経営権継承目的の不当合併、会計不正容疑で裁判を受けてきたサムスン電子のイ・ジェヨン会長の無罪が確定した。検察が提出した証拠が認められず、4年10カ月ぶりに司法リスクから脱したわけだが、いよいよイ会長の経営能力が本格的な審判台に上がる展望だ。半導体競争力や株主の信頼回復など、課題は山積みだ。特に今回の事件の核心が少数株主の利益を侵害したグループ支配構造の改編にあっただけに、支配構造改善のための実質的努力を見せなければならないとの注文も出ている。
17日に確認したサムスン電子の業績資料を分析すると、今年第2四半期の営業利益(連結基準)は4兆6000億ウォン(約4900億円)で、昨年第2四半期に比べて55.9%減少した。直前四半期の今年第1四半期からも31.2%急減した。第2四半期の利益減少の主な原因は、売上全体の3分の1余りを占める半導体事業の不振だ。
台湾の市場調査会社トレンドフォースの先月の集計によると、サムスン電子のファウンドリの売上基準シェアは今年第1四半期(1~3月)は7.7%で2位を記録した。売上高が昨年第4四半期の32億6千万ドルから今年第1四半期は28億9300万ドルへと10%以上減り、シェアも0.4ポイント落ちた。これはトレンドフォースがサムスンのファウンドリのシェアを集計し始めた2021年以来の最低値だ。一方、台湾のファウンドリメーカーであるTSMCは、今年第2四半期の純利益で18兆8千億ウォン(約2兆円)を報告するなど、サムスンとの差を広げている。
このようにイ会長が直面した経営の現実は決して容易ではない。高帯域幅メモリー(HBM)の力量不足で人工知能(AI)半導体ブームから疎外され、半導体ファウンドリ(半導体受託生産)・設計なども赤字から脱出できず、半導体の競争力の回復が喫緊の課題だ。
グループ支配構造の中心軸であるサムスン生命の、サムスン電子など系列会社の持分保有の会計処理も問題だ。韓国会計基準院がこの会計処理の適正性を公開で問題視したことも解決しなければならない宿題だ。過去1990年代までサムスン生命が売った有配当保険料でサムスン電子とサムスン火災の株式を買い入れ、「イ物生電」(イ会長→サムスン物産→サムスン生命→サムスン電子)の支配構造を構築しても、契約者に対し無配当を貫いてきた支配構造の脆弱性を解消しなければならないということだ。
経済改革連帯はこの日論評を出し、「裁判所の結論はサムスン物産合併に関する実体的真実とかけ離れており、法が追求しなければならない経済正義にも全く符合しない」として「今回の判決は、資本市場の公正性を確立し政経癒着から民主主義を守るのに大きな障害物として広く語られるだろう」と指摘した。また「サムスングループの取締役会強化などガバナンス改善に努め、依然として大きな弱点に挙げられるサムスン生命のサムスン電子持分所有問題を解決する策も可能な限り早く提示しなければならない」と話した。
各経済団体は喜んだ。大韓商工会議所は「最高裁の最終判決を尊重し歓迎する」として「先端産業のグローバル競争が激しい状況で、経営リスク解消だけでなく韓国経済全般に肯定的な波及効果をもたらすだろう」と話した。