸案と関連した専門家を呼び講義を聞いたり、自主的な資料調査をしたりもする。福士議員は「市民ひとりひとりが勉強して自治をしなければ地方自治は不可能だ。そのような環境を作ることがまさに私の役割」と話した。
東京・千葉・横浜(日本)=文チョ・ヘジョン記者zesty@hani.co.kr・写真チョン・ヨンイル記者yongil@hani.co.kr
原文: http://h21.hani.co.kr/arti/cover/cover_general/26430.html 訳J.S