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個人所得 2万ドル 再進入、その金は皆どこへ行ったのだろうか?

原文入力:2011-03-30午後07:59:43(2291字)
昨年成長率 8年ぶりに最高
物価上昇のせい 景気感触 寒々
実質GNIは成長率 下回る
純貯蓄率 1年ぶりに下落傾向へ

所得分配率も大幅に下落
‘落水効果’政策 虚像クッキリ

チョン・ヒョクチュン記者

←実質GNI,実質GDP -実質GNIは物価などを勘案した国民所得の実質購買力を現わす指標。実質GDPは特定基準年度の価格で当該年度の最終生産物の価値を現わしたもの。

昨年、我が国の経済が受けた成績表は華麗だった。1人当り国民総所得(GNI)が3年ぶりに2万ドル台に再進入し、国内総生産(GDP)も1兆ドル台に復帰した。経済成長率は6.2%を記録し 8年ぶりの最高値を記録した。主要指標だけを見れば経済が金融危機から抜け出し成長にまた速度を上げている姿だ。
しかし‘所得2万ドル時代’がバラ色で満たされているわけではない。一般国民の暮らしは過度な借金と物価高、実質購買力の低下などで さらに難しくなっている状態だ。実質国民所得の増加が経済成長率を追いつけず労働所得分配程度も大幅に悪化した。大企業中心の成長の果実が個人と家計に全く広がらずにいるところから起きた悪循環だ。

■主要指標は金融危機から抜け出したが…
韓国銀行が30日に出した‘2010年国民アカウント(暫定)’によれば、昨年 我が国の実質国民総生産(GDP)は6.2%成長した。2002年の7.2%以後、8年ぶりの最高値だ。1人当り国民総所得は2万759ドルと集計された。1人当りの国民総所得は2007年に2万1695ドルを記録し初めて2万ドルを突破したが、2008年金融危機の余波で1万ドル台へ墜落した。1人当り国民総所得だけを確かめてみれば、わが国の経済が金融危機を抜け出し正常軌道に戻ったことを意味する。キム・ヨンベ韓銀経済統計局長は「人口が2000万人以上の国家中、1人当り国民総所得が2万ドルを越える国は10ヶ国余り」としつつ「2万ドルへの復帰は我が国が世界10大富国になったと解釈することができる」と話した。

だが、昨年の物価などを考慮した国民所得の実際購買力を示す実質国民総所得成長率は5.5%に終わった。国際原油価格など原材料の上昇余波で輸入物価が輸出物価より一層大きく上がり交易条件が悪化したためだ。成長率に見合って景気が良くなったとは感じられないという話だ。

庶民が皮膚で感じる体感景気は相変らずパサパサしている。昨年下半期から手綱が解けたように上がり始めた物価は5%台を脅かしている。2月の消費者物価上昇率は4.5%で、2008年12月以後 最も高かった。3月の消費者動向指数(CSI)は2年5ヶ月ぶりに初めて基準値(100)以下へ墜落した。

■企業は‘沸騰’個人は‘ふらふら’
昨年 企業が営業を通じて稼いだ営業剰余は361兆ウォンを記録した。前年(310兆ウォン)より16%増加した数値だ。反面、サラリーマンのふところ事情を意味する‘被傭者報酬’は527兆ウォンで、前年(493兆ウォン)より6.9%の増加に終わった。企業の営業剰余増加率が被傭者の報酬増加率の2倍を越した。

国民所得全体の中で労働者が賃金として持っていった程度を現わす労働所得分配率も大幅に悪化した。昨年の労働所得分配率は前年に比べ1.7%下落した59.2%で、2004年の58.7%以後 最低だった。下落幅は1974年以後 36年ぶりに最も大きかった。労働所得分配率は労働の代価として家計に分配される所得の割合で、この比率が低くなったということは労働者の賃金上昇が企業の営業利益上昇に達しなかったということだ。利益が出ても労働者が企業に比べ自分たちの取り分を持っていけずにいるという話だ。キム局長は「営業剰余の増加幅がより大きいということは、企業に剰余がたくさん残ったということを意味する」としながら「配当金や再投資の増加などが原因になっただろう」と話した。

■貯蓄できない社会
昨年の総貯蓄率は32.0%で前年より1.8%上がった。企業の営業利益が増え貯蓄率もそれにより高まったためだ。だが、個人の財政状態を計る個人純貯蓄率は1年ぶりに反落した。個人純貯蓄率は2009年に4.1%へ大きく増えたが昨年は3.9%へ再び下落した。

経済は良くなったと言うが、個人が貯蓄する余力はますます悪くなっているという話だ。経済が成長する中で企業はお金が積もって行くが、個人は家計負債と利子負担でお金を貯める余力がなくなっているということだ。昨年末の家計貸出と販売信用を合わせた家計負債は795兆4000億ウォンで、前年に比べて60兆ウォンも増加した。貯蓄率が下がれば結局、消費萎縮につながり経済成長は困難に陥る悪循環にはまる。ホン・ジョンハク キョンウォン大教授(経済学)は「所得分配と貯蓄率が悪化している原因の一つは、現政権が大企業と富裕層に恩恵を与えれば下方にも恩恵が流れる‘トリクルダウン’(落水効果)政策を繰り広げたため」としながら「政府は企業が雇用を増やす政策を作る一方で、家計を支援し家計所得を高め、内需が生き返って企業が金を稼ぐ‘トゥリクルアップ’政策へ切り替えなければならない」と話した。
チョン・ヒョクチュン記者 june@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/470675.html 訳J.S