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[人生と経済]分岐点に立ったイ・ジェヨン専務

原文入力:2009-02-25午後08:51:30
キム・キウォン放送大教授・経済学

三星のイ・ジェヨン専務が離婚した。韓国人口千人当り離婚件数が1980年の0.6から2007年の2.5に急増してはいるが、財閥一族どうしの結婚が破綻した場合は珍しい。彼らの結婚生活がみな幸せなはずもないが、離婚により失うものが多かったためだろう。そのような点でイ専務の離婚は時代の変化を象徴しているのではないかと思う。 離婚理由が何か正確には分からないが、財閥家の妻も今は夫が不誠実だとかする時、そのままこらえはしなくなったわけだ。

近ごろの離婚率増加は結婚という長期契約が順次短期契約に変わっていることを意味する。企業の雇用柔軟化のように男女関係も柔軟化しているということだ。ただし雇用柔軟化は社会保障制度が不備な場合、労働者の人生を不安にするマイナスの側面が強いのに反して、男女関係の柔軟化は女性の地位向上というプラスの側面が強い。イ専務夫人も分かれて生きていく自信があって離婚を要求したのだろう。

もちろん離婚は苦痛も伴う。子供に関しては特にそうだ。その上、三星の次の総帥に内定したイ専務にはイメージ打撃が深刻だ。イー(e)三星など、以前にイ専務が独自に行った色々な事業が失敗し彼の経営能力が疑わしくなっているというのに、「イ専務は礼儀正しくて誠実だ」と三星がまき散らしたうわさも確実でなくなったわけだ。公的な経営能力にも私的な家庭生活にも問題があるならば果たして韓国最大グループを導いて行く資格があるといえるだろうか。

イ・ゴンヒ三星総帥も頭が痛いだろう。同年齢のキム・ジョンイル国防委員長の後継構図の悩みに劣らないことだろう。だが北韓の世襲独裁体制が持続不可能なのと同様に、世襲独裁経営はグループを危険にするという点を肝に銘じなければならない。とはいえ財閥総師の子供は絶対に最高経営者になれないということではない。経営能力がある場合には何の問題もない。しかし経営能力の遺伝子は存在しない訳だから事実上国民の財産である巨大グループの経営を子供だからといって無条件に受け継いでもらっては困るということだ。

子供に千万ドルだけ与えて会社には関与させなくしたビル・ゲイツのような行動を今になってイ・ゴンヒ総帥に期待しはしない。すでにグループ支配権の大部分を渡したためだ。ただしイ専務の行動方式に多少の影響を及ぼすことはできるのではないかと思う。本来三星が韓国ナンバー1に発展した理由は皇帝経営体制であっても、他の財閥より総帥の経営干渉が相対的にあまり無分別でなかったためだ。‘組織の三星’というのがまさにそれだ。こういう長所を一段階さらに発展させなければならない。

イ専務がグループを支配はするものの、経営一線に出なければ良い。本人は帝王学を勉強したというかも知れない。だがそれはでたらめのようなものだ。三星顧問として仕事をした日本人は、グループ行事で系列会社社長たちがイ専務の前で卑屈にぺこぺこする姿を見てあきれたと言った。そのようなの中でどうして熾烈な企業戦略を学ぶことができようか。系列会社の自立権を拡大し、それを統括する実質的持ち株会社であるエバーランド人事にイ専務が若干関与する程度なら良いのではないか。

厳密に言えばイ専務のグループ支配権は不法に獲得したものだ。そのような原罪から抜け出そうとするなら、イ専務が新たに出直さなければ。そうするならばやるべき仕事が多いが、まず旧式のグループ経営や家庭生活がこれ以上通じないということを悟らなければならない。このために先進国の由緒深いグループで創業者子弟らがどのように暮らしているのか見回すことを薦めたい。そしてイ専務は自身も幸せでグループも先進化することを選ぶのか、でなければ貪欲の中で皆を疲れさせるのか真剣に悩めば良い。

キム・キウォン放送大教授・経済学

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/340934.html

原文: 訳J.S