米国のドナルド・トランプ大統領による関税合意破棄の脅しにより、韓国の対米輸出の見通しに再び暗雲が垂れ込めた。突如浮上したリスクを受け、韓国政府は緊急対策会議を開き、米国への説得に乗り出すなど、対応を加速させた。
27日午前、韓国製品に対する関税を貿易合意前の水準に引き上げるというトランプ大統領の発表を受け、大統領府は関係省庁が参加する対策会議を開き、対応策を議論した。大統領府のキム・ヨンボム政策室長とウィ・ソンラク国家安保室長が主宰した会議には、産業通商部のヨ・ハング通商交渉本部長、財政経済部のイ・ヒョンイル第1次官、外交部のキム・ジナ第2次官らが参加した。潜水艦事業の受注支援のために26日にカナダに出国したキム・ジョングァン産業部長官は、電話で参加した。大統領府のカン・ユジョン報道官は会議に関する記者会見で、「(トランプ大統領が主張した)関税引き上げは、(米国の)連邦官報への掲載などの行政措置後に発効される」として、「政府は関税合意を履行する意思を米国側に伝えるとともに、冷静に対応していく方針」だと説明した。
当初、キム・ジョングァン長官はカナダから28日に米国に移動し、ハワード・ラトニック商務長官らと会談し、デジタル関連の立法に対する米国側の反発、クーパンをめぐる調査、半導体関税などの懸案を議論する計画だった。しかし、今度は“関税による脅し”にも対応する必要が生じた。
政府は昨年11月に韓米が署名した了解覚書(MOU)に沿って3500億ドル(約53兆円)の対米投資を履行する意思は変わらない点を強調する方針だ。トランプ大統領が法案処理の遅延を問題視していることについては、「韓米の戦略的投資管理のための特別法案」(対米投資特別法)の制定は立法府の権限に属することであり、法案の検討などに時間を要する点を説明するものとみられる。
トランプ大統領の脅しは、韓米共同説明資料(ジョイント・ファクトシート)やMOUにも明記されていない国会の法案処理日程を問題にしていることで、韓国政府をさらに困惑させている。MOUは、「(投資の)合意を忠実かつ迅速に履行することを約束」するとしたうえで、「MOUで定めた事項を履行する前に、必須となる国内法制定の手続きの履行が必要であることを認める」としているためだ。これはむしろ、相手国の国内法の制定手続きを尊重する意向とも読み取れる。また、投資額上限を年間200億ドルに定めてはいるが、執行日程は提示されていない。
米国は昨年11月26日、与党「共に民主党」の主導で対米投資特別法案が発議されると、合意に従い、韓国製自動車の品目別関税率を同年11月1日に遡及して、25%から15%に引き下げた。関税引き下げの時点について、「特別法が韓国国会で発議される月の1日付」に遡及することにした結果だ。関連法案が国会で成立する時点ではなかった。しかし、トランプ大統領は「なぜ韓国の立法府は合意を承認しないのか」として、関税合意破棄の脅しに踏み切った。さらに、対米投資特別法が発議されて2カ月しか経過しておらず、年始である点を考慮すれば、トランプ大統領の警告は根拠に乏しく、過度に一方的だと言える。
米国が実際に関税率を引き上げるとなると、対米輸出は再び困難に直面する。トランプ大統領の警告は、昨年7月末の交渉暫定妥結前に戻るという意味とも解釈できる。昨年の「関税騒動」のさなかに対米輸出は2024年比で3.8%減少したが、東南アジアや中南米などへの輸出割合が増え、輸出全体では3.8%増の7097億ドルとなり、初めて7000億ドルを突破した。政府は今年も7000億ドル超の輸出を目標にしているが、年明けからトランプ大統領に端を発する不確実性が強まっている。
韓国貿易協会のチャン・サンシク国際貿易通商研究院長は「立法手続きに時間がかかる点を挙げて米国を説得し、25%関税が施行されないようにしたうえで、状況を注視する必要がある」と述べた。